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全米OP開催「パインハーストNo.2」を深堀り!<前編>巨匠ドナルド・ロスが100年以上前に手掛けた難コース

6月13日に開幕する第124回全米オープン。今年はパインハーストNo.2で行われるが、果たしてどんなコースなのか。コースの歴史から紐解いていこう。

TEXT/Takeo Yoshikawa Reference/The Golden Age of Golf Design、The World Atlas of Golf PHOTO/GD写真部、USGA/Chris Keane、Getty Images

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パインハーストは世界最大級
180ホールのリゾートコース

今年全米オープンが開催されるパインハーストは、アメリカ東部、ノースカロライナ州に位置する世界最大級のゴルフリゾート。広大な敷地内に18ホールが10コースあり、いずれもパブリックながら個性的だ。なかでも「No.2」コースはドナルド・ロスの傑作として名高く、過去に多くのメジャー競技が開催され、2029、35、41、47年にも全米オープンの開催が決定している。今季、トム・ドーク設計による最新の「No.10」コースが完成したが、それぞれの時代を代表するコース設計家が設計、改造をしていることが分かる。

今年と同じパインハーストNo.2で行われた1999年全米オープン最終日。ペイン・スチュワートは最終18番で10メートルのパーパットを沈め1打差でフィル・ミケルソンを突き放して優勝。だが、4カ月後、航空機事故により急逝。その後、コース内にモニュメントが作られた

「No.2は、起伏のあるグリーンとバンカーにより、
卓越したロングゲームとショートゲームが求められる」
(ドナルド・ロス)

ドナルド・ジェームズ・ロス

スコットランド生まれ。1872-1948。米国に移住してプロ兼コース設計家となる。プロとして1903年全米オープン5位、10年全英オープン8位タイの成績を残している

1872年、スコットランドのドーノックで生まれたロスは、10代でセントアンドリュースに赴き、トム・モリスの下でコース管理、ルーティングなど設計について多くの事柄を学んだ。ドーノックに戻ると所属プロのジョン・サザーランドの下で6年ほどプロ兼グリーンキーパーとして働き、所持金2ドルだけで新天地アメリカに向かった。ボストンのオークリーCC所属時代、会員だったジェームズ・W・タフツに出会ったことが後に幸いすることになる。なぜなら富豪のタフツ家は、ゴルフ場建設に適したノースカロライナのサンドヒル地帯にリゾートを建設する計画を持っていたからだ。

1900年、パインハーストのプロに就任、07年にNo.2コースを設計した。ロスが優れていたのはコースのルーティングだった。13年アマチュアのF・ウィメットが20歳で全米オープンに優勝すると空前のゴルフブームとなり36年までに5000コースも造られ「コース建設の黄金時代」とされた。ロスはパインハ―ストをはじめ、実に413コースを設計し、改造を含めると600以上にもなるという。大半は、No.2コースの3番ホールに隣接する自宅内で構想を練り、設計図を完成させていた。

18th・448Y・Par4

クラブハウスに向かって行く最終ホールは、フェアウェイ右のバンカーを避けて攻める。グリーン右手前のバンカーはかなり手強い

コースを設計したドナルド・ロスはNo.2コースの3番ホール近くに家を建て生涯そこで過ごした

パインハーストの2代目経営者リチャード・S・タフツ(左)と設計者のドナルド・ロス(右)

「ゴルフは苦痛ではなく、喜ぶべきである」(ドナルド・ロス)

通常では全長6961ヤード、パー72だが、全米オープンでは7588ヤードと627ヤードも長くされ、パー70のため相当ハードだ。クラブやボールの進化とコース理念とのせめぎ合いに注目

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週刊ゴルフダイジェスト2024年6月25日号より