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今季ブレーク! 生源寺龍憲の強さを暴く<前編>「オフは要らない。考えることが楽しいので」

昨年まではほぼ無名だった生源寺龍憲が今季一気にブレークしている。彼の強さは一体どこにあるのか。じっくり聞くと、“考え方”に秘密があった。

TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa THANKS/ザ・クラシックGC

生源寺龍憲 しょうげんじ・たつのり。1998年生まれ、山口県出身。20年プロ入り。23年に下部ツアーの賞金王になりレギュラーツアーのシード獲得。24年はアジアンツアーにも参戦しながら日本では賞金ランク29位。162cm、65kg

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14本の道具があるから
体が大きくなくても戦え

開幕戦で初優勝したと思ったら6月には2勝目を挙げ、それ以外の試合でもコンスタントにトップ10入り。2位を突き放して賞金ランクトップ(8月13日現在)を快走している生源寺は、どんなゴルフ人生を送ってきたのか。

「父親の練習について行ってゴルフを始めて、スクールに通いだしたのは小学校4年生です。6年生から試合にも出るようになって、負けず嫌いだからそれなりに頑張っていましたけど、プロになろうとは思っていませんでした」

将来は会社を起こしてビジネスをやるつもりだったという生源寺の考えが変わったのは、同志社大学に入ってからだという。

「水巻善典プロがコーチに来てくれていて、初めて格好いいプロゴルファーに出会い、ゴルフもいいなと思いました」

スイッチが入ってからは着実に実力をつけていき4年生のときにQTを受けてプロ転向。3年後にはシード権獲得とステップアップしてきたが、自信もあったようだ。

「小さい頃からやっていたナショナルチームの人たちとの差は、環境の違いだと思っていたんです。そこはこれから埋められると思っていましたし、早く始めた人は伸び悩んだりするので、追い付けると(笑)。体格面でもフィジカル重視のスポーツだと難しいけど、ゴルフは14本ある道具を使えるから不得意な部分は補えるし、フィジカルで大きい人が毎試合勝っているわけでもないんで、チャンスはあると思っていました」

6月の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP by サトウ食品」を逆転で制し、ツアー2勝目を挙げた

楽して上手くなるなんて
自然の摂理に反している

今季のブレークにはとくにキッカケがあったわけではなく、自分の弱点をひとつずつ克服していった結果だと言う。

「下部ツアーのときに飛距離が足りないと思ってトレーニングをみっちりして、275ヤードから290ヤード以上に伸ばしました。昨年はいろんな環境での経験を積みたかったからアジアンツアーにも出場して、自分に何が足りないのか考えながら練習していました。それでショートゲームもパッティングも良くなったし、全体的に底上げされた感じです」

クセのないきれいなスウィングも、コーチをつけず自分で作り上げたものだという。

「飛距離では勝負はできないと思っていたので、再現性を重視して考えてきました。考えてやってみて、良ければ取り入れてダメなら次を考えてまたやってみて、それをずっと繰り返しています。練習だけだと意味がないから、試合中もやってみて、しっくりこなければ解決するまで考えるし、解決できたらレベルがひとつ上がるんです」

とにかく“考える”という言葉が良く出るところが、彼の強さの本質のようだ。

「考えることが好きなんです。だから息抜きとか必要ないし、オフも要りません。みんな2週間とか休むけど、僕は何していいかわからないんですよ(笑)」

考えることが楽しいから息抜きも必要なく、クラブを握っていなくてもずっとゴルフのことを考えている“ゴルフオタク”なのだ。彼と話していると野球のイチロー選手と重なるイメージがあり、目標としているPGAでも活躍できそうだと思える。

「もしPGAに行けたらレベルが上がるから、どこで差を出すかまた考えないといけないですけどね。自分でも面倒な性格だなと思いますよ(笑)。でも違和感があったら考えて解決しておかないと後で後悔するのはわかっているので。楽して上手くなることなんてないんです。それは自然の摂理から離れているんです。何か代償を払わないといい結果は得られませんから」

ここまで自分と向き合って深く考えている人はなかなかいないだろう。強い理由に納得だ。

弱点を克服してレベルを上げてきた

現在の優先順位はバンカーショットのレベルアップ。「水巻さんにも相談して、ウェッジのバウンスなどを見直しています。砂質の違いに合わせたウェッジと打ち方をパターン化できたらいいなと考えています」

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月刊ゴルフダイジェスト2025年10月号より