ありがとう! イ・ボミ 特別インタビュー<後編>今後の目標は「何の目標も決めずに生きてみたい!」
今季のマスターズGCレディースで日本ツアーを引退するイ・ボミのロングインタビュー。後編では、一緒に戦ってきた選手やファンへの思い、密かに抱いていた後悔の念、そして今後の目標について語ってくれた。
TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa THANKS/ムニマルカフェ
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- 今季のマスターズGCレディースで日本ツアーを引退するイ・ボミ。抜群の愛嬌と笑顔に加え、2015、16年に2年連続で賞金女王に輝くなど、日本女子ゴルフ界の一時代を築いた。日本参戦から13年の歳月を本人に振り返ってもらった。 TEXT/Kim Myung Wook PHOTO/Hiroyuki Tanaka、Tadashi Anezaki、Shinji Osawa、Hiroyuki Okaza……
選手、ファン、メディア…
あらゆる人から愛された
――日本に来て一番うれしかったことは何ですか?
イ・ボミ ノリ(清水重憲)さんに出会えたことが、一番大きな出来事でした。私がキャディを探していたときに、ノリさんに声をかけたんです。当時は(上田)桃子さんのバッグを担いでいましたが、この人とならいいプレーができるんじゃないかって。コースマネジメントやどのように日本ツアーで戦うべきかをたくさん教えてくれました。いいタッグだったと思いますし、いい時間を過ごさせてもらったなと思います。
――当時、韓国の選手も多かったですが、励みになる部分はありましたか?
イ・ボミ 特にすでに日本で活躍していた(アン・)ソンジュオンニは本当にいい先輩でした。つらい時には励ましてくれましたし、アドバイスもたくさんくれました。オンニに負けた試合もあれば、私が勝った試合もあるのですが、真剣勝負の中でも清々しい気持ちでした。オンニは「一緒に頑張ろう」という雰囲気を作ってくれる選手でした。
1つ上のアン・ソンジュはしのぎを削ったライバルでもあり、日本ツアーの頼れる先輩でもあった
――日本と韓国でファンクラブが結成され、応援も毎回多くの方が駆け付けていました。
イ・ボミ 試合を振り返るといつも多くのファンが応援してくれていましたよね。みんなの笑顔が力になったのは言うまでもありません。
――なぜこんなにファンに愛されたと思いますか?
イ・ボミ 私が日本に初めて来たときに感じたのは、静かに見守っている方が多いということでした。私は声をかけられたら笑顔で返していたので、他の選手よりは親しみやすさがあったのかもしれません。
――ボミさんはメディアの方からもものすごく支持されていましたね。
イ・ボミ うれしかったのは、多くの記者の方たちが距離を縮めて親しくしてくれたことでした。ひとつでも多く自分のいい話を書いてくれて、成績が悪いときも背中を押してくれた人たちがたくさんいました。
――それもボミさんの人柄、人徳だと思いますか?
イ・ボミ 初めて賞金女王になったときもプレスルームに大きなケーキが用意されていたことに驚いたのですが、とても幸せな時間でした。
2015年の伊藤園レディスを制し、初の賞金女王が決定。記者からお祝いのケーキが贈られた
「ハヌルが先に引退するとは
思っていませんでした」
――日本の選手で仲良かった人はいますか?
イ・ボミ 後悔しているのは、日本の選手と深く過ごすことができなかったこと。ゴルフ場での会話しかなくて……。親友のように一緒にご飯を食べたりしたくても、できなかったというのが正直な気持ちですね。でも大山志保さんは、私のパットがダメな時にたくさん教えてくれました。今も同世代だと菊地絵理香さんや上田桃子さんもがんばっていますし、特に当時はテレサ・ルーさんがいいライバル関係でしたよね。
――日本ツアー引退後はもっと仲良くなる機会が増えそうですね。
イ・ボミ その通りです(笑)。私はどちらかといえば、ファンには近い存在だったかもしれませんが、他の選手にとっては近寄りがたい存在だったのかもしれません(笑)。
――それは意外です。ボミさんのことは好きな方が多いというイメージですが……。
イ・ボミ 好きと言いながら、案外、近寄ってこないのかも(笑)。ただ、互いにツアーではやることがあって、遠慮していた部分はあったと思います。少しでも早く体を休めて次に備えるほうがいい。選手の立場からするとそう考えるのが普通だと思います。
――同年代でプライベートでも親交のあるキム・ハヌルさんが21年に先に引退しましたね。
イ・ボミ 同じ日本で戦ってきた仲ですが、ハヌルが引退を決意する前は本当につらそうな姿も何度も見てきました。引退試合のときは悲しいというよりも、ハヌルがツアー生活から抜け出すことで、これから楽しいことがあるという思いのほうが強かったんです。今も韓国でいろんな方面で活躍しているので、私もそんな姿が見られてうれしいです。ただ、正直、ハヌルが先に引退するとは思っていませんでした(笑)。
21年に引退したキム・ハヌル。イ・ボミはプライベートでも仲が良く、当時の女子ツアーを2人で大いに盛り上げてくれた
――最後に、今一番したいことはなんですか?
イ・ボミ 11歳からゴルフをしてきて、プロゴルファーとして一番になるために目標に向かって突き進んできました。これからはとりあえず何の目標も決めずに生きてみたいです。これまで家族のために、ファンのために、一生懸命に生きてきました。そこは自分でも自信を持って言える部分です。すべての荷を肩から降ろして、何の計画も立てずに生きてみることが今の目標です!
まだまだ聞きたい! Q&A
●好きな日本のご飯は?
「すき焼き! お店に行くとお肉と野菜がきれいに並べられて出てくるので、韓国では体験できないもの。味も雰囲気もすごくいいと思いました。日本でなければ食べられないです」
●好きなコースは?
「アース・モンダミンカップのカメリアヒルズCC、CAT Ladiesの大箱根CC、伊藤園レディスのグレートアイランド倶楽部。全部、優勝したコースですね(笑)」
●お酒は飲む?
「最近は日本酒を飲みます。元々はワインが好きなのですが、開けたら最後まで飲まないといけないので。日本酒は飲み口もやわらかで、残しても置いておけるのがいいですね」
●スキンケアはどうしてるの?
「私は皮膚がとても敏感なので、とにかくいい成分の入った化粧品を使っています。スキンケア用品の細かな成分や人気の商品をよくアプリで調べています」
●日本で仲の良いプロゴルファーは?
「上田桃子さんは日本でおいしいお店や、ショッピングもどこに行けばいいかなど教えてくれました。韓国に遊びに来たら、一緒にいろんなところを紹介したい」
●生まれ変わったらまた自分になりたい?
「お父さんとお母さんの娘として、また生まれたいです。亡くなったお父さんの自慢の娘として」(少し涙ぐみながら答えてくれました)
●好きな音楽、アーティストは?
「EXO(エクソ)のディオが歌う『ケンチャナド ケンチャナ/That’s OK』が好き。日本の歌ではKiroroの『未来へ』ですね。歌詞を覚えようと努力しました」
月刊ゴルフダイジェスト2023年12月号より