年齢とともに、どうもゴルフが上手くいかなくなってくる……そんな悩みは、プロゴルファーも同じ。今年40歳を迎えた塚田よおすけが、「19番ホール」に“レジェンド”葛西紀明と“シニア賞金王”宮本勝昌を迎え、お酒を片手に尊敬する先輩たちと、長く続けるコツを真剣トーク!

PHOTO／Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Shinji Oasawa、Getty Images　THANKS／Grill and Bar Slow Life

宮本勝昌（左）　みやもと・かつまさ。シーミュージック所属。1972年静岡県生まれ。13歳でゴルフを始め、日大1年時に日本アマ制覇。卒業後にプロ転向し、日本12勝、うちメジャーで5勝を挙げる。米ツアーにも挑戦後、3シーズン選手会長を務めるなど信頼も厚い。シニアでも7勝を挙げ2年連続賞金王獲得中。米シニアにも積極的に参戦
葛西紀明（中）　かさい・のりあき。土屋ホーム選手兼監督。1972年、北海道生まれ。小3でスキーを始め、ジュニア時代から世界で活躍。五輪には8回出場。銀メダルを2つ、銅メダルを1つ獲得。ワールドカップでは個人17勝、ギネス世界記録に載る最多出場記録を更新中。ゴルフは年40回程度プレー。ベスト75、平均飛距離280Y
塚田よおすけ（右）　つかだ・よおすけ（陽亮）。ホクト所属。1985年長野県生まれ。10歳でゴルフを始め、15歳で渡米しIMGアカデミーで腕を磨く。帰国後名古屋商科大を経て08年プロ転向。16年に日本ゴルフツアー選手権で初優勝。ドライビングディスタンス上位の常連。地元でジュニア教室を企画するなど幅広く活動

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  年齢とともに、どうもゴルフが上手くいかなくなってくる……そんな悩みは、プロゴルファーも同じ。今年40歳を迎えた塚田よおすけが、「19番ホール」に“レジェンド”葛西紀明と“シニア賞金王”宮本勝昌を迎え、お酒を片手に尊敬する先輩たちと、長く続けるコツを真剣トーク! PHOTO／Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Shinji Oasawa、Getty Images……

スタイルを変えるのは
とても難しい

宮本　葛西さん、そもそも「レジェンド」と言われること、嫌じゃないですか?

葛西　いえ、気分いいです（笑）。

宮本　そうなんですね。“キングカズ”（三浦知良）と同じですね。カズさんも喜んでるもんね。

塚田　でも、なかなかいないでしょう。オリンピックに8大会出場されていて。

宮本　オリンピアンってすごいです。ゴルフは復活してここ3大会やっていますけど、プロゴルファーには、オリンピックよりもメジャー大会、マスターズなどに思いが強い人が多いと思います。ただ、オリンピックでメダルを取った選手たちの反応や表情を見ていると、シェフラーもフリートウッドも松山（英樹）も感極まっていました。やはりオリンピックは個人戦でも、国を背負ってやる大会なので、プロスポーツとは違う何かがあるのかなと感じましたね。僕はテレビが大好きなのでずっと見ていましたけど。松山くんの銅メダルなんか、見ているこちらも感動しました。

葛西　松山選手は、マスターズでも勝ちましたよね。

宮本　日本人がまったく足を踏み入れることができなかったところに松山くんが行ったのは、サッカーのワールドカップで日本が優勝するとか、日本人が陸上の100メートル走で金メダルを取るくらいの偉業ではないでしょうか。

塚田　僕たちが生きているときに、日本人がマスターズでチャンピオンになるとは思ってもいなかったですから。でもジャンプのワールドカップでも、今は小林陵侑選手が「出れば勝つ」といった感じ。葛西さんが若い頃に、あのように勝つことは想像できましたか?

葛西　陵侑がうちのチームに来たときにいろいろと教えたら、一気にポーンと上がって。対応力がすごくある、言えばすぐにできるタイプで、「ここをこう動かすんだよ」というと、ポッと飛べたんです。僕が20代の頃に、僕のようなコーチがいてくれたら、もっと強くなれたと思いますね（笑）。

宮本　ジャンプのスタイルや技術は時代とともに変わりますか?　そのときの理論とか空力学に対応していく人がやはり強い?

