【PGAツアーエキスプレス】Vol.30 石川遼「自分のレベルを世界基準に持っていくだけ」
ゴルフの最先端、PGAツアーの旬なネタをお届けする「PGAツアーエキスプレス」。第30回は、成熟期を迎え強さが増した石川遼について。
取材/コーリー・ヨシムラ(PGAツアー アジア担当ディレクター)
マインドがシンプルになって強さが増した
日本では秋が深まり紅葉を迎える10月下旬。石川遼はメキシコにいた。月曜日に現地入りし、自らの手でつかみ取ったPGAツアー出場のチャンスを生かすべく、大会への準備を進めていた。メキシコの気温は30度近くに達し、額からは汗が流れるほど。そんな状況でも石川は丁寧に、コースの隅々までチェックし情報を集めていた。
「“ZOZO”でトップ10に入れば次の大会に出られるのは知っていた。自分の中ではすぐに出たいという気持ちだった」と、日本人最高の4位に入り、メキシコでのワールドワイドテクノロジー選手権への出場権を獲得したのだ。
石川といえば、2009年18歳でPGAツアーに初出場し、メジャー大会などでも多くの注目を浴びた。22歳になった13年からは拠点をアメリカに移し、PGAツアーにフル参戦。優勝は近いと思われていたが、現実は甘くなく、17年にはシードを失ってしまう。
「20代は最短ルートでいい結果を出したいと思い、自分の足元をしっかり見たり状況を把握したりせず、客観的な視点がないまま、ただただ自分に期待してしまった」と、32歳の今、当時を振り返る。その経験を踏まえたうえで、こう続ける。
「今は自分の持っている技術を世界基準に持っていくだけというシンプルなマインドになっている。焦らずコツコツとできている」
以前はPGAツアーで“プレーすること”に意味を見い出していたが、今は“世界トップレベルのゴルファーになる”ことを重視している。
「自分が上手くなり、高いレベルのツアーへと進めばおのずとPGAツアーは見えてくる。日本の男子ツアーのレベルは確実に上がっている。“ZOZO”での日本人選手の成績を見ても、自分の感覚が合っていたと感じた」
10代で憧れのPGAツアーに飛び込み、20代は自身のゴルフを模索する日々もあった。30代となり何をすべきかを見い出し、それに対して取り組む石川遼に成長した。今の石川を見ると、10代、20代に紆余曲折を重ねた経験は決して無駄ではなかったと確信できる。
やるべきことを重ねた石川がこれからもファンを沸かせてくれるのは間違いないだろう。サボテンの花言葉には『燃える心』というのがあり、ゴルフに情熱を注ぐ今の石川にふさわしい言葉だ。今の彼には、メキシコの砂漠で灼熱の太陽が降り注ごうが、びくともせず、大地に根を張って大空に向かって真っすぐ伸びるサボテンのような力強さと芯の強さが感じられた。
2007年、衝撃のツアー優勝
アマチュアとして出場したマンシングウェアオープンKBSカップ。15歳8カ月のツアー史上最年少優勝。歴史に名を刻んだ
18勝のうち3勝はVISA太平洋マスターズ
相性のいい大会はVISA太平洋マスターズ。昨年大会は星野陸也とのプレーオフの末、見事勝利を勝ち取った
月刊ゴルフダイジェスト2024年1月号より
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