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【対談】清水大成×桂川有人<後編>「PGAツアーで会おう!」

今年プロ参戦5年目を迎えた桂川有人と清水大成。日大ゴルフ部時代から切磋琢磨してきた仲間であり、ライバルだ。若手を代表する26歳の同級生が、世界のゴルフ、日々の心持ちや苦しみ、目標などを素直に語った。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa

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清水大成

1999年生まれ、福岡県出身。ロピア所属。175cm・74㎏・O型。9歳でゴルフを始め、ジュニア時代から活躍。日大1年時には日本学生で優勝。20年プロ入り。ベースボールグリップの“飛ばし屋”で昨年のドライビングディスタンスは307.87Y(7位)だったが、パット巧者でもあり平均パット1.6884(1位)は歴代最高記録

桂川有人

1998年生まれ、愛知県出身。国際スポーツ振興協会所属。167cm・70㎏・B型。4歳でゴルフを始め、中学卒業後、フィリピンにゴルフ留学。日大へ進学し多くの大会で優勝。20年プロ転向、レギュラー3戦目の22年に初優勝。23年はコーンフェリーツアーを主戦場に。24年に日欧共催ツアーで優勝し、以降DPワールドツアーで戦う

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清水 ヨーロッパとコーンフェリー、レベルはどう?

桂川 そこは変わらないと思う。コースの種類が違うから、コーンフェリーの選手がヨーロッパで戦えるかと言われたらわからないし、逆も同じ。やっぱり育った環境って大事で、地元の選手は上位に来るよね。

清水 昨年の全米オープンを経験して思ったことは、日本では難しいほうに外しても上手ければパーが取れる。でも全米オープンなどでは、ここに外したらパーも無理だと僕が思ってしまう場所からでもパーを取ってくる選手も多い。

桂川 1打の重みが半端なく違う。たとえば日本なら1、2打落としても10位くらいしか順位は下がらない感じだけど、ヨーロッパでは40位くらい落ちる。逆に1打よかったら順位もパンと上がります。日本で初日10位以内に入ったら5オーバーくらい打たないと予選落ちしないけど、実力が拮抗しているからそうはいかなくて、初日よくても常に緊張感が必要。7年も戦っている川村(昌弘)さんなんか本当にすごいです。自分が戦ってみて実感します。

清水 全米オープンでは、予選、通れる気はしたんですけど、前半の上がり3ホールで崩れてしまってコースがより難しく見えてきた。バーディを取らないといけないし、ボギーは打てないし。ドライバーの距離はなんとか負けてないと思えたけど、精度も必要だなと。フェアウェイに行かないとゴルフにならない。アプローチも日本ではしないミスをしたり。たとえば花道からでもハーフトップしたり、微妙な感覚が違いました。

桂川 4日間しっかりスコアをそろえられるところに差を感じます。決勝ラウンドでピンポジションが難しくなっても、日本ならパーでいいと思うところでも、簡単にバーディを取ってくる。またリンクスはもちろん、まだ知らないいろいろなコースがある感じ。それにバーディではなくイーグルを狙わないといけない場面もあるし、セッティングもそうなっています。

清水 そうかあ、でも、5年の猶予をもらったので、どうなってもいい、日本には帰らないくらいのつもりで挑戦したいです。


「大成のプレー、コーンフェリーに合うよ」(桂川)

「大成には変わらず体の強さがある。もともとドローヒッターだけど右に向きすぎない。上手い人は皆そう。マキロイも。左を向いて右に出す」(桂川)

――コーンフェリー、欧州と海外経験を積み重ねている桂川に、これから挑戦しようとする清水が、戦う楽しさや必要なことを聞く。

桂川 メンタルの保ち方はやっぱり難しい。今年はキャディさんと一緒で、予選通過できないときに1人ではないのがいい(笑)。でも、昨年までは基本、1人でやっていました。

