【インタビュー】山口すず夏「去年からようやく自信を持ってプレーできるように。帰国して再びアメリカを目指します」
週刊ゴルフダイジェスト
2014年に日本地区予選を突破し日本人史上最年少の14歳で全米女子オープンに出場した山口すず夏。あれから10年。昨年のプロテストに合格し、日本でもプロとして出場できる資格を得た山口だが、今季の前半戦は米女子下部のエプソンツアーにも出場していた。そのエプソンツアーの練習日、日本に帰国する直前の山口に、これまでのこと、そして今後のことについて聞いてみた。
INTERVIEWER/Yasuhiro JJ Tanabe PHOTO/Yasuhiro JJ Tanabe、Todashi Anezaki、Shinji Osawa、Shizuka Minami、Getty Images

――今季は日本と米国、両方のツアーで戦っていますね?
山口 日本のツアーでどれくらい試合に出られるのかが、初めてでわからなかったので……。
――どのツアーを主軸にする予定だったのですか?
山口 もともとはエプソンツアーを主軸にするつもりでした。2月にフロリダでエプソンに全部出て、一度日本に帰る予定だったんです。でも急に(日本の開幕戦)ダイキンオーキッドに出られることになり、それだと2月にフロリダに来ても1試合しか出られないので、お金がもったいないと思ったんです。それでちょっとバタバタしましたね。その後5月くらいに森守洋コーチに日本でやればシードも狙えるから、まずは日本でスウィングを固めて、アメリカに行くのは来年でも再来年でもいいのでは? と日本でプレーすることを勧められ、夏に日本に帰るという選択をしました。
――では気持ちは日本に向いている?
山口 そうですね。アメリカでプレーするのはすごく楽しいですけど、お金もかかりますし、成績も残さないといけないなかで、調子が悪くなってもコーチもいなくて、全部ひとりでやらないといけない状況なので、今年の後半は日本でプレーすることを選択しました。この選択が正しい結果になるように日本で頑張りたいと思います。レギュラーの推薦をあと3つもらえるので、それで上位に入れればリランキングで出られますし、レギュラーとステップを交互に出ることも考えています。
――では来年も日本ツアーでプレーする予定ですか?
山口 そのつもりです。もちろんアメリカでプレーしたいという思いはありますが……。また絶対にLPGAでやりたいという思いは持っています。得意のパターやチップを磨いて、強い気持ちでプレーできるようになれば結果もよくなると思っています。やっばりアメリカでプレーするのは楽しいですから。
――14歳で全米女子オープンにも出場していますよね。
山口 そうですね。あの頃はボールが曲がるとは思ってなくて(笑)。2019年にプロに転向しましたが、14歳の頃にはなかった雑念が入るようになり、いろいろとトライするなかで自分のいいところを捨てて新しいことを取り入れようとしていました。
――“いいところを捨てて”というのは?
山ロ スウィングとかですね。パターが得意だったので、そこを武器にすればよかったし、ショットも曲がってなかったんですが、自分よりも体格がいい人のスウィングを見て、自分のスウィングに手を付けてしまい、それで悪くなってしまって……。これまでに培ってきたことを捨てて、すべて新しいことに置き換えようとしてしまったのは反省点ですね。ただ、こっちの選手はみんな振ってくるので、振らないと戦っていけないとは思います。キャリーで250Yが当たり前になっていますから。
――2015年の自分と今の自分を比べるとどうですか?
山口 あのときはまだアマチュアだし、14歳の中学生で何も失うものも怖いものもなく、ボールも曲がらないという状態で挑んだんですが、お客さんがたくさんいて、全米女子オープンというすごい舞台に圧倒されて終わってしまったという感じでした。
――緊張しましたか?
山口 すごく緊張していたと思います。練習ラウンドでモーガン・プレッセルさんや上原彩子さん、日本から来ていたテレサ・ルーさんとご一緒して、ものすごく緊張したのを覚えています。その大会では私が最年少の出場者だったので、アメリカのメディアからの取材もあり、選手へのホスピタリティも凄くて、こんな凄い規模の大会があるんだってビックリしました。プレーヤーズダイニングってこんなに広いんだ! って(笑)。

