【陳さんとまわろう!】Vol.239 バンカーショットはフォローの大きさで距離を調節するんです
日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。「バンカーだからこそフットワークが大切」という陳さん。今回は、陳さんならではのワザをさらに教えてもらった
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
遠くても近くてもヘッドを打ち込む強さは一緒
――バンカーショットでもフットワークを使うという前回の陳さんの見本ショットはよかったですね。
陳さん そうでしょ。距離はピンまで4メートルと近かったですがね、しっかりフットワークを使って打って、1メートルくらいに寄せたものね。距離が近かったので、クラブヘッドを打ち込んでおしまいにして、フォロースルーをほとんど出しませんでしたけど、それは見ていたでしょ。じゃあ、バックスウィングの大きさがどれぐらいだったか見ていた?
――ん~ん、大きくもなく、小さくもなく……。
陳さん アハハ……、自信なさげですけど、そうなんですよ。左腕が地面と平行になったあたりなんだねえ。この高さはピンまでの距離が近くても遠くても同じにすることが大事なんですよ。近いから小さいバックスウィング、遠いから大きいバックスウィング、じゃあないんだ。じゃあ距離の調節はどこでやるかというと、フォロースルーの大きさでやるんだねえ。距離が近いときはフォロースルーも小さく、遠いときは大きく。このほうがミスは少ないし、コントロールしやすいはずよ。
――ということは、ヘッドを打ち込む強さは同じということですか。
陳さん はい。これは私の感覚ですがね、ヘッドを打ち込むときは10kgぐらいの重さを感じるんだ。砂の抵抗にそれぐらいの重さというか反発力を感じるといってもいいですがね。面白いのは、距離が遠いときは力を抜かないでフォロースルーを出していきますが、近いときはヘッドを打ち込んだところで力をゼロにしますから、フォロースルーが出ないわけね。だからフェースの上に砂が残るんだ。ちょっと打ってみましょうか。(河口湖CC東コース8番パー5のAグリーン左)
――はい。砂は硬くもなくフカフカでもなく、ごくふつう。
陳さん (ショット後)ほら、残ってるでしょ。
――ホントですねえ。
陳さん 砂が湿っているときはもっと残りますよ。たぶんみなさんは打っておしまいのショットをやったことがないでしょうから、フェースに砂が残るなんてことは経験ないでしょうけど。
――たまに、打ち込みすぎてヘッドが抜けなくて、フェース上に砂が山盛りというときがあります。
陳さん アハハ……。それは手打ちのやりすぎだ。フットワークを使わないとそうなることが多いんだ。
ところでバンカーショットでのサンドウェッジは、ヘッドが重いものを使ってる? それとも軽いもの?
――ええと、どうなんでしょうね。
陳さん 知らないんだ(笑)。たぶん多くの人は重いものを使っているかもしれない。重いほうが砂の抵抗に負けないで打ち込めると考えているんでしょ。でもこれ、違うんですよ。バンカーショットで使うサンドウェッジは軽いほうがいいんだ。
――そうなんですか?
陳さん そうですよ。重いものを使っちゃいけない。なぜかというと、ヘッドを打ち込んで、砂の中からヘッドを抜いてフォロースルーをとるのに、ヘッドが重いとものすごい力がいるからなんだね。たぶんヘッドを打ち込むときより倍ぐらいの力が必要なはず。これ、難しいですよ。しかし軽いものなら、アプローチショットの感覚でフォロースルーを出せるんだ。だから、ということなのよ。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2023年8月号より