【ゴルフの急所】Vol.21 大事な試合にピークを持っていくには“わざと調子を落とす”!? 寺西流の調整法
30歳からゴルフを始め、トップアマとして活躍したのち、49歳でプロ転向。会社経営の傍ら、2020年には日本シニアオープンを制するまでに至った異色プロ・寺西明が、自身が考える「ゴルフの急所」について、読者からの疑問に答える形で解説していく。
PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/六甲国際GC
クラブ選手権などの競技でいい成績を出したいのですが、そういうときに限って調子が悪く、結果が出せません。大事な試合にピークを持っていくコツや、心掛けていることがあれば教えてください(田中雄一郎さん・49歳・HC8)
これは、非常に難しいテーマなので、あくまでボクのやり方を紹介したいと思います。
まず、ボクは大事な試合があると、その2~3週間前に、ショットがバラバラになるくらい、わざと調子を落とします。
具体的に何をするかというと、自分の持ち球とは逆の球を徹底的に練習するのです。ボクの場合は、フェードが持ち球なので、ドローをとことん打ち込みます。すると、それが打てるようになる頃には、今までできていたことができなくなり、自然に調子が悪くなっていくというわけです。
そうしていったん調子を落としたら、基本の練習をぶ厚くするとともに、アプローチパターをしっかりやって、調子を戻していきます。このように、ボクは、大事な試合の前になると、基礎的な練習とショートゲームばかりやるようにしているのです。
では、ボクがなぜこんなことをするかというと、いったん調子を下げれば、あとは上向くしかないからです。調子を上向きにして、その状態のまま試合に臨みたいのです。
よく、大事な試合にピークを持っていくなどと言いますが、それが上手くいくとは限らないし、ピークの状態で試合に入っても、その調子が4日間続く保証はどこにもありません。ショットの調子なんて日替わりなのですから、今日最高でも、明日はどうなるかわからないわけです。
さらに、ピークを迎えてしまったら、もう上がない。落ちるしかない。そこには、悪い状態が待ち構えています。だから、ボクは、大事な試合だからといって、最高の状態に持っていこうとは考えません。それより、上向きの状態で試合に入って、いい状態のまま4日間をプレーしたいと考えているのです。
ただし、この方法は、普段から自分をリセットする基礎練習(ボクの場合は(1)ステップ打ち、(2)2ボールドリル、(3)クロスハンドドリル、(4)トップで静止してから球を打つドリルの4つです)をやっていて、調子が悪くなっても元に戻れる自信があって初めて成り立ちます。それなしで調子を崩してしまったら、迷路に迷い込んでしまうので注意してください。
さて、これはあくまでボクのやり方ですが、大事なのは、ショットに入れ込みすぎないことだと思います。プロの調子がいいときというのは、やはりショートゲームがいいものです。そのあたりを理解しておけば、自分なりの試合への臨み方が見えてくるのではないでしょうか?
基礎練習1
ステップ打ち
基礎練習2
2ボールドリル
基礎練習3
クロスハンドドリル
クロスハンドでグリップし、ウェッジやショートアイアンを打つ。手先でクラブを動かすと、インパクトで手元が浮いて上手く打てない
基礎練習4
トップで静止してから球を打つ
使用クラブは、ウェッジかショートアイアン。トップでいったん静止したら、左足に踏み込む動き(左への体重移動)をきっかけにダウンスウィングして球を打つ
月刊ゴルフダイジェスト2022年11月号より