清水 それが僕には考えられない。

桂川 僕は一人っ子なので、慣れているというか違和感がない。大成みたいに兄弟がいたら違うのかな。

清水 日本ならまだしも、海外は言葉も通じないし、特にヨーロッパは英語すら通じない。トラブルがあったとき全部自分で対応しないといけないのは大変だと思う。

桂川 英語はとても必要だけどなかなか……インタビューが難しくて。単語を1つくらい聞き取れれば想像はつくけど、自分でも知っている単語でしか話せない。僕は飛行機、宿泊、レンタカーの手配、エントリーも自分でやっている。全部ネットでできるので簡単。チケットは予選通過の状況を見ながら金曜日にギリギリに取ったりします。落ちても残って練習したりできる。いろんなアプリで全部調べて、一番安いもの、よいものを比較しながら決める。LCCだと荷物の超過料金がかかるから先に払っておいたほうが安い、なども考えながら。マネジャーさんとも話をしますけど、この経験を生かして人としてたくましくなりたいし、成長もしたいんです。

清水 僕も基本は自分でやります。昨年からはホテルは手配してもらっているけど、自分でやるほうが最終的には安心できる。でも海外でできるかな。サイトは英語だし。

桂川 絶対できる。最近はチャットGPTが優秀だしね。でも、改めて、ヨーロッパではトップ選手はもちろん、それ以外の選手もレベルが高い。海外は夢の舞台だったんですけど、現実も知り始めて「これ、もう無理では」と思ったり。谷原(秀人)さんと話をして、「マキロイやタイガー・ウッズ、今だとシェフラーとか、その辺はもう生まれ持った特別な人で、あとは皆凡人だから、凡人なりにやるしかない」と。真似できるようなことではないから比べないようにしています。慌てず自分を究めるしかない。
 悔しいけど圧倒的な体力の差はあるし、たとえば飛距離だけを求めて曲がっても上手くいかない。でも通用すると思える部分もあるから逆にモチベーションにもなります。差があるからこそやることがありすぎて毎日が充実する。日本である程度トップでやることも幸せですけど、その差に気付かず満足してしまうと思うから。苦しいけど、それをやりがいに感じて突き詰められるし。そのような感じで今、やっています。

清水 そうか。でも、そういう経験こそすごく必要だし、いいよ。コースはどんな感じ?

桂川 フェアウェイが狭くて難しい。それでもカットラインがアンダーになる。でも、先日のデンマークの大会なんかは昨年難しすぎて「もう出ない」と思っていたんですけど、リベンジしようと思って今年出たら予選通過できた。やっぱり、コースを知っていることは大事だなと思います。でも日本の女子を見ているとコースの慣れが必要なのではなく僕らのレベルが低いと言われますかね。

「一打一打と経験を重ねて強くなっている」(清水)

「有人のスウィング、最近あまり見てないけど、なんだか、よりコンパクトになった感じはします。ちょっと右に乘っている感じがする」(清水)

清水 僕は現実を知るためにも、アメリカに挑戦したい。平田憲聖も頑張っていますからね。やっぱり曲がらないし、パターも上手い、気持ちも強いです。

桂川 安定して予選を通るのはやっぱり上手いんだと思います。そして調子を崩さずにいけるのがすごい。いいときは皆、上に行けるんですけど、常に同じレベルに居続けられている。僕は調子を崩しやすいので本当にそう思います。でも、この前のBMWインターナショナル(11位)は、パターを替えてハマった。勝てそうな気もした。僕ははっきりしていて、必要ないことはやらない。スウィングも、コレというものを自分でけっこう強く持っています。実は一度スウィングを変えようとしてブッ壊してしまったこともあった。最近全然ダメだったので、フィリピン時代や学生時代のスウィングを見返して、けっこう右体重でハンドレイトだったことに気付いた。それを意識したらよくなりました。

清水 僕はけっこう変わったと思う。3年前の冬くらいからフェードを打とうとしていて。内藤(雄士)コーチと相談しながら、インサイドパスとアッパーが強くてハイドローだったものを、パスをストレートにしてアッパーを抑えるようにしました。データで言うとそこを変えた。でも、気持ちよく振っていたらフェードのほうがよくなりましたね。昨年が2シーズン目で、だいぶ安定感が出てきたと思います。

