【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.759「4日間競技の増加は、日本の女子プロが世界で活躍する要因のひとつだと思います」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
待ちに待った国内の女子プロトーナメントが開幕しました。岡本さんは2戦目で解説をしていらっしゃいましたが、今年はどんな手応えを感じられましたか?(匿名希望・56歳・HC13)
2008年に第1回大会が行われたヨコハマタイヤゴルフトーナメントPRGRレディスカップは、3年前から明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメントと名前を変え、今年で16年目の開催を迎えました。
そのなかで、2011年の大会初日、午後2時半過ぎに東北地方太平洋沖地震が勃発、全国的な混乱のため継続開催は中止、2020年はコロナ感染拡大を受け開催断念と、二度も中止を余儀なくされました。
最初から解説に携わってきた立場として感慨深いものがあります。あのとき、高知でも揺れは感じました。あれから、もう12年がたったのですね。
今大会から4日間開催になり、昨年から米ツアー参戦中の古江彩佳選手や、今年から米ツアー挑戦となる勝みなみ選手が参戦するとあって、優勝争いは例年に増して厳しく、スリリングになりました。
ベテランから中堅、若手、新人選手たちの熱戦はプレーオフに持ち込まれ、2日目からトップに立っていた吉本ひかる選手が、ささきしょうこ選手を振り切ってツアー初優勝を飾って幕を閉じました。
優勝スコアは19アンダー。23位タイまでの25人が2桁アンダーをマークしたことを考えれば、現在の女子プロ全体のレベルが確実に向上していることがわかります。
吉本さんはいわゆる黄金世代のメンバーの1人で、2017年にプロテストに合格した89期生。
黄金世代で12人目の優勝経験者に名を連ねることになりました。
3打差の3位タイの小祝さくら選手、6位タイの勝みなみ選手が同世代で、吉本さんの勝利で黄金世代は通算40勝に到達したのだそうです。
確かに一昨年の賞金女王・稲見萌寧選手、昨年の山下美夢有選手は黄金世代より下ですから、こう見ると黄金世代はもはや中堅? 時のたつのは早いと感じます。
JLPGAの年間スケジュールを見ると、今年行われる全38試合のうち4日間で争われるトーナメントは19。
国内ツアーもいよいよ半数が4日間、72ホールズの国際規格でプレーするようになったわけです。
思えば、わたしが米ツアーに挑戦し始めた80年代初頭、アメリカでは大半の試合が4日間開催でしたが、国内の試合はほとんどが3日間トーナメント。
それが、わたしが米ツアーで初優勝した82年には、公式戦の日本女子プロ選手権と日本女子オープンがそろって4日間競技に改められ、徐々に国際規格へと引き上げられていき、今では国内下部ツアーであるステップ・アップ・ツアーにも4日間大会があります。
現在、世界のゴルフ界はトーナメントの規模やレベルでツアーのランクが規定され、配分されたポイントでワールドランキングを構成しています。
国内だけのプレーでもポイントを稼ぐことができ、以前とは比べものにならないくらい世界への扉は大きく開かれている。
これはここ数十年で日本のゴルフ界が進化した証しです。
もし、わたしの若かったころに今のようなワールドランキングのシステムがあったらと想像すると、ちょっと羨ましいような気もするけど、いつの時代も厳しい競争の世界があることに変わりはないはず。
ただ、今は昔と違って、世界へ目を向けることは特別なことではなくなっている、とは思いますね。
ステップ・アップ・ツアーからレギュラーの試合に昇格してきた若い選手に話を聞くと、決まってみんな、「レギュラーツアーのトーナメント会場へ来ると、耳に入る音も匂いも、肌で感じる空気も何もかも違う!」と、興奮気味に話してくれますが、それを聞いてわたしは、いい感受性してるな~緊張感の違いを敏感に感じ取っているな~と頼もしく思います。
それもきっと、今の自分と世界でプレーする自分がしっかり繋がっていると感じられる環境が整っているからだと思います。
自分の可能性を信じて努力を続ければ、必ずチャンスは巡ってくる。
吉本選手の初優勝のシーンを眺めながら、そんなことを感じました。
それにしても、土佐CCでのこの試合。
過去14回のうち、9回がプレーオフってビックリしちゃいますよね(笑)。
「環境を整えてくれる周りの人への感謝の気持ちを忘れないでほしいです」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年4月4日号より
アヤコさんの著書『本番に強くなる!アヤコ流』好評発売中!