【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.791「逆目や左足上がりからの寄せで、ヘッドをしっかり振り抜いていますか?」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
アプローチで苦手なライが2つあります。逆目の時と、左足上がりのライです。両方ともヘッドが上手く抜けず、距離感が難しいのはもちろん、ザックリすることが多いんです。どう対応すればよいでしょうか?(匿名希望・39歳)
逆目のアプローチは、プロでも対処法の判断に迷うことがあると思います。
アプローチと一口に言っても、芝の長さや深さ、エッジからピンまでの距離や傾斜などケースはさまざまです。
その状況ごとにヘッドを入れる角度や抜き方に違いがあり、説明するのは正直難しいです。
昔は「上からドンと打てばいいんだ」と、大まかすぎるほどザックリ回答をするプロが多くいたかもしれませんが、すべて間違っているとは一概には言えません。
ただ、プロとアマチュアの対処法で違いが出るとすれば、フォロースルーをきちんと取るか取らないかに出ると思います。
アマチュアの方の多くはフォローを取らずヘッドを打ち込んだままの人が多いように感じます。
それがなぜいけないか。ヘッドを振り抜かないと芝の抵抗に負けて、大きくザックリしてしまう場合があるからです。
確かに、ピンまでの距離に対して大きく振るのはとても勇気がいることですが、しっかり振り抜かないと逆目の芝にヘッドが絡んでしまい大ミスにつながってしまいます。
もちろん状況によってですが、ヘッドを打ち込んで止めるショットがないわけではありません。
逆目はプロでも難しいライですし、まして距離感を合わせるのはアマチュアの方には至難の業だとは思いますので、もしミスしたとしてもそこまで落胆することなく気持ちを切り替えていくことのほうが大事かなとも思います。
そして、芝の抵抗が強くてヘッドが抜けにくい逆目のライと同じく、地面の抵抗で抜けにくくなるのが左足上がりのライです。
グリーンまで上り坂の途中にボールが止まっているのですから、その傾斜度が増せば増すほど、ボールを打った後ヘッドは地面に当たって止まってしまうことになります。
ただし、それはフラットなライで打つのと同じ要領でスウィングを行ってしまうとそうなるということです。
左足上がりのライは、地面が打っていく方向に向かって立ち上がっている状態ですから、スウィングの最下点でボールをとらえたヘッドが地面から離れて上昇していくはずの空間がありません。
ですので、冷静になって考えるとヘッドは地面にぶつかって抜けていってくれない状況であることがわかると思います。
左足上がりのライではヘッドが抜けないと訴えているのは、そのことを体で感じているからなのでしょうね。
プロの場合は、あらかじめ傾いている斜面に立ってスタンスを取り、アドレスの軸を傾斜に合わせて傾けるイメージを持ちます。
おのずと重心は通常より右足寄りに移ります。
そしてその体勢のまま通常のスウィングでボールをとらえる。
そうすれば、ヘッドはボールをとらえたあと地面に突き刺さることなくスムーズにフォローが取れると思います。
この際、フラットなライでボールが飛び出す時よりも高く飛び出すことになります。
インパクトで放たれたボールは、地面の傾斜角が加わった角度で飛び出すことになるからです。
その結果、打ったボールは通常より高く上がり、そのぶん距離が出にくくなることを頭に入れておかなくてはなりません。
左足上がりのライではボールが上がり過ぎる。
その結果、ショートするという人は考えようによっては、傾斜なりのスタンスで傾斜なりのスウィングが正しくできているということも言えるかもしれませんね。
あとは傾斜の度合いによってどの程度ショートするかを体感して、少しロフトが立ったクラブに持ち替えるなり、距離感を体に覚え込ませる経験を積めばいいのです。
これはすべてができたうえで行う技術になりますが、上がり過ぎないようにフェースを立てて構えて打つという対処法もあるでしょう。
それも、経験から編み出された対応策であり、ゴルフとは結局そういうデータ収集の連続なのです。
逆目も左足上がりも場数を踏んで自分の中に対処法を染み込ませていくしかありません。
プロがアマチュアより上手く対処できるとすれば、それだけ経験や練習を積んでいるから──そこにはタネも仕掛けもないということなのですよ。
「学ぶことも大事ですが、感覚をつかめるまで練習することのほうがもっと大事ですよ」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年11月28日号より
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