「16番でドラマが起こる」日本オープン開催の名門・東京ゴルフ倶楽部を詳細解説
日本ゴルフ協会( JGA)創立100周年を迎えた今年、記念大会として東京ゴルフ倶楽部で8回目となる日本オープンが開催される。過去、いくつもの名勝負を生み出した同コースは、2018年にギル・ハンスによって大幅改修が施されたが、その後、初めてのナショナルオープン開催となる。日本最高峰の舞台で、どんなプレーやドラマが生まれるのか。同コースで研修生時代を過ごし、2012年の日本オープンを制した久保谷健一がコースと注目選手を紹介!
PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hidehisa Hosoda THANKS/東京GC
解説/久保谷健一
明治大学卒業後に東京ゴルフ倶楽部に入社して研修生に。2度目の挑戦となった1995年のプロテストで合格。2002年日本プロゴルフ選手権でメジャー初優勝。2011年日本オープンはプレーオフの末敗れたが、翌年リベンジに成功して日本オープンのタイトルを獲得。通算7勝
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東京ゴルフ倶楽部
1913年に東京の駒沢で誕生した東京ゴルフ倶楽部。埼玉の朝霞を経て、現在の場所に移ったのは1940年のこと。大谷光明が設計を担当した。戦後、時代に合わせて改造や改築が繰り返され、2018年にギル・ハンスによって大幅改修がなされ、多くの木を伐採。深いバンカーやアンジュレーションのあるグリーンなどの伝統は守りつつも、現代風なコースへと仕上げられた。日本オープンの開催は歴代最多となる8回目となるが、18年の改修後は今回が初開催となる。
朝霞と知々夫の2グリーンを持つ東京ゴルフ倶楽部。今回の日本オープンでは主に朝霞グリーンが使用されるが、3番・6番・11番・16番・18番は知々夫グリーンを、2番と14番に限っては日によって朝霞グリーンと知々夫グリーンを入れ替えて使用。また通常はパー5の3番と15番をパー4として使用。どちらも540ヤードを超える距離の長いパー4となる。その中でも久保谷が最難関と言うのが16番のパー4。
「ワンウェイで行われる日本オープンで、どの選手もその日の終盤に迎えるホールです。ティーショットでは左右のバンカーがコースを狭く見せてプレッシャーをかけてくるし、セカンドもグリーンも難しい。パーを取るのもやっとなので、ボギーならOKという気持ちで挑みたいホールです。ただ、日程が進むにつれて、それぞれの選手が置かれている状況が違ってくると、『守らなきゃ』とか『攻めなきゃ』など、焦りなどが生まれてくる。通常でも3人に1人はボギーを打つ可能性があるホールですが、ひとつのミスが大きなケガに繋がる。最終日、ここまでに3打差をつけて首位に立っても安全圏とは言えないし、最後までドラマが起きるキーホールだと思います」
2018年の改修の際にはコースの約1/5の樹木を伐採。上に空間ができたことで現代ゴルフに求められる飛距離がアドバンテージになるなど、雰囲気がガラリと変わったという。それでも小さなバンカーや深くて難しいバンカーなど、依然として難度は高いと久保谷プロ。
「僕はココでプロになったことで、バンカーを学ばせてもらった。だからどのコースに行っても苦戦することはありませんでした。東京ゴルフ倶楽部はやっぱりバンカーです。どれも深く、柔らかくふわっとした球を打てなければ寄せられないものばかり。日本オープンでは、『グリーンに乗せられないならバンカー狙い』とよく言われるのですが、とくにグリーンが硬くなったら、バンカーがかなり厄介になるので、それを避けた戦略を立てる選手も多くなると思います」
改修後の東京ゴルフ倶楽部をプレーした選手は数少ない。ほとんどの選手が初見となるコースをどのように攻略していくかが気になるが、16番以外でも勝負のカギを握りそうな注目ホールの攻略方法を久保谷プロに教えてもらった。
16番・456Y・パー4
「2~3打差ならこのホールで順位はすぐに入れ替わる」
Point 1
狭く絞られたフェアウェイ
「FWの左右にバンカーがあり、かなり狭く感じますが、左サイドに傾斜しているためドローだと右サイドギリギリに落ちても止まらずに左のラフまで転がってしまう。右の側面にスライスでぶつけるとちょうどいい場所で止まってくれるので技術が必要です」
Point 2
つま先上がりでグリーンが見えない2打目
「1打目でフェアウェイをとらえても、つま先上がりになるうえにグリーン面が見えず、想像しながら打つしかない。右のバンカーはアゴが邪魔してグリーンを狙えなくなる可能性がありますが、左のバンカーなら狙える。ラフに入れるのを嫌ってあえて左のバンカーを狙う選手もいるはず」
Point 3
グリーン右サイドのバンカーに連なる大きな窪み
「グリーン右中央にバンカーへと続く大きな窪みがあり、それを越えないと次で寄せるのも難しい。2打目は左サイドを狙う手もありますが、ピン奥はカラーが広いので、そこ狙いが得策。とにかくこの窪みをいかに避けるかがカギ」
6番・423Y・パー4
グリーンは四角く小さなポステージスタンプ
「グリーン左サイドにクリークがあるので、グリーン中央狙いが鉄則になります。1打目をラフに入れた場合は、残り80ヤード付近にレイアップするのがセオリーですが、右のグリーン奥は芝が刈られているので、そこに打てば寄せは簡単になります」
9番・472Y・パー4
打つ距離によって1打目の狙いの幅が変わる
「左の松の場所でフェアウェイが絞ってあって、ドライバーで打つと1打目の落としどころがかなり狭い。刻めばフェアウェイは広くなりますが、300ヤード打てるとより広くなるので飛ばし屋が有利です。左は林が近いのですが、右サイドにはOBがあるため右に曲げるのはNG。その選手の飛距離によって戦略がガラリと変わってくるホールです」
15番・545Y・パー4
攻略ルートが2つある“島フェアウェイ”
距離のあるパー4だが、攻略ルートは2 つと久保谷プロ。「左サイドに島のような場所があり、そこに打てれば全体で500ヤード弱くらいになる。幅も広いので2/3の選手はそこを狙うのではないでしょうか。ただ、飛距離があれば右ルートから攻めたほうが、アングル的にグリーンを狙いやすくなります」
「ティーイングエリアから“島フェアウェイ”は見えないので、方向と距離を想像して打つことになります。どこからどう打つか、事前に決めておく必要があります」
「島自体は縦横共に広い。全長540ヤード超えですが、飛ばし屋ならアイアンで届くかもしれません。グリーン自体は傾斜がないので、いかにグリーン周りまで運ぶかが勝負です」
18番・466Y・パー4
バンカーに囲まれた縦長グリーン
「グリーンは縦長で、奥に行くほど狭くなっている。その中央に斜めに段が走っていて、それがかかるとフックとスライスが入り乱れる複雑なラインになります。左手前のベロの部分にピンが切られると一番難しい」
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週刊ゴルフダイジェスト2024年10月22日号より