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【インタビュー】松山英樹「バージョンアップは続ける。でも、やることは変わらない」

2024年の松山英樹は、シーズン2勝、オリンピックでは銅メダルとその活躍から目が離せなかった。そして、25年シーズンは開幕戦でいきなり優勝! 世界のトップで戦い続けているからこそ感じた世界を語ってもらった。

TEXT/Yuzuru Hirayama PHOTO/Takanori Miki、Blue Sky Photos、Getty Images

松山英樹 1992年生まれ、愛媛県出身。4歳でゴルフを始め明徳義塾中高卒業後、2010年東北福祉大学在学中にアジアアマチュア選手権を制し2011年のマスターズでローアマ獲得。2013年にプロ転向し日本ツアー賞金王に。2014年からPGAツアー本格参戦、2021年のマスターズではアジア人初のメジャー優勝達成

自分の全力を出した結果が
メダルであったにすぎない

松山英樹という大木の、2024年は節目の一年となった。

「いいシーズンだった」と本人も振り返る。まず2月のザ・ジェネシス招待では、最終日に7位から出て大会最終日のコースレコード62。PGAツアー9勝目はチェ・キョンジュを抜くアジア人最多勝利となった。そして8月のパリオリンピックでは、最終日に4位から出て6バーディーノーボギーの65。日本人初となる銅メダルを獲得。この粘り強さが、昨季の松山には顕著だった。

「リビエラでの優勝は、アジア人最多を更新できて、嬉しかったです。チェ・キョンジュさんの8勝を、丸山(茂樹)さんから『抜いてくれ』と言われていて、約束を果たせました。でも、オリンピックは、楽しかったことはないです」

4日間「吐きそうだった」という重圧から、最終日に「どうにか踏みとどまって」勝ち得た銅メダルの表彰台。満面の笑みではあったが、その隣には、金メダリストのスコッティ・シェフラーがいた。世界ランク1位が号泣する姿は、間近で見つめる彼にはどのように映っていたのだろう。


「表彰台で自分の国の国歌が流れるところ(金メダル)を目指してやっていましたから。自分だったらどういう感情になるかわからないですけど、そこを目指した者なら、ああいう感動があるのかな。でも日本を代表しているという感じまでは、僕にはないかな。僕は僕でしかないです。自分の全力を出した結果がメダルであって、取れなかったら自分の実力。代表としてというより、まずはそこにいる選手と戦っているという感じ。ゴルフはチーム戦でもないので」

だがそのチーム戦も、昨季の彼は経験している。9月、アメリカ選抜対世界選抜のプレジデンツカップ。6回目の出場で、彼は世界選抜のエースとして臨んだ。印象的だったのは最終日、シングルスでアメリカ選抜が松山に当ててきた選手は、あのシェフラーだった。「最近ないくらいショットがよかった」という一騎打ちでの勝利。プレー中の、感情のこもった派手なガッツポーズは、普段の彼が見せないものだった。

「もう6回目なので慣れちゃいましたけど、個人戦じゃないので、難しさはあります。チームに貢献できるように、それこそトム・キムみたいな感じで、ジェスチャーであおったりできればいいのかもしれないですけど、僕はそういうタイプじゃないんで」

それでも、プレーの合間には、派手なジェスチャーも見せていたが、と向けると、

「そうですね。あれでチームが盛り上がったりするならそれでいいと思ったし、観客が世界選抜を応援してくれればいいなって。エースだからやらなきゃということでもないし、今年の大会はカナダだったことですごい世界選抜のホーム感が出ていて、それが嬉しかったです。あおったほうがパワーにもなると思ったので」

自分が歴史を作るっていう
意識はない

8月には、フェデックスセントジュード選手権での「苦しかった」と語ったツアー10勝目もあった。この試合も15番で一時首位を明け渡しながら、17番で8mの「無心で打った」というバーディパットを沈めての逆転優勝だった。アジア勢初の2桁勝利達成もまた、精神面での強さが強調された内容だった。まさに日本の、そしてアジアのゴルフの歴史を作っているさなかにあるが、本人は至って冷静だ。

「過去には、ジャンボ(尾崎将司)さんの94勝、青木(功)さんの51勝、中嶋(常幸)さんの48勝があります。それを差し置いて、僕が歴史を作るって意識はないかな。僕は海外では活躍できましたけど、過去の人たちが作り上げたものに、自分が乗っかっているだけですから」

そして、年が明けて開幕戦のザ・セントリーで、PGAツアーに新たな記録を刻んでみせた。通算35アンダーでの優勝は、最多アンダーパー新記録だ。

「これからも、ゴルフのバージョンアップは常にしていきます。ただ、やることは変わらない。これまでとまったく一緒です」

成長し続け、進化し続け、そして歴史や記録を刻み続けている。何より変わらないのは、その冷静で謙虚で着実な、向上心なのだろう。

開幕戦の「ザ・セントリー」では初日から、「65」「65」「62」「65」とし、バーディ以上の数は4日間トータルで35個(うちイーグルは2つ)。2022年の同大会でキャメロン・スミスが樹立した34アンダーの記録を1ストローク塗り替えた

PGAツアー11勝! 松山英樹の優勝大会一覧

2014年ザ・メモリアルトーナメント–13
2016年フェニックスオープン–14
2016年WGC HSBCチャンピオンズ–23
2017年フェニックスオープン–17
2017年WGC ブリヂストン招待–16
2021年マスターズ–10
2021年ZOZO CHAMPIONSHIP–15
2022年ソニーオープン・イン・ハワイ–23
2024年ザ・ジェネシス招待–17
2024年フェデックスセントジュード選手権–17
2025年ザ・セントリー–35

月刊ゴルフダイジェスト2025年3月号より