【スウィング研究】年間王者ホブラン “飛んで曲がらない”秘密とは?
プレーオフシリーズのBMW選手権とツアー選手権で2連勝して2022-23シーズンの年間王者に輝いたビクトール・ホブラン。「飛んで曲がらない」の指標となるトータルドライビングが全体5位というドライバー巧者のスウィングを詳細分析!
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Blu Sky Photos、Getty Images
解説/谷 将貴
片岡尚之や大岩龍一などツアープロのコーチを務めながら、港区でアカデミーを主宰
スピードと再現性を両立
ホブランの飛んで曲がらない最大の秘訣は、「パッシブトルク」によるスピードアップと「左ひじの動き」によるフェース面の管理にあります。パッシブトルクとは直訳すると「受動的なねじれ」という意味で、これがインパクト直前からのヘッドスピードを加速させる要因になっています。
ブランのスウィングは切り返しでシャフトを背中側に倒し、スウィングプレーンから一度外れていきます。しかし、そこからグリップエンドを体に引き付けながら体を回転していくことでシャフトのしなりやトルクなどの要素が働き、クラブはオンプレーンに戻り、加速しながらインパクトを迎えられています。この勝手(受動的)に“戻る”動きこそ、パッシブトルクであり、それを上手く使っているため、自身が持っているポテンシャル以上のスピードで飛距離を生み出すことができるのです。
もうひとつ、ダウンスウィングで腰を開くように回転させ、クラブを通すスペースを作る動きが特徴的です。そこに左ひじを入れ、抜いていくように使う。これはフェースの向きをキープするための動きで、インパクトでの再現性が高まるので方向性も上がります。結果、スピードと方向性を両立でき、トータルドライビング5位というスタッツを残すことができるのです。
シェフラーとは正反対のスウィング
レギュラーシーズン賞金王のS・シェフラーはウェイトシフトしながら打つためインパクトは左軸。一方でホブランは右サイドに軸を残して地面反力を使う
フェースローテーションを極限まで抑える
左手首の掌屈(手のひら側への折れ)を入れながらバックスウィングを上げることで、トップではフェース面が空を向き、閉じた状態になっています。手の位置が高いトップから、切り返しではクラブを寝かせて(シャローイング)、インサイドに下りていきます。このときもフェース面は閉じたままでボール方向を向いています。まるでアプローチのようなフェース使いです。
インパクトでは左腰を開いて手元を引き寄せるためのスペースを作っていますが、このときに肩もつられて水平に回転してしまうと軌道がズレてフェースがターンしてしまいます。肩を縦回転させ、右肩がフォローまで低い状態をキープすることでフェースローテーションを少なくしています。右肩が低いため、右ひじは曲げて体に寄せておかないとボールとの距離が合わないという側面もあります。
ここまでフェースローテーションが少ないと当然球が曲がるリスクが少ない。ここにも、ホブランが飛んで曲がらないショットが打てる要因があるのです。
ビクトール・ホブランの1Wスウィング
シェフラーはフェースローテーションが多い
ホブランはトップでフェース面が空を向いているのに対して、シェフラーは正面を向いたオープンフェース。ローテーションしながらインパクトでスクエアに戻して打っている
月刊ゴルフダイジェスト2023年11月号より