Myゴルフダイジェスト

【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.194「キャディの合いの手」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO/Masaaki Nishimoto

前回のお話はこちら

今夏の松山英樹くんは、パリ五輪で銅メダルを取って、その後のプレーオフシリーズ初戦でもすぐに優勝するなど素晴らしい活躍でしたね。

パリ五輪の後にイギリスで荷物を盗まれる災難に遭って、キャディがビザ再発給で帰国のためプレーオフ第1戦に来られず、春に久常涼くんのキャディをしておった人を急遽代わりに登用したいうことでした。画面で試合のやり取りを見ていると、キャディは一生懸命ヤーデージブックを見たりしておったけど、最終的には全部松山くんが自分でクラブを抜いてやっていました。そういう決断はやっぱり本人です。

それならキャディに求められるもんは何かと言うと、“相性”です。


ゴルフは球を打つ時間の合計は1ラウンドで3~4分のことです。時間をかける人やったらもうちょっと長いかもしらんけど、僕なんかは構えたら3秒で終わるから、それくらいです。

つまり球を打つ以外の時間があまりにも長いんで、その間に雑談相手になって気分をよくしてくれたり、緊張しているときにサッと水を出してくれたり、そういった“合いの手”がパッとくると選手はプレーに集中できるしノッていけるんです。

それがクラブを拭いたり距離を測ったり、キャディの仕事をあまりに一生懸命やられてしまうと選手はイライラするときもある。選手はキャディに要領かましてほしい思うところがあるわけで、こうしてほしいなと思うときにパッと対応してくれんとストレスがたまるんです。キャディからしたら理不尽と感じるかもしらんけど、だから選手とキャディとの関係は“馬が合うか”どうかが一番大事いうことになるわけです。

クラブ選択は、ほとんど選手の判断です。キャディは7番で154ヤード飛ぶとか、この微風なら152ヤードやいうデータ的なことは持っています。でも芝質やライ、グリーンの硬さや風の状況なんかを肌で感じて、それを今の自分の体の状態との関係で、あのピンに対してこういう球を打ついうことを瞬時に判断する、こんなことは他人にはできません、決めるのはプレーヤーのフィーリングです。

「決めるんは自分やけど、キャディさんが気分よくしてくれることも、ようありますよ」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2024年9月24日号より