【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.834 「ポジティブな発言は次につながる行動や結果を生み出すことを知ってほしいです」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
この夏、パリで開催されたオリンピックでは、さまざまな種目で選手に対する誹謗中傷が飛び交いました。ゴルフも例外ではありませんが、岡本さんはこの問題についてどうお考えなのでしょうか。(橋本繁明さん・46歳・HC12)
SNSなどにアップされた政治家や芸能人の問題発言に対して、猛烈な抗議や否定的な意見が集中して炎上するのは日常茶飯事になってしまっています。
オリンピックはもちろん、野球やゴルフ、テニスといったプロスポーツには熱狂的なファンが多いため過激な発言が注目を浴びやすく、炎上の度合いや影響も深刻化する傾向があると思います。
今回のパリ五輪を巡るさまざまな誹謗中傷問題を重く見た国際オリンピック委員会(IOC)は、SNS上での誹謗中傷対策として、AIによる新たな監視システムを導入していたそうです。
心ない暴言が当事者であるアスリートの耳に届く以前に対処することを目的としていると言いますが、しっかり機能したかどうかは分かっていません。
今回、ネット上のこうした問題を調べてもらい分かったことがありました。
炎上という言葉は、ピッチャーが相手打線の猛攻を受けて大量失点する状態を意味する表現としてネット上に登場してきたのだそうですね。
そこから今ではネット上で攻撃的メッセージが集中する現象を示すことを表しているみたいですが、野球から派生していた表現とは……。
昔はたとえば居酒屋さんで野球観戦していて、言いたい放題言ったらその場で発言はなくなるものでしたが、現代はその言いたい放題をSNSに投稿してしまうことで決して消えることはなく、対象となった人物を傷つけ続けることになるわけです。
インターネットがこの世に登場して、今ではSNSなども生活の一部となってきているのが現状です。
すべてがネットの世界の中にあると言わんばかりの世の中になってしまいました。
ここまでくれば、もう人類はインターネットのなかった世界へは戻れませんし、ネット世界の未来は明るいとばかりも言っていられなくなりました。
ウソの情報や噂を流すネットいじめや個人情報の漏洩、不正アクセスによる特殊詐欺、業務妨害から機密情報の詐取、さらにはアメリカ大統領選への干渉などサイバー犯罪の範囲は国際レベルにまで及んでいます。
そのなかでも個人を対象とした誹謗中傷は本当に悲しくつらい気持ちになります。
トップアスリートは高額収入を得る半ば公人なのだから有名税だと思え、なんていう論理はありえないことです。
勝利や記録を目指して努力を重ねるアスリートは、優秀であればあるほど注目を集めるだけに、こうした攻撃の的になるのかと思うとやり場のない気持ちになります。
スポーツとは、実力や結果がすべてのフェアで明確な勝負の世界だったはずです。
しかし、だからこそ、それゆえにというべきでしょうか、応援するあまり、理想の結果とは違うものになると責め立てる暗い怒りが生まれてしまう。
また、あえて過激な投稿をすることで注目を浴びようと考える人も中にはいますし、そういうものが減らないのかもとも思います。
なぜ非難することや誹謗することを投稿してしまうのか。
当人に聞いても、おそらく納得いくような答えはしてくれないと思います。
自分だけじゃなくてみんなが言っているからですか?
ひとつだけはっきりしているのは、SNSの投稿が匿名でできることなのでしょうね。
この問題を根本から解決するには、匿名性を禁じる以外にないのではないでしょうか。
誰が言ったか分からないから発言できる。
でも、そんな無責任発信で相手の責任を追及するのはおかしくないでしょうか。
そう感じるのはわたしだけではないと思います。
「前向きな表現へ矢印を向けると、日々の生活が徐々に楽しくなってきますよ!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2024年10月22日号より