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【陳さんとまわろう!】Vol.240 “ピン近”のバンカーはフェースを思い切って開く「度胸」が大切です

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回は、“ピン近”のバンカーショットを教えてもらった。

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

バックフェース全体が砂に付くくらいまでフェースを開く

――バンカーショットでのフェースの開き方はどんな感じですか。

陳さん ピンまで15ヤードとか20ヤードもあるときはそれほど開く必要はありませんがね、ボールをすぐそこに落とさなくちゃいけないくらいに近いときはバックフェース全体が砂に付くぐらいまで開きますよ。また開ける人はバンカーショットが上手い人。苦手な人はなかなか開けないんだ。

――フェース面が空を向くぐらいに開くのは度胸が必要ですね。

陳さん それは練習で克服しなくちゃいけないことですよ。私も若いときの一時期たくさん練習しました。アイアンショットでボールをバンカーに打ち込むプロは下手な証拠だよ。でもそうはいっても、入れることがあるわけ。私の場合はタテの距離感が合わなくて打ち込むことがたまにあるんだ。タテの距離を間違えるというのは、だいたいが風の強さを読み違えるということね。たとえば8番アイアンの残り距離のところをアゲンストの風だから6番で打ったら実際はもっと強くてショートして、グリーン手前のバンカーに打ち込む、ということ。そのときに失敗してボギー以上叩いたら試合に勝てないじゃない。


――だから練習はしておくと。左右に曲げてバンカーに入れることは?

陳さん 記憶にないんだよなあ。私は持ち球がドローボール。これには自信がありますから曲がりの計算はちゃんとできるからね。それからショットはタテの風には弱いですけど、ヨコの風には強いものよ。だから10ヤードも15ヤードも風に流されてグリーン左のバンカーに入れる、ということは私の場合はないんだねえ。

――凄いな、陳さん。

陳さん アハハ……。自慢はこれぐらいにして、ピンに近いバンカーショットをやってみましょうか。ここ(河口湖CC東C1番パー5 Aグリーン)は3打目で手前のバンカーに打ち込む人が多いの。奥から林が迫っていますし、バンカーの手前側が大きくえぐれているために、距離よりも近く感じさせるんだねえ。

――ピンがバンカー寄りに立っていて、距離は3メートルぐらいですか。寄せるのは難しそうです。

陳さん でも大丈夫よ。(ショットして)ほら、寄ったでしょ。

――上手いなあ、陳さん。簡単に寄せましたねえ。ピン奥1メートル強ぐらい。

陳さん じゃあ今度、アナタやってみてください。

――私ですか? 緊張しますね。まずピンにオープンに立って……。

陳さん フェース、もっと開いて。

――もっと?

陳さん そう。開いたらホームランはないから。ザックリはあってもね。

――これぐらい開いていいですか?

陳さん 開く、開く。それから右手のグリップをもっとかぶせて。

――もっと? こんな感じですか?

陳さん そう。それでボールの下の砂を全部取っちゃうんだ、ドンッと。

――リーディングエッジがピンの右を向いているし、右手は小指付け根の関節が見えるしで、何だか……。

陳さん 大丈夫よ。思い切って。

――(ショットすると、これがピン手前1メートル弱にピタッと付く)

陳さん 上手いじゃないですか。打ち方がきれい。ね、キャディさん。

キャディ ほんと、きれいでしたよ。

――うれしいな。いま、ヘッド全体が砂の中でピュッとすべった感じがしましたね。初めての感覚です。

陳さん 私はあまり他人のショットを褒めないからね。教えるほうは簡単だけど、やるほうは難しいんだよ。いま、ザックリやるかと思ったけどね。

陳清波

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2023年9月号より