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【イザワの法則】Vol.28「飛ばしたいなら筋トレよりもまずスウィングの効率化を目指しましょう」

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」。プロがウェイトトレーニングで筋力アップを図るのは当然のことだが、同じようなトレーニングはアマチュアにも必要なのだろうか。だとすれば、どんなトレーニングを、どういう目的でやるべきなのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

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科学的トレーニングが
定着したのは最近のこと

今では、ゴルフも含めたプロスポーツの世界で、日常の練習に加えて、ウェイトトレーニングを行うのは普通のことになっていますが、ひと昔前には、「ウェイトで筋肉がつくと体が重くなって動けなくなる」みたいな理由で、「やらないほうがいい」と思われていた時代がありました。トレーニングの効果が科学的に実証されて、国立の「ナショナルトレーニングセンター」ができたりして、水泳とか陸上競技でオリンピックメダリストがたくさん誕生するようになったことで、やっとウェイトトレーニングは「必要」というのが、プロスポーツ界に浸透した感じがします。

ゴルフ界で、トレーニングを本格的に取り入れたのは、タイガー(・ウッズ)だと言われていますが、それから30年弱の間に、プロゴルファーのトレーニングもかなり進化して、より科学的で効果の高いものになってきています。ブルックス・ケプカや、ローリー・マキロイなんかは、ベンチプレスやスクワットで信じられないくらい重いウェイトを上げているみたいですが、「だから飛ぶ」のかというと、それは少し違います。

たとえば、あるゴルファーが今から半年くらいかけて、真剣にトレーニングをするとします。半年後、10kgしか上がらなかったベンチプレスが30kgになって、20kgだったバーベルスクワットが50kgになったとして、ヘッドスピードが45m/sから46m/sに、1m/sしか上がらなかったとしたら、トレーニングの効果は、ほとんど「ゼロ」に近いですし、実際にそういうことはよくあるからです。


飛距離に結び付かない
筋力アップは意味がない

筋力をアップするトレーニングと、それをヘッドスピードに結び付けるトレーニングは、それぞれ別々に、並行して行う必要があります。とくにアマチュアの場合は、ヘッドスピードが上がらない理由が「筋力不足」であるケースは、むしろ少ないのではないかと感じます。よっぽど筋力が少ない高齢の方や女性などを除いて、ほとんどの人は、筋力アップよりもまず、スウィング自体の効率化を目指したほうが、簡単に飛距離アップできる可能性が高いです。そのうえで、さらに飛距離を伸ばしたいときに、トレーニングを行うというのが、正しい順番と言えるでしょう。

それと、日本人の平均的な体格の場合、欧米人よりもトレーニングの効果が、飛距離に結び付きにくいような気がします。身長が高い、手足が長いというのが、やはりスピードを出すには有利で、同じ強度のトレーニングをしても、体格的に恵まれている人のほうが、効果は表れやすいです。

もちろん、だから「やっても意味がない」というわけではなく、とくに中高年を過ぎてからのトレーニングというのは、飛距離アップよりも、スウィング中のバランス維持という、もっと大事な目的があります。コース内は、ティーイングエリアを除いて、平らなところがないですから、そういう斜面できちんとスウィングするには、足腰や体幹の強さが必要です。

普段、デスクワークばかりで体を動かす機会が少ない人は、年齢を重ねると、気付かないうちに筋力がどんどん落ちていますから、週に1~2回、年間を通じて自宅でもできる自重を使ったトレーニングをすることをおすすめします。

「日本選手のトレーニング強度は欧米選手と大きくは違わない。
ただし、元々の体格差を埋めるのは簡単じゃない」

傾斜地では体幹や足腰の筋力が重要

中高年以上になると、若いときのようにトレーニング強度を上げられないので、なかなか筋力がつきにくく、すぐには飛距離に反映されにくい。ただし、下半身や体幹の筋力を維持することはでき、傾斜地のショットなどで効果を発揮する

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2023年3月号より