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【浦ゼミナール】Vol.31 PGAツアー選手みたいなスウィング、僕らも真似していいの?

身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。第31回は、トッププロのスウィングをアマチュアも真似してもいいのか。そんな素朴な疑問について答えてくれた。

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー

浦大輔

うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰

前回のお話はこちら

モー・ノーマン的な1プレーンならOK

――今回は浦さんに、アマチュアの素朴な疑問をぶつけたいと思います。

浦 どんな疑問ですか?

――ズバリ、PGAツアー選手のスウィングは真似していいんですか?

浦 ふむ、たしかによく聞かれますね。率直に言えば、真似できるのであれば真似していいと思いますよ。あのレベルでプレーしている選手のスウィングはみな完成度が高い。きちんと真似できれば、さぞいいショットが出るでしょうね。

――いや~、そうではなくて、普通のアマチュアに真似できるのか、という意味です。


浦 わかってますって(笑)。そういう意味では、真似していい選手と真似しないほうがいい選手がいます。真似していい、というよりも真似してほしい選手の代表格がブライソン・デシャンボーと小平智選手です。

――なんだか極端というか、背が高くて筋肉モリモリの飛ばし屋デシャンボーと、PGAツアーでは小柄で飛ぶほうではない小平選手。なぜこの2人なんですか?

浦 そう見えますか。でも実はこの2人、理想としているスウィングが同じで、似たタイプなんですよ。

――ええっ? そうなんですか?

浦 2人の共通点は「1プレーン」。バックスウィングで上げた軌道をそのままなぞるように下ろしてくるシンプルなスウィング軌道を理想としています。2人の共通のお手本は、伝説のボールストライカー、モー・ノーマンです。

――たしかにデシャンボーはモー・ノーマン的ですが小平選手も?

浦 実は小平選手とはSNSでやり取りしたりもするんですが、「モー・ノーマンを目指している」と彼自身も言っています。小平選手はデシャンボーほど筋力が強くないせいもあり体重移動を使って間を作るため、切り返しで若干クラブがインに入り、デシャンボーほどキレイな1プレーンにはなっていないのですが、構えを見ると結構ハンドアップで、目指しているところが一緒なのがわかります。

――なるほど。構えは似ていますね。

浦 1プレーンスウィングは、エネルギー効率はいいのですが、やはり飛距離よりは精度重視のスウィング。でもアマチュアにとってはこのリピータブルでシンプルな動きは大きなメリットになるはずです。

――デシャンボーはあんなに飛ばすのに、精度重視なんですか?

 デシャンボーが飛ぶのはあの筋力の賜物です。極端に言えば、精度重視の飛ばないスウィングを、筋力で無理やり飛ばしている。でもスケールダウンすれば真似できる理想形の1つだと思います。

「1プレーン」を目指しているのがデシャンボーと小平の共通点

浦さんが「アマチュアが真似するべき」と推奨するデシャンボーや小平のスウィングは、モー・ノーマンに源流を発する1プレーンスウィング。ハンドアップに構え、アドレス時のシャフトの傾きに沿って上げた軌道をダウンスウィングでもそのままなぞるように下ろしてくる。シンプルで再現性が高く、エネルギー効率もいい。3人とも、首のつけ根とクラブヘッドを結んだ線上に近いところに手元を置くハンドアップな構えが特徴的だ(左から、モー・ノーマン、ブライソン・デシャンボー、小平智)

マキロイのスウィングはアマチュアには無理

――デシャンボーもいいですが、ローリー・マキロイやコリン・モリカワなどは……。

浦 ああ~、憧れますよね、ああいうしなやかでシャープなキレのいいスウィング。ザンダー・シャウフェレなんかもキレイ。僕だってあんなふうに振りたいですよ。でもダメですね(笑)。あんなふうに大きな筋肉を使ってスウィングするには、圧倒的な身体能力が必要です。

――デシャンボーのようなスウィングのほうが、高い身体能力が必要なのかと思っていましたが、逆なんですか?

浦 デシャンボーくらい飛ばすには超人的な筋力が必要ですが、スウィングを真似するだけならアマチュアでもできます。でもマキロイ、モリカワ、シャウフェレらのスウィングはすごく繊細で高度。体の部分部分をバラバラに制御して、それぞれを精密に動かせないと真似できません。デシャンボーのスウィングが腕や上半身をドーンとぶつける「ラリアット」的な動きだとしたら、マキロイらのスウィングはしなやかな「(野球の)ピッチング」のような動きだと思ってください。この3人のスウィングは似ていますが、体の回転量はマキロイ<モリカワ<シャウフェレの順で大きく、とくにシャウフェレのようにインパクトで右足がめくれて腰が目標方向を向くスウィングは、異常なほどの背中の柔軟性が必要。そしてその柔軟性があってもスウィングを安定させるには強い筋力が不可欠なんです。はっきり言ってデシャンボー以上の超人的な身体能力だと思います。

超人的な身体能力がないと美スウィングは真似できない

マキロイ、モリカワ、シャウフェレらのしなやかで美しいスウィングは、誰もが真似したいと思うが、実は非常に高度で複雑。しなやかな動きをコントロールするためにパーツパーツを個別に操る繊細な感覚と高い身体能力があってはじめて可能なスウィングなので、アマチュアにはおすすめできない(左から、ローリー・マキロイ、コリン・モリカワ、ザンダー・シャウフェレ)

――なるほど。やっぱり無理ですか。

浦 スケールダウン版という前提であえて言うなら、左手1本でアプローチやバンカーショットをして右手よりもやわらかく上手に打てる人なら可能性はあります。左で引っ張る動きが上手な人なら、近づけるかもしれませんが、できる人は本当に稀ですね。

――諦めたほうがよさそうですね。では、デシャンボーや小平選手のようなスウィングを身につけるにはどうすればいいんでしょうか?

浦 腕とクラブを一体にして、ひじを曲げずにスウィングする感覚を身につける必要がありますが、まずはアプローチからですね。クラブを短く持ってアームロックのようにシャフトを左前腕と一体化させます。そしてアプローチくらいの振り幅からだんだん大きくしていきましょう。振り幅が大きくなってもひじを極力曲げずに腕を真っすぐ使う感覚を身につけられれば、モー・ノーマン的なスウィングに近づけると思います。切り返しであまり細かいことを考えず、とにかく両ひじを曲げずにスウィングすることに集中してください。インパクトでボールを押す感覚が出てくれば本物です。

Drill
ノーコックのアプローチから練習してみよう

1プレーンスウィングを身につけるには、シャフトを前腕と一体化させるようにアームロックで握り、ノーコックのアプローチ練習から、振り幅を大きくしていこう

月刊ゴルフダイジェスト2022年9月号より