【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.136「男女ツアーともアメリカ基準のセッティングに近づいてきています」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa
ツアーで活躍する女子プロゴルファーの若年化が止まりませんね。元気で飛距離が出て、パッティングをカーンと打てへんことには上位に入れんような感じです。
最近は距離をホールごとに7~8ヤードほど伸ばしとる感じで、だからベテラン選手は、飛距離が現状維持なら出遅れる。そこに飛距離の出る20歳前後の選手が入り込んでいるいうことです。
男子のレギュラーツアーも同じです。
僕らが現役やった頃は、距離の長いコース、普通のコース、短くてトリッキーなコースの3つをバランスよく選んでたけど、今のトーナメントは、「とにかく距離を延ばせ、グリーンを大きくしろ」一辺倒の感じになっている。「世界基準に合わせて」いうけど、つまりはアメリカのコースを基準にしとるわけです。
アメリカのツアーはティーショットで300ヤードが必要で、2打目ではカップが手前に切ってある池越えの200ヤード先のグリーンに対してピンの手前で止められるパワーがないとお呼びじゃないみたいなコースが多い。そういうパワーゴルフ向けのセッティングに日本ツアーも寄せているわけです。
その結果、ちょっと前までは世界のメジャーで日本人が勝てるとしたら全英オープンや言われていたんが、マスターズに勝つんやから、日本人選手のゴルフが変わってきてるのは事実なんでしょう。
優勝した松山(英樹)くん自身もアメリカでプレーをすることを目指して体を大きくしてパワーをつけたことが実を結んだわけで、だからツアーが距離を延ばす方向のセッティングになっとるんが間違いやとは言いません。
ただ、それ一辺倒になっては面白くないいうことです。ちょっと距離の短いコースで砲台の小さいグリーンだったり、フェアウェイを狭くしてショットの精度で勝負をさせるようなコースも入れてほしい。
稲森(佑貴)くんなんか260ヤードくらいしか飛ばんけど、ショットのポジション取りが正確で、入れなあかんパターを絶対に入れる流れのつかみ方が抜群に上手い。
女子で言ったら申ジエ選手ですわ。こういった選手の技術を試すようなセッティングのコースでの開催が増えれば、ゴルフファンも見てて面白いと思うんですが、どうでしょう。
「こういう選手の技術を試すセッティングもあってほしいです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年7月11日号より