【インタビュー】河本結「ゴルフだけでなく人としても一流でありたい」

昨年、NEC軽井沢72で5年ぶり2勝目を挙げ、メルセデスランクも7位と活躍した河本結。アメリカでのつらい時期を経て復活を遂げた裏にはどんな変化があったのか?
PHOTO/Shinji Osawa THANKS/横浜CC

日本一の技術があれば
メジャーにも勝てる!
――昨年はどんなシーズンでしたか?
河本 毎日全力でゴルフと向き合っていたから一瞬でした。本当にあっという間に終わっちゃった。優勝は、単に5年ぶりで嬉しかったということではなくて、メンタルトレーニングをして、自分の思い描いたことが体現できることを実感できたほうが嬉しかった。5年前と違って意識的に取り組んだことで優勝できたので、人としてめっちゃ成長した感じもしました。
――メルセデス・ランキング7位という結果に関しては?
河本 周りには、QTから来てすごいと言われるけど、シードを取ることが目標ではなく、年間女王を争える自分なんだ、ということに気持ちを引き上げていたので、よかったと言われてもその感覚はない。それだけやってきた裏付けがあるから満足はしていません。
――昨年とそれ以前で大きく変わったことは何ですか?
河本 まず、気持ちです。昨シーズンは勝負の年だと思っていた。ここで変われなかったらこのままゴルフ人生が終わると。シーズンを通して、体と脳をいい時も悪い時も毎回リセットしてゼロに戻していました。技術面ではパッティング。ここ3年間ずっと自分のデータを分析して、特にリズムと出球が変わらないように心掛けてきました。私はダウンブローに打って引っかけてしまいがち。フェースの開閉が大きくなりすぎないようにかなり意識しています。パットがよくなると全体の流れが切れなくなるのもいいんです。
――メンタルトレーニングの効果を具体的に教えてください。
河本 とにかく今に集中できるようになりました。一喜一憂せず、イライラもしなくなりました。メンタルコーチと対話しながら脳の仕組みを変えていった感じです。たとえば雨が降っている状況で、「嫌だなあ」と思うか「新しい傘や長靴を使える!」と思うか。本当に些細なことも、ポジティブに考えるかネガティブに考えるかで変わります。実は優勝した時も、2日目から「優勝したい」ではなくて「優勝する」と100%思っていたんです。トロフィを持って周りが泣いているイメージの自分だけが思い浮かんでいました。


バウンスバック率1位の要因は考え方の変化。「頑張らなくなりました。次のホールで取り返そうという気持ちがまったくない。ボギーの後もしっかりフェアウェイに置くことしか考えていないんです」
――全米女子や全英女子、TOTOに出場して、手応えは?
河本 楽しかったですし、今の私で戦えるんだと思いました。アメリカは、こんな感じだったなあと何だか冷静に思えたし、(全英の)セントアンドリュースは、ここに来られて幸せだなあと。風がビュービューで何だか違うゲームですよ(笑)。でも、風が吹かなかったら簡単かもしれない。TOTOではアメリカで同期の子たちに久しぶりに会えて嬉しかった。キム・アリムに「戻っておいで」と言われたり。でも、アメリカでのつらい時期があっていろいろなことを経験した自分は、マジで強くなっているんだという手応えがあったし、日本一の技術があればメジャーにも勝てると思いました。

飛距離アップのために体を大きくしているという河本。「見栄えは細いほうがいいけど、ゴルフが第1優先なので。でも、小顔は意識していたいです」
――今シーズンの目標は?
河本 年間女王です。もっと先の目標というか夢は、ゴルフ界のカリスマ的存在になって、ゴルフの普及とゴルフ人口を増やすこと。私は人としても一流でありたいんです。ゴルフだけではなく人間力がないと意味がない。ゴルフの枠を超えて日本で一番になりたい。こういう上の目標がないと年間女王にもなれませんよね。
――年間女王になるために、オフに磨いたことは何ですか?
河本 体は、下半身と上半身を分離して使えるよう意識してトレーニングしていますし、栄養士さんとも相談しながらタンパク質を多く摂って筋量を増やしています。また、昨年はパーオン率やフェアウェイキープ率が悪かった。ドライバーが曲がっていたので、やはり体を大きくして“振れる質量”を作り安定させたい。ただ、スウィングの形にはとらわれすぎないようにしています。そもそもゴルフってスコアを1打でも縮めるものですし、全部そのための準備。気持ちも、体作りも、技術面も、昨年やっていたことの質を高めてテッペンを狙いたいです。

月刊ゴルフダイジェスト2025年4月号より