葛西　はい。そうです。たとえばV字ジャンプが流行ったのは1990年頃で、それまでは別のスタイルが当たり前でした。

宮本　ニッカネン、いましたよね。

塚田　さすが、詳しい（笑）。

葛西　はい。スタイルを変えるのはとても難しいんです。

宮本　何かを変えるのは本当に難しいです。でもやっていかないと。ところでジャンプスーツに関して、試合前のチェックで、わかっていても規定に引っかかるものですか。

葛西　ギリギリを攻めるからしょうがないです。チェックはまったくの平等ではないですし。

宮本　そこは打ち勝つ必要がある。

葛西　そうですね。

宮本　全米プロ前のマキロイの不適合ドライバーの話もありました。彼だけではなく、日本でも時々引っかかるプロはいる。メーカーもギリギリを攻めるから。クラブのフェースが薄いほど反発係数が上がり飛ぶと言われていますけど、基準は決まっています。

塚田　パキーンと気持ちいい感じ。葛西さんも好きかもしれませんが、甲高い音が鳴るのは、基本的にフェース面が薄いんです。でも宮本さんなんかはそうではない音が好き。僕たちは音で選ぶことはある。

宮本　ちょっと鈍い音がする感じ。アマチュアの人には受けないんですよ。メーカーにも戦略がある。

塚田　それにしても宮本さん、スポーツもゴルフもよくテレビで見ていますよね。

宮本　暇だから（笑）。アメリカの男子はもちろん、LPGAでも日本の女子選手が毎週のように優勝争いするし。完全にアマチュアのおじさんです。もちろん日本の男子も応援しています。陽亮がいつも1、2日悪いから、歯がゆい。でも僕も先輩によくそう言われていたから。状況もわかるんです。

塚田　そこは痛いなあ……僕から質問です。今年40歳なんです。シニアツアーは50歳からであと10年。生涯現役というか、どうしたら長く続けられますか?

40歳は通過点
まだまだ先がある!

葛西　40歳はまだまだです。僕はメダルを取ったソチオリンピックのとき41歳だったし。まだこれからだと思っていました。体力の衰えも感じなかったし。昔ジャンプ選手は30歳過ぎたら引退するという流れがあったけど、原田（雅彦）さんが37歳まで、岡部（孝信）さんが42歳まで頑張り、道を作ってくれて。僕も42歳を超えて、気づけば53歳になっていましたけど、まだ体力の衰えを感じないのでやめる意味はないと思っています。

宮本　私の見解では、まず、葛西さんは全体的におかしい（笑）。競馬界の武豊さんと同じく「変態」です（笑）。ゴルフは50歳からカテゴリーが変わります。僕が陽亮たちと同じレギュラーツアーでやっていたら、僕も葛西さんと同じ部類に入れるかもしれませんけど、我々は50歳以上の部があるので、葛西さんとは違う気がします。武さんも、またG1で優勝していました。年下世代が同じフィールドにいたり調教師をやっているなかで結果を出す。なかなかいませんよ。葛西さんもまだ20、30代の子に体力も成績も負けていないです。

葛西　「やってみよう」というチャレンジ精神や、「こいつらに勝てる」という思いはありますね。

宮本　それが僕には思えなくて。でも、アメリカのシニアツアーにはめちゃくちゃ興味あるし、行けると思っているんです。葛西さんもメインは世界ですよね。僕もアメリカ＝世界だと思っていますから。そこは唯一の共通点かな。

塚田　アメリカのシニアツアーは、僕たちが子どもの頃に見ていた選手たちが多く出ています。ジャンプのワールドカップと同じくらいの感じでお客さんもすごく多い。日本はシニアがそれほど浸透していないので。ああいう場所でゴルフをしたいと僕も思っています。それもいい目標です。

葛西　そこに行くまで10年あるから、まだまだ先だし、大丈夫だよ。

宮本　目の前の試合を頑張りなさい、ですよ。

葛西　それにそういう目標があれば、今、もっともっと行けます。

塚田　まず、志があるから長くできるということなんでしょうね。

葛西　もちろん、若い頃にはそれなりにトレーニングをしました。血へどを吐くくらい。

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週刊ゴルフダイジェスト2025年8月12日号より