Myゴルフダイジェスト

会員登録
  • ホーム
  • プロ・トーナメント
  • 【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.866「人の意見を聞き入れる選手は“ブレーク”する可能性を持っています」

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.866「人の意見を聞き入れる選手は“ブレーク”する可能性を持っています」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


女子ツアーではここ数年、ブレークする選手が多く現れていますが、今年は男子ツアーにもそんな気配がしてきています。ブレークする選手とそうでない選手では、どこに違いがあるのでしょうか。(匿名希望・47歳・HC5)


ある日突然、いままで注目されていなかったプレーヤーが彗星のように登場して瞬く間にスターの座に就く。

そのことをブレークと表現していますよね。

ブレークは英語で“壊す、折る、破る、切断する”といった意味ですから、ブレークはそれまで目の前に立ちはだかっていた記録や壁を突破し克服する、といったイメージの言葉なのでしょうね。

実際、優れたアスリートは、あとで振り返ってみると、飛躍的に力を伸ばしたと思われる時期やシーズンがあるものです。

その期間中に行われた大きなタイトルの懸かった大会に優勝して自信をつけた、といった具体的なキッカケがある場合もあります。

ですがほんとうのところは、それまでに練習で培ってきた技術を競技のなかで十分に発揮できる準備が整い、肉体と精神の歯車が噛み合うタイミングを迎えたということなのではないでしょうか。


ファンの方々から見れば、ブレークはいきなり訪れたように見えたとしても、本人の中にはブレークする理由がちゃんとあったと思います。

突然ワケもなくブレークできてラッキー! ということはあり得ないと思っています。

国内女子ツアーでは、ここ数年プロ入りして間もない選手が、あっという間にランキング上位に上り詰めるシーズンが続いています。

稲見萌寧選手はプロ入り3年目からの2年間で通算9勝を挙げて2020-21年の統合シーズンを席巻し、日本女子プロ選手権のタイトルも獲得しました。

山下美夢有選手もプロ4年で11勝を挙げて2年連続ランキング1位。

昨年はプロ3年目の竹田麗央選手が春先のツアー初優勝から破竹の勢いでシーズン8勝、日本女子オープンと日本女子プロの公式戦2勝もしました。

ほかにも、デビュー3年目で出場10試合目までに5勝した西郷真央選手がいますし、岩井明愛、千怜姉妹も昨年までに国内でそれぞれ6勝、7勝を挙げています。

そして今、そのブレークを果たした選手たちの多くは、世界の舞台に挑み、なお一層のブレークを今も求めているとわたしの目には映っています。

では、ブレークする選手と、そうでない選手はどこがどう違うのか。

全員に当てはまるワケではありませんが、好奇心旺盛でいろいろなことに興味を持てるような選手がブレークしているような気がします。

反対に自分にしか興味のないタイプは、持てる能力を十分に伸ばせないからブレークすることが難しいのかもしれないと感じています。

優れたアスリートとは、現状に満足せずいまよりもっと成長をするために、常に全身のアンテナを延ばしてあらゆる情報を集めているものです。

自分の成長に役立つものを敏感に感じ取り、自分のものとして吸収する能力。これこそが、次のステップへと導いてくれる“ブレーク”。

周囲に目を向け、興味を持ってつぶさに観察することの大切さを分かってほしいと思います。

でも、これを忘れたらいけません。

タイトルを獲った、新記録を打ち立てたときの喜びや感激はもちろんありますが、その余韻に浸るのは、その夜一晩だけで終わりです。

なぜなら成長が止まってしまうからです。

トレーニングを1日休むと、取り返すのに3日以上かかると聞いたことがあると思いますが、それと同じです。

“切り替え”が大切ということを、ブレークしている人たちは知っているのだと思います。

目標としていたものを達成し手に入れたことで自信がつくのは、とても素晴らしいことです。それまで練習してきたことが間違ってなかったと確信も持てるはずです。

でもだからといって、自分以外の人がやっている方法が間違っているわけではありませんし、そのやり方を否定することは当然ありません。

自分自身、常に神経を研ぎ澄まし、謙虚な気持ちで練習して、いろいろな意見や考え方を聞いて探し求め続けることが、その次の“ブレーク”へとつながる道だと思います。

「最大のスキルとは“謙虚”だと思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年7月8日号より