【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.767「うっかりミスは誰にだって起こります」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
今年のメジャー第一戦・サロンパス杯では、永久シード保持者の不動裕理選手が、スコア誤記で失格となりましたが、歴戦のプロでも、こんなうっかりミスを犯すことにビックリしました。岡本さんはそのような経験はありますか?(匿名希望・HC9・55歳)
ツアー通算50勝、6年連続賞金女王を達成したレジェンド、不動裕理さんとは先月、新南愛知CC美浜コースで開催された『美浜インビテーショナルレジェンズ 岡本綾子カップ』で久しぶりに顔を合わせて、それも優勝トロフィをじかに手渡したばかりだったので、このニュースには驚きました。
ちなみにそのときの不動選手が
「優勝スピーチの緊張も思い出しました」
と挨拶していたのが印象的でした。
それからちょうど2週間後、茨城GCの西コースで行われたワールドレディスサロンパスカップに出場した彼女が、第2日の朝7時にスタートホールの10番ティーイングエリアへ来たとき、これからスタートするキャリングボ―ドに自分のスコアが「9オーバー」になっていることに気が付きます。
「あれ、わたし、10オーバーのはずなんだけど…?」
競技委員に申し出て確認したところ、不動さんが勘違いして実際のスコアより1打少なく記入したスコアカードを提出していたことが発覚したそうです。
いわゆる過少申告で失格となりました。
不動さんには、プロ通算478試合目にして初めての屈辱でした。
ですが、この報を耳にしたとき、初めてだったんだと思ったのも事実です。
長くプロゴルファーをやっていれば、悪意ではなくうっかりミスや勘違いで一度は失格の憂き目にも遭うこともあるかと思います。
だから不動さんが初めてと聞いて、そうだったんだと感じたのです。
トーナメントなど競技ゴルフでは公平性を保つため、マーカーと呼ばれる同伴競技者がカードに記載して、ホールアウト後に本人と数字を確認することになっており、これをアテストといいます。
ですから選手は、プレーを終えてもアテストしたスコアカードを提出するまで気は抜けません。
マーカーがカードに記載した自分のスコアを一緒にチェックして間違いがなければそれぞれが署名してカードを自分で提出します。
トーナメント中継で、アテスト会場で選手同士が各ホールのスコアを読み合わせてチェックするシーンを見かけますよね。
ですが、どれだけ注意して確認作業をしてもうっかりミスは起こります。
一番警戒しなくてはならないのが、パー3、パー4、パー5のホールの取り違えです。スコアの読み合わせでも、選手たちはたいていスタートホールから3ホールずつ、スコアの数字を「443、454」などと読んでいきます。
そのとき、ホールの順番を思い違いをして読んでしまうことがあったりします。
本来なら4、4、3ですが、うっかり記憶違いして4、3、4と言い間違えたり勘違いすると、ホールによっては、パーがバーディになって申告してしまうことがあります。
このような軽率なミスの経験、選手のなかには覚えがある人もいるのではないかしら。
何を隠そうわたしも御多分に漏れず、一度やってしまいました……。
ホールアウト後、プレスルームの記者さんたちにホール・バイ・ホールを話している時に、間違えたことに気が付いて……血の気が引いたのを覚えてます。
その直後には恥ずかしさと悔しさと、何と言うか自分に対する怒りで体中がカーッと熱くなった。
それから各ホールを取り違えないよう、特に気を付けたりしました。
もともとわたしは、自分のプレーを数字じゃなくて映像として記憶するほうなので、パーなのにボギーだと思ってしまうケースもあります。
数字だけだと上手く記憶と結び付かないこともありますが、相手のスコアまでいい加減な記憶になるのはよくありませんから、もちろん気を付けていました。
まさか不動さん、久しぶりの優勝スピーチで緊張したのがスコアの勘違いになった、わけじゃないと思いますが、やってしまったことは仕方がありません。
次に気を付けて、何歳になっても前に進むしかありません。
みなさんもくれぐれも気を付けてくださいね!
「躓くことは誰でも起こるのですから、前を向いて進むしかありません」(photo by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年6月6日号より
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