2015年の日本地区予選を2位タイで通過し、日本人史上最年少で全米女子オープンに出場。初日は73と健闘したものの2日目は76で予選通過はならなかった
――2019年には1年間、LPGAで戦っていますよね?
山口 大して英語もわからないなか、なんとか戦っていたという感じだったんですが、(畑岡)奈紗さんがいたので心強かったです。いろいろ教えてもらいました。あと当時はルーキーにいろいろと教えてくれる先輩の選手がいたんです。私にはエイミー・オルソン選手が付いてくれて、一緒に食事に行ってくれて、チップの渡し方なども教えてくれたり、毎週コースで声を掛けてくれました。こんな制度があるんだと驚きましたが、知らない土地で先輩プロが気にかけてくれるのが嬉しかったです。
――プレーの面ではどうでしたか?
山口 最初の頃は予選を通過できましたが、3日目、4日目で伸ばせない展開の試合が続いていました。でも、パットの調子が上手くかみ合えば、すぐに優勝争いもできるかなという手応えを感じていたんです。それが予選会を突破して出場した全米女子オープンで、初日のスタートホールで3パットをしてリズムを崩し、大叩きをしたんです。そこからどんどんショットの調子が悪くなって、8月に一度日本に帰って見てもらってよくなったのでアメリカに戻ったんですが……。
そこからは、初日はいつも30位くらいで予選カットよりもいい位置にいるんですが、2日目になるとカットラインばかりが気になってしまうようになったんです。それまでは優勝を目指していたので上を見てプレーしていたのが、カットラインばかりを気にしてプレーするようになり、気持ちで負けていたんです。それでどんどん崩れて1年が終わってしまいました。その後、QTをまた通ったのはよかったんですが、体格の大きな人たちとプレーするなかで、自分としてはよかれと思って変えたことが裏目に出て、歯車が狂ってしまいました。
2018年の最終QTで36位に入り出場権を獲得、LPGAツアーで1年間戦った。シード獲得はならなかったが、年末のQTで再び16位タイに入り翌年の出場権を獲得した

――そして翌年は新型コロナの影響で思うようにプレーできなくなった?
山口 そうですね。ようやくゴルフの調子がよくなってきたのは、昨年からですね。23年から24年にかけてのオフの合宿でよくなってきて、少しずつまたゴルフが楽しくなってきた。調子が悪いときは試合に行きたくないというときもあったので。でも去年くらいからようやく自分のゴルフに自信が持てるようになってきた。
森コーチのところには定期的に通っているんですが、去年の6月くらいに切り返しのタイミングの修正に取り組んでいて、でもそれをコースで実践するとすごく難しくて、ボールがいつもの半分くらいの高さしか上がらない。これできるのかなって悩んでいたんですが、1週間それだけに取り組んでめっちゃ練習して、また前の週と同じ2人の友達とラウンドに行ったらすごくよくなっていて、2人にも「えっ、先週と全然違うじゃん! 何したの!?」ってビックリされたんです。
――具体的にはどう変えたんですか?
山口 言葉で説明するのは難しいんですが、切り返しのタイミングをちょっと早くするというか、タメが少し作れるようになった感じですね。それができるようになって曲がらなくなりましたし、調子が悪くなってもそのポイントを意識すると戻れるようになったのが大きいですね。森コーチにはずっと言われていたポイントだったので、「やっとコーチの言っていることがわかりました」って森さんに伝えました(笑)。何年一緒にやっているんだよという感じだったと思いますが(笑)。まだ結果には結び付いていないですが、ようやく手応えを感じるようになりました。
――日本に帰ってからの目標はありますか?
山口 できたらTOTO(ジャパンクラシック)に出たいですね。優勝すればLPGAの出場権が取れますから。飛距離も2019年頃の飛んでいたときの自分に戻ってきているんです。日本に帰ったらレギュラーとステップ・アップの掛け持ちになりますが、優勝を目指して頑張ります。
――そしてまたいつかアメリカに戻ると。
山口 はい、そうです。こんな拙い私の英語でも、けっこう友達もできて、そういうところも楽しいんです。だからまたアメリカに戻ってプレーしたいですね。


山口すず夏の今季成績

週刊ゴルフダイジェスト2025年8月12日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
雑誌



