桂川 なるほど。僕はスウィングに関してはあまり変えるつもりもなくて、見てもらっても結局自分の意志が勝つ。でも、一度目澤(秀憲)さんに教えてもらったとき、知識もいただいたし、特にアプローチやパッティングはすんなり取り入れることができてすごくよくなりました。

「悔しくても、比べず慌てず、自分を究めるしかない」(桂川)

「昨年、ショートゲームがどんどん下手に。目澤さんにイチから打ち方を教えてもらい悪くなっても『これをやればいい』という基準ができてよくなりました」(桂川)

清水 そういえばショットの調子が悪くなったときに有人に聞いたら、「アプローチみたいにコンパクトに打ってる」と返ってきて。なんだかよくわからないぞと(笑)。でも、僕ももともとはあまりコーチを信用しないタイプで、言われたことをやって悪くなるなら自分でやったほうがいいと思っていた。でもその限界に気付いたし、このままだとゴルフ人生が終わるだろうなと思うくらいショットが悪くて。それで、しっかり見てもらうようになり、データから理解できるようになった。最初の1年は試合でまったくできなかったのでストレスがたまっていたけど、2年目くらいで自分のスウィングになってきた感じです。まあ、アプローチはけっこう適当で、パターは真っすぐ打てばいい、くらいの感覚でやってますね。

桂川 その表現、僕と同じ(笑)。大成はショートゲームが得意で、僕はショットが得意分野だから。

清水 考えてみれば子どもの頃、アプローチの練習をショットより長くたくさんしていたんですよね。家の中でスポンジのボールを打ったりしていた。

桂川 僕は逆にアプローチやパターの練習をしたことはなくて。最初はインドアで練習グリーンもなかったし。距離が伸びていくのが楽しくてショットばかり練習していたんです。遠くのネットに当たることも楽しかったし、飛ばすことが好きでした。

清水 やっぱり、遊びとか楽しいとかいう感覚は大事だよね。僕の今の課題はショットの波を安定させること。飛距離を落とさずに安定させたい。以前は芯を外すことも多かったから、ドライバーがよく割れていた。そういうことは減りました。メンタル面では、優勝争いをしているときと、そうでないときの見え方が変わるので、一緒にしないといけません。

桂川 僕は最近、自然体でプレーするようにしています。子どもの感覚になって、あまり深く考えすぎないように、やることをやっていれば上手くなると思っている。周りのレベルが高いので、そういう上手い選手と一緒にプレーする機会が多いことこそ、自然と成長につながると思います。

「ミスも自分でコントロールできないと思えば
落ち込まない」(清水)

「前は優勝争いでプレッシャーを感じていたけど、最近ではそうでもなくなった。ミスも自分でコントロールできることではないと思えれば、あまり落ち込まなくなります」(清水)



――最後に、それぞれの今後の予定と目標を!

桂川 ヨーロッパは、1カ月後のイングランドの試合からスタートして、スイス、フランス……と連戦する感じです。その前に8月の日本ツアー(HANDA)にも出ることにしました。

清水 そうなんだ。では、練習ラウンド、久しぶりに一緒にしよう。

桂川 いいね! そして僕はヨーロッパのファイナルシリーズ、アブダビ、ドバイの試合に出場できるよう、ポイントランク70位以内、50位以内を目指しています。

清水 僕は賞金王を取りたい。何よりこの後、万全の体調で戦いたい。日本プロで熱中症になり、そこから体調を崩したので、整えることが重要です。そしてQスクールを受けて海外を目指したいです。

桂川 僕たち昔からよく、「アメリカで会おう」と言っていたよね。

清水 そうだね。よく言っていた。

2人 では、改めてここで。PGAで会いましょう!

会うなり、歯のホワイトニングやひげの脱毛などの話をする2人だが……「大学時代は、大成とよく夢の話をしたね」(桂川)「ゴルフの話というより、アメリカに行く話なんかだよね」(清水)

週刊ゴルフダイジェスト2025年8月19・26日合併号より