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【陳さんとまわろう!】Vol.232「パッティング、昔は『肩を使え』なんて言われなかったんです」

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。パッティングに関しても人一倍熱心に研究してきた陳さん。パット談義はまだまだ続く!

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

しびれたときは強めにしっかり握るんです

――陳さんがパターをクロスハンドグリップで握るようになってからパッティング恐怖症から逃れられたという話がありましたが、陳さんのパッティングを見ると、クロスハンドで握るときと順手で握るときの両方ありますね。その違いは?

陳さん クロスハンドはイザというとき、しびれてきたときにやるんですよ。精神状態が悪いときにね。なぜかというと早打ちにならないから。精神状態が悪いときは勝手に手が動いてパチンッてボールを叩きにいってしまうんだ。しかしクロスハンドの握り方は左手が下で右手が上。この状態で、打つ方向が左になると左手が邪魔になって右手が使えなくなるの。だからゆっくり打つことができるわけね。

――しびれたときにはグリップを強く握るといい、と言われることがありますが、陳さんは?

陳さん はい、グリップを強めにしっかり握るようにすればいいです。それがいちばん簡単で効果が出る方法だと思いますよ。


――指先が白くなるぐらい強く?

陳さん いいと思いますよ。それぐらいしっかり握らないと、しびれたり震えてきたりしたときに、まともにストロークできなくなるはず。この、グリップを強く握るというのは、なにもしびれたときばかりじゃなく、ふだんからそうしたほうがいいんですよ。というのは、パッティングにもフィニッシュがあって、フィニッシュをちゃんと取るためにはグリップをしっかり強く握っていないとできないんだ。

――パッティングにもフィニッシュですか……。

陳さん フィニッシュというか、ヘッドの動きを止めるということね。だらだらとヘッドを出していかないで、ボールを打ったら動きを止める。そういう意味でのフィニッシュだね。ま、動きにメリハリをつけるわけよ。ツアープロでパッティングの上手な選手はちゃんとフィニッシュがありますよ。こんどチェックしてごらん。上手じゃない選手にはフィニッシュが見られないはず。

――じゃあ、今度、見てみましょ。

陳さん 昔話になりますがね、私がまだパターが上手かったとき、ロングパットを打つときはパターヘッドで芝を削り取るぐらいにダウンブロー気味に打っていたんだねえ。これはコーライ芝だったからですけどね。コーライ芝の逆目で、フォロースルーでヘッドを持ち上げて流すような打ち方をやったら、ボールは絶対狙い通りに転がっていかないよ。だからインパクトを強くして、打ったらヘッドを止めるようにフィニッシュしたわけ。これがよく入ったんだ。ところがある先輩プロに「フォロースルー小さいから、もっと出したほうがいいよ」と言われてそうしたら、全然入らなくなっちゃってさ(笑)。

――どなたですか、そのプロは。

陳さん アハハ……、名前出しちゃ悪い。でもそれからなんだよなあ、カップを舐めもしなくなったのはね。しかし、いま試合に出ている選手はみんなパターが上手いねえ。昔は、パターは手で振れとか腕で振れと言われて、肩なんか使えって言われたことありませんでしたけど、いまは違うんだもの。みんな肩を使って打ってる。それでこれぐらいの距離(1メートル)なんか簡単に入れちゃうじゃない。確かに手や腕でストロークするとヘッドの動きが不安定になりますよ。緊張したときは特にそう。腕とクラブを一体化させて、肩でストロークしたほうが動きは安定するはず。昔からそうやっていれば私も、ね(笑)。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2023年1月号より