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【PGAツアーエキスプレス】Vol.22 ジョーダン・スピース、ピンチをしのいだバンカーショット。

ゴルフの最先端、PGAツアーの旬なネタをお届けする「PGAツアーエキスプレス」。第22回のテーマは、2022年RBCヘリテージのプレーオフでジョーダン・スピースが見せたバンカーショットについて。

取材/コーリー・ヨシムラ(PGAツアー アジア担当ディレクター)

ジョーダン・スピース 1993年生まれアメリカ出身。マスターズ、全米オープン、全英オープンと、メジャー3勝。近年復調している29歳
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難しい状況こそ基本に忠実にやる

2022年のRBCヘリテージ。プレーオフでジョーダン・スピースがパトリック・カントレーを破った試合だ。プレーオフでスピースが見せた見事なバンカーショットを記憶している人も多いはずだ。今回はそれを、全米トップ20のゴルフインストラクターの一人として評価されているトッド・アンダーソンに解説してもらった。彼は2010年ナショナルPGAティーチャー・オブ・ザ・イヤーを受賞した、かなりの“凄腕”コーチである。

このバンカーショットは、普通のライからの普通のショットではなかった。グリーンサイド、アゴが近く、さらにはバンカー内にスタンスを取ることができない、かなり厳しい状況だった。スピースは、左足はバンカーの外、右足はバンカーの中という過酷な場所から見事“砂イチ”でパーをセーブした。

「このような状況では、まずは安定した土台を作ることがとても重要になります。右足を砂に埋め、左ひざをしっかりと曲げます。もちろん、フェースは開いておくべきでしょう。ここで大事なのは、重心を左足に置くことです」(アンダーソン)

どのショットにも共通している部分だが、自分の重心を管理すること。これはスウィングの成功を決める大きなファクターになる。そして、イレギュラーな状況こそ、重心の位置がショットに大きく影響してくるとアンダーソンは言う。

「アドレスで左に重心を置いたら、ひざを柔らかく使って、重心位置を感じましょう。『自分の重心はここだよ』というように、確認作業を行うわけです。そして、テークバックでも左重心は変えずにクラブを上げていきます。鋭角にクラブを入れたいので、右ひじを折りたたみ、コックを入れながらヘッドを高い位置に持っていきましょう」

こういった場合、通常のバンカーショットよりもバンカー内にない左ひざの“柔らかさ”が必要になる。ひざの高さをキープしつつも、クッションのようにスウィングのタイミングをとっていく役割を担っている。

「高さを出したいときほど、アマチュアは間違いを起こします。それは、球を上げにいくこと。バンカーショットは砂を叩き、その勢いでボールを飛ばすわけですが、目の前にアゴがある状況では、ボールをすくい上げようとする人がほとんど。砂を叩くことに注視するべきなんです」

アゴが近ければフォローは出せない。だが、砂をしっかり叩けていれば、ボールは上がって、バンカーから脱出できる。

「当然だが、プロは砂を叩くことで脱出できることを知っている。アマチュアに必要なのは“成功体験”だろう。砂を打っているのにボールが上がるということを体感できれば、考え方も変わってくる。そうなれば、こういう難しい状況でも、スピースのようにピンチをしのぐことができるかもしれないよ」

月刊ゴルフダイジェスト2023年5月号より