【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.854「プロ自身がクラブを選ぶ眼力を持つべきだと思っています」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら 日本人は繊細だが大胆さに欠けるともよく言われます。その国民性はゴルフにとって有利なのでしょうか不利なのでしょうか。岡本さんは日本……
最近、特定メーカーとクラブ契約を結ばず、フリーの立場で自由に使用クラブを選ぶプロが増えているという話を聞きました。この傾向について岡本さんはどうお考えでしょうか。(匿名希望・HC5)
デビューして2〜3年が過ぎると、いわゆるプロの水に馴染んでくると言うのでしょうか、プロとして目指す球筋や理想のスウィングといったものを求める感覚がなんとなく分かってくるような気がしたのを記憶しています。
プロになって最初に覚えたのが、試合のため地方のコースからコースへの移動の手順。
それから、試合会場や練習場での振る舞い方にギャラリーの方々への接し方やトレーニング方法、食事や休息の取り方などさまざまなことを学びながら、プロとしての日々の送り方、そして心得を理解していきます。
試合では練習では得られない勝負勘も自然と備わり、その感覚は全身に蓄積していくものだとも思います。
クラブやボールといったギアに対する知識も、そうした蓄積される経験の対象になります。
実際に打った感触や結果が、体に組み込まれていくことになるのです。
プロになり、そういう記憶や経験が蓄積され、そこから自分の理想を求めてギアにこだわりを持つようになる、そんな時期があった覚えがあります。
ここ数年、確かにクラブ契約フリーというプロが男女ともに増えてきたように感じます。
私がツアーでやっていた当時は、職人が作ったクラブはすべて正解という考え方を前提に、プレーヤーが使わせてもらうという考えでした。
いわゆる職人気質の男性社会という感じでした。
プロとはいえ、女性でありながらクラブに関して物申すことなど、正直まともに取り合ってもらえない空気がありました。
経験を積み、知見を深めた女子プロが自分に合った理想のクラブを求めようとしても、対等に話を聞いてくれるクラフトマンと巡り合うのは難しいというのが現実でしたが、時代は移りました。
今はメーカーと契約するより、最適なクラブで自由にプレーできることを優先するプロも少なくありません。
常に理想を求めるプレーヤーの立場から考えてみれば必然かと思います。
クラブやボールは長い時間をかけて研究開発され、進化を遂げてきました。
そしてゴルファーのアスリート化を促す一方、全体の飛距離が伸びたことでコースデザインにも影響を与えました。
ギアの進化がゴルフそのものを変容させてもきたのです。
そんな情勢を迎えている今のゴルフ界で、プレーヤーのそれぞれが自分の使うクラブに関して、強いこだわりを持たないほうがおかしいとも考えられます。
クラブのメカニズムに対して、プロはもっと興味や関心を持つべきだと、わたしは以前から感じてきました。
メーカーのギア担当者もより良い製品の開発に生かそうと、以前よりプロの意見に熱心に耳を傾けるようになっていることもあり、クラブ製作者と使用者の協業が実現できる時代になってきたのかとも思います。
ゴルファーの体力、技術が進歩するにつれ、コースのセッティングも厳しさを増してきました。
昔はグリーンの端にカップは切りませんでしたが、今やエッジから3ヤードにピンが立つこともあります。
ギアの進化も相まって、それだけピンを狙える技術も高まったといえるでしょう。
今後ツアーでは、従来の常識を超える非常に難易度の高い戦略的なコースが登場してくるのではないかとわたしは思います。
選手個々の総合力を試すには、これまでにないシチュエーションを与えるしかないと考えても不思議はないからです。
そうなると、それに対応するクラブやボールが考案される可能性もあります。
プロは最適なクラブでプレーできる準備を整えておきたいと考えるのが自然なので、今後、クラブフリーの傾向は強くなるかもしれませんね。

「自分が使うモノを自分自身で判断する力を付けるためには、いろいろな経験を積むことがとても大切です」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年4月8日号より