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義足でも300Y超え! 吉田隼人プロ開眼ものがたり「飛ばしのヒントは“瓦割り”にあった!」

右足が義足ながらPGAティーチングプロB級ライセンスを取得した人がいる。しかも168センチ・64キロと小柄ながらドライバーは300ヤード以上飛ばすというのだ。俄然興味が湧いてそのスウィング論を聞き出すと我々にも参考になる飛ばしの秘訣があった。

TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/日本障害者ゴルフ協会

吉田隼人 1983年生まれ、神奈川県出身。右足切断後、27歳のときにゴルフを始め、自身の体と向き合いながら独学でスウィング理論を構築。2018年には日本の障害者ゴルファーNo.1を決める「日本障害者オープンゴルフ選手権」で3位に、その後、2020、21年と連覇を達成。ゴルフを始めてからわずか8年で国内のトッププレーヤーに上り詰めた。現在、よみうりゴルフ倶楽部でレッスンを行っている

球が遠くに飛ぶ快感でゴルフの楽しさを知る

吉田プロがバイク事故にあったのは2008年、24歳のときだった。事故直後、ほぼ皮一枚でつながっていた状態だった右足は、手術によってなんとか切断を免れたが、その後何度も感染症が起こり26歳で右足を失うこととなった。

「お医者さんから『命を落としてもおかしくなかった』と聞いていたので、右足を失ったことでの絶望はなく、生きていることがありがたいと思えました」

義足となった不自由さにもめげることなく自立した生活を目指し、27歳のときに友人の誘いでゴルフに出合った。

「学生時代はずっと野球をやっていたからスポーツには自信があったのに、思ったように打てないことが悔しくて火がつきました。それに、当たったときのボールの飛距離は野球とは比較にならない気持ち良さだったし、大自然の中でスポーツができることもすごく爽快感があって。ゴルフにハマった理由はみなさんと同じです」

それから試行錯誤の練習の日々が始まった。


吉田プロの300Yスウィング

空手の動きにヒントを得て300Y超え

「最初に使っていた義足は股関節のあたりまで固定されていたので腰は全然回せない状態でした。いわゆる手打ちで打っていましたが、野球の経験があったおかげか250ヤードくらいは飛んでいました。でももっと飛ばしたい。義足を改良してもらって少し右足に体重を乗せていけるようになりました。右のつま先を浮かせれば腰も少し回せるようになったことで280ヤードまで伸びました」

右足に体重を乗せられるようになったことで飛距離は30ヤードもアップしたが、その一方で弊害も出てきてしまった。

「バックスウィングで右足に体重を乗せて、ダウンスウィングで左に戻って打つことで、軸がブレて球が曲がり出しました。それで軸をブラさない動きのなかで飛距離を伸ばすにはどうしたらいいか。ここはかなり悩みましたね」

そんなときに偶然見たのが、空手の“瓦割り”の動画だったという。上体が全然ブレないまま強く瓦を打ち抜いている動きに、ピンとくるものがあったという。

「その動画を何度も何度も見て研究して、その結果左ひざを曲げて伸ばす動きを取り入れました。バックスウィングでは左ひざを前(ボール側)に出すようにして、インパクトで一気に伸ばす。要は地面反力ですよね。左ひざを伸ばしたとき、いままでほとんど回らなかった左腰が勝手にギュン! と回るようになって、300ヤード飛ぶようになりました。あるものを最大限生かすことが大事。僕が300ヤード行くんです。みなさんだってまだまだ飛ばせますよ」

300Y超えの秘訣
左ひざを曲げインパクトで伸ばす

バックスウィングで左ひざを前に出してインパクトで伸ばし「地面反力」を使う

月刊ゴルフダイジェスト2022年11月号より

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