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【イザワの法則】Vol.32 ドローもフェードも「クラブパス0度」が基本です

伊澤利光がゴルフアカデミーを主宰していた頃の教え子の中には、現在、プロとして活躍している選手も何人かいる。今でも定期的に指導しているというが、伊澤はどんなことをアドバイスするのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

男子プロと女子プロでは
同じスウィングをしても
クラブの挙動が違う

今年に入って、アカデミー(※)の頃から教えている、ハルカちゃん(天本ハルカ。24歳。昨年のQTランキング32位で、今季LPGAツアーに参戦中)から連絡があり、「アプローチがわからなくなりました」ということだったので、じゃあ「現場で見てみよう」と、何試合か女子ツアーの会場に行ってきました。最近のツアー中継は、1番ホールだけで全選手をずっと映したりするので、テレビでもスウィングを見られるといえば見られるのですが、テレビの画面を通して、「この選手はこんな感じで振ってるのかな」と思っても、実際に見てみると少し印象が違うこともあるので、そのギャップを埋めるための「現場出動」です。

※福岡市博多区で、伊澤が校長を務めていた「伊澤ゴルフアカデミー」

というのも、ハルカちゃんを教えるからといって、ハルカちゃんのスウィングだけを見ればいいというわけじゃなくて、女子プロの傾向として、ドロー打ちの人のクラブパス(ヘッド軌道)がどのくらいだとか、フェードの人はどうかとか、持っている飛距離でシャフトのしなり具合はどうかとか、そういう「データ」を集める必要があるんです。それを踏まえたうえでアドバイスしないと、男子プロ目線で女子プロには当てはまらないことを言ってしまうかもしれませんから。参考のために、申ジエのスウィングも見ましたが、パスがねじれていなくて、見事なストレートボールを打っていましたね。


ドローを打つのに
極端なイン-アウト軌道
はむしろ弊害が多い

で、肝心のハルカちゃんですが、アプローチの打ち方が問題というよりは、今年がツアー参戦2年目ということで、トーナメントならではのセッティングにもう少し慣れる必要があるのかなという感じでした。ショットに関しては、昨年、シャフトのセッティングをアドバイスして、元々少し軟らかすぎるシャフトを使っていたのを、硬めのものに変更したんですが、それはうまくいっているみたいでしたね。

彼女はドローヒッターで、調子が悪いとイン‐アウトがきつくなる傾向があるので、できるだけクラブパス「0度」(ほぼ完全なストレート、あるいはイン‐イン軌道)をベースに、許容範囲2~3度くらいに収まるように意識して練習するように伝えています。パスが「0度」から離れてしまうほど、ほんの少しのタイミングのずれで大きなミスになってしまいますし、ミスが起こったときに「なんで今の球が出たのか」を判断しづらくなるからです。

たとえば、思ったよりボールが右に出てしまった場合、普段からクラブパス「0度」ベースでスウィングしていれば、もしイン‐アウトがきつくなったとしたら、自分で気づくことができます。感触としてパスに問題がなかったとしたら、「少しフェースが開いたかな」とか、「少しだけ下(下半身)が早くて振り遅れたかな」という具合に自己分析できるので、同じミスをまた繰り返すということが少なくなるというわけです。最初にハルカちゃんがアカデミーに来たときは、まだ高校生で、そういうスウィングの仕組みについては、まったくわかっていませんでした。今は、きちんとわかってスウィングしているので、ミスしても割と納得した顔をしています。

クラブパス「0度」ベースがいいというのは、アマチュアにも当てはまることですので、機会があれば自分のスウィングを計測してみることをおすすめします。


「現代のクラブはいい振り方をしても思った球にならないこともある。

そのとき悪いミスじゃないと判断できるかどうか」

クラブパスは「0度」を基準に考えるべき

持ち球がドローでもフェードでも、ターゲットラインに対してクラブ軌道を極端に斜めにしないほうがいい。たとえばドローヒッターの場合、イン‐アウトがきつくなりすぎると、ミスが出やすくなる(写真右)。「ほぼストレート」がすべてのショットの基準だ

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2023年7月号より