【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.152「若いうちに海外で苦しんだ経験は糧になります」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tsukasa Kobayashi
日本オープンで優勝した岩﨑亜久竜くんは、去年の日本ツアーの賞金ランキング3位に入り、今年は、賞金ランク3位以内までの選手に与えられるヨーロッパツアー(DPワールドツアー)の出場権を得て、賞金ランク1位の比嘉一貴くんや2位の星野陸也くんらと一緒に挑戦しておるいうことです。
岩﨑くんのことは、上位に来ていた去年の日本シリーズでテレビで見たくらいですが、飛距離が出るぶん、少しボールが強すぎるかなという印象は受けました。ラフとかでちょっと柔らかく打つといった、そのへんのテクニックも覚えればもっと強くなるんと違うかなと勝手に思うてたので、今シーズンはヨーロッパでいろんな経験をできたことはよかったんやないかな思います。
これまでに彼はヨーロッパツアーでは、15試合に出場し予選通過が3試合と苦労をしとったようですが、前にも言うたように「苦しい状況が人を育てる」んですよ。
アメリカのゴルフ場で育ったタイガーでもミケルソンでも、全英オープンは最初はなかなかうまくいかんかった。それでミケルソンは20度目の出場になる2013年に、全英の前々週にイギリスに入り、どこかのリンクスで練習をしてからスコットランドオープンに出て、翌週の全英に臨むことにしたわけです。そして史上初のスコットランドオープンと全英オープンの2週連続優勝者となり、メジャー5勝目を手にしたんです。
今年の全英オープンでは、3度目の挑戦で初の予選通過をしたという星野陸也くんですが、最終日にブッシュにつかまるなどして2つのトリプルボギーを叩き、ラウンド後に「これがゴルフか……」と漏らしたそうです。
20年以上ゴルフをやってきて、改めてそんな言葉なかなか吐けまへんで。
そして「次に上位に行ったときに同じことを絶対にしないのが大事なので、今回はとてもよい経験ができました」とコメントしたといいます。まさに「苦しい状況が人を育てる」ですわ。
僕ら海外に出たのはシニアになってからですから、星野くんも岩﨑くんも若いうちにそれを経験できているいうんは、素晴らしい思います。
「今年の欧州経験が、いろんなところに生きとるんでしょうね」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年11月7日号より