ニッポン女子が世界で活躍できる理由 #1「アメリカがアウェイではなくホームになった」

今季、USLPGAツアーを舞台に戦っている日本人選手は13人。「気づけば今週も優勝争いしている!」と寝る時間が取れないゴルフファンも多いのでは? ニッポン女子はどうしてこんなに強くなったのか?プロ、コーチ、そして識者に聞きました。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Shinji Osawa、TsukasaKobayashi、Shizuka Minami、JJ tanabe
自然体で力みがない。アメリカが“ホーム”となった

赤野公昭
アメリカのメンタルトレーナー、J・ペアレント博士に師事。日本古来の「禅」と欧米の最新理論を融合させた独自のメソッドでアスリートを指導
“ニッポン女子”の快進撃が止まらない。今季の米女子ツアーで、初参戦組の竹田麗央が出場5試合目のブルーベイLPGAで2勝目(初優勝は24年のTOTOジャパンクラシック)を飾り、昨年参戦し「新人王」を獲得した西郷真央が4月にメジャーのシェブロン選手権で初優勝、双子の姉妹で初参戦している岩井千怜も5月のリビエラマヤオープンで初優勝した。
先日の全米女子オープンでは竹田が2位タイ、西郷が4位タイ、渋野日向子も7位タイとメジャーも含めて毎週のように優勝争いに顔を出すニッポン女子。見る者はワクワクさせられる。
先陣が流れは作っていた。17年から参戦する畑岡奈沙は通算6勝を挙げ、20年から参戦する笹生優花は全米女子オープンで2勝、22年から参戦する古江彩佳は昨年、メジャーのアムンディエビアン選手権で2勝目を挙げている。
この強さの理由は何か。まずはメンタルコーチの赤野公昭氏に聞いた。
「一番大きいのは歴史の流れ。宮里藍さんを見て育った世代。彼女が世界で活躍する姿を見て、私もああなりたいと感じ、19年に渋野日向子選手の全英での優勝を見て『私にもできる』となっていく。十数年で少しずつメンタルの壁を壊してきたのです。一朝一夕にできたものではなく積み重ねです」
「私もできる」効果は、今回聞いた皆さんが挙げたことだ。
「同じ舞台に仲間が増えたことも大きい。メジャーでも日本選手と一緒に回ることも多いでしょうし、アウェイ感がなくなり、アメリカの舞台もホームにも感じられる。また大谷翔平選手が以前のWBCのとき、『憧れるのをやめましょう』と言いました。憧れてしまっては超えられないと。今の日本の女子選手のプレーやコメントを見ても、アメリカが憧れの場所ではなく勝つ場所になっています」
また、飛距離の差が減ったことがメンタル面にも影響している。
「飛距離を必死で伸ばそうとするとスウィングを崩したり、何より『力み』につながる。これはメンタル面に悪影響です。男子はここにまだ壁がありますが、女子にはないから伸び伸びプレーできる。また、日本のツアーが4日間の試合を増やしたので、集中力のメリハリをつけられるようになった。皆さん、ボールを打っていないときはすごくリラックスしているようです。昔は試合でピリピリしがちでしたが、今の若い選手には『楽しむ』という気持ちがあるし、海外選手のように、周りは気にせず自分の世界を大事にする選手が増えてきました。
それにプレーのリズムがいいのは考えすぎていない証拠。自然体だからイメージが湧き、右脳的にプレーできる。この観点から見ると、経験が長い畑岡選手などは左脳的になっているかもしれない。渋野選手は左脳的になったりメジャーでは開き直れるからか右脳的になったり。いずれにせよ若い時は感性と勢いがあるので波に乗りやすいけど、よい状態は長く続けられない。誰しも通るその壁で、どう考えていくかは今後大切になるでしょう」
- 今季、USLPGAツアーを舞台に戦っている日本人選手は13人。「気づけば今週も優勝争いしている!」と寝る時間が取れないゴルフファンも多いのでは? ニッポン女子はどうしてこんなに強くなったのか?プロ、コーチ、そして識者に聞きました。 PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Shinji Osawa、TsukasaKobayashi、Shizuka Mina……
- 今季、USLPGAツアーを舞台に戦っている日本人選手は13人。「気づけば今週も優勝争いしている!」と寝る時間が取れないゴルフファンも多いのでは? ニッポン女子はどうしてこんなに強くなったのか?プロ、コーチ、そして識者に聞きました。 PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Shinji Osawa、TsukasaKobayashi、Shizuka Mina……
週刊ゴルフダイジェスト2025年7月1日号より