【インタビュー】杉浦悠太「今年の目標は“賞金王” 海外への道はおのずと開ける」

今週、国内男子ツアーがいよいよ開幕。今年注目のプロ4人に、オフの過ごし方、ゴルフへの向き合い方、今年の目標をインタビュー! まずは、冷静なショットメーカー・杉浦悠太。
PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa

「磨いたアイアンショットを
見てください」
杉浦悠太は、とても冷静でフラットに見える。
「よく言われます。でも不安は当然ありますよ。だからといって特別何かをやったりしませんね」
切り替えが上手いのだろう。
「基本はできているんですかね。5分後にはもう考えてないんで。考えないようにしているわけではない。考えないようにしていたらもう考えてますよね(笑)。でも、外には見えないかもしれないですけど、ミスしたら次のショットくらいまではめちゃくちゃイライラする。抑え付けて体の中で爆発してますけど人がいるところでは見せません。どうしても落ち込んだら1人で落ち込む。人に見られたくない。まあYouTubeとか見ていたらもう忘れますし、ゴルフをしていなければプロゴルファーだということも忘れています」
こういった部分が杉浦の強さなのだろう。

メンタルもまだまだ磨きたい。「引きずるところもあるので、それは直したい。やっぱり強い選手って、本当に無理だとなってもその後すぐに立て直せるんですよね」
杉浦は昨年、開幕から5戦連続トップ10、プロ12戦目でメジャーの日本プロ優勝というルーキーとは思えぬ“大物ぶり”を見せつけてくれた。
「昨年は80点。優勝があったからです。プロの試合が始まるまでは上手くいくか不安でいっぱいでした。フェニックスからオフを挟んで大学生活最後の頃は調子が悪かったんです。でも、開幕すると優勝しそうだったり、ずっと調子がよかったんです」
しかし杉浦は、ゴルフ人生で初めて「ケガ」を経験した。
「日本プロの翌日から、ひじがダメになって。疲れもあったし、そもそも痛めそうなスウィングでもあったので……それが優勝後のタイミングでケガとして出た感じです。直るまでにはだいぶかかりました。試合もあまり出られなくなって。検査しても異常はなく、トレーニングとストレッチで可動域を広げたり、ひじの負担が減るようにしたら、自然と痛まないスウィングができるようになった。自分の体がだいぶ変わりました」
そして初優勝が、ケガで落ちていきそうな自分をとどめてくれた。
「あの優勝が大きすぎて、そのおかげで気持ち的にも安心して、ケガでも変なことも思わず前向きにいられて、だんだん成績も出始めた感じです」
10月のZOZOチャンピオンシップでは日本人最高位の6位。大きな試合で力を発揮する男だ。
「日本オープンで予選落ちしたけど、終わった後の練習で振る感覚が取り戻せたんです。ZOZOはC・モリカワと回り、調子はよくなさそうなのに上位に入れることはすごいと思いました」
でも、負ける気はしなかった。今年初めのソニーオープン・イン・ハワイでも同じような感覚を持った。
「飛距離は平均はいっているという感じがするんです。今、飛べば飛ぶほど成績も出るというデータもあるので皆頑張っているけど、そちらに行きすぎると方向性などを犠牲にする気がして。今は体が強くなれば勝手に飛ぶくらいのイメージで、満遍なくトレーニングし、足りない部分はより鍛えていこうかなと」
今オフはケガをしたときに出会ったトレーナーと週3回ほど、1時間から1時間半、体を磨いてきた。技術は、10年以上前から通う地元の江連忠ゴルフアカデミーで磨く。
「オフは練習場で球を打つことが中心。奥コーチもいますし。スウィングは日々変わる。僕のスウィングを理解してくれているコーチが悪くなったところを教えてくれるんです。今は新しいことをどんどん取り入れる必要はないと考えています」
杉浦がゴルフをするきっかけとなった父は、自慢の息子がダンロップフェニックスで稼いだ車に乗っている。「元気で楽しくやってくれれば」(父)。家族仲がとてもよい。プロテストを受験中の妹もいる

高校大学時代、名だたる先輩プロ・コーチたちがアドバイスをくれた。基本ずっと自分でやってきた。「大学に入って初めは結果が出なくて。自分ですべてやろうとしたんですけど、今はコーチやトレーナーさんに相談しながら。だから、スウィングで悩むことはほとんどなくなってきた」
人に少し頼れるようになり、より自分が磨かれてくる。
「自分が何かを直したいときに、どうやって直すかを聞きます。直す場所は一緒でも、直し方は人によって違うので何人かに聞いて自分で選択するという感じ。やっぱり自分がやりたいことが第一にあって、そのためにやるんですから」
自他ともに認めるショットメーカーだが、数値を見るとオールラウンダーとも言える。イーグル率がトップなのも、総合的に上手いから。「そう言われて嬉しいですね。あまり苦手なものはないんです」と言い切る。
海外にもどんどん挑戦したい。
「でも最近、焦らなくなりました。時間が解決してくれるというか、海外に行ける実力が付いたら行けるのかなと。だからまず今年の目標は『賞金王』です。道も開けると思います」
その先にあるのは、もちろんPGAツアーだ。「マスターズで優勝したいですね」。
髪色を茶色にして、パーマをかけた。なんだか可愛い感じだ。
「オフの間にトライしようと思って、一度髪の毛を染めたら好評で、次はパーマかなと。いきなり両方にするまで攻め切れないんで。金髪はもう少し先ですかね」
こう言って、マネジメント巧者ぶりを発揮する。
見てほしいプレーは?
「アイアンはパーオン率を上げるためにもさらに磨きたいので。ぜひ見てください。それに、男子ツアーのプロは、皆いろいろな球を打てます。こちらもぜひ」
試合中、ギャラリーのことはしっかり見えるという。「タオルを持って応援してくれたら嬉しいですよ」。タオルを持って杉浦と目が合えばきっと、照れながらうなずいてくれるだろう。

「技術的な課題はたくさんありますけど、今シーズンはパーオン率を意識したい。スタッツはそれとFWキープ率しか見ません。他の数値は別の要素が絡むので」
週刊ゴルフダイジェスト2025年4月22日号より