【浦ゼミナール】Vol.30 パッティングの「記録」を取ればパターは驚くほど上手くなる
身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。パッティングでいちばん大切なのは「練習」という浦プロ。詳しく聞いてみた。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Tsukasa Kobayashi THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
ホールアウト後の練習は効果絶大
――今回もパターについてお聞きしますが、テレビ中継などを見ていると、プロって長いパットがガンガン入るのに、どうしてアマチュアは入らないのでしょう?
浦 いやいや、プロだって普段はあんなに入りませんよ(笑)! テレビ中継に映る人は、トッププロのなかでも今週とくに調子がいい人。だから上位に来られていて、テレビに映る。予選落ちしそうなテレビに映らない順位の選手を見ていたら、あんなにバカスカ入りませんよ。
――ああ、やっぱりそうですか。少し安心しました。
浦 まあでも「どうしてアマチュアは入らないのか」という点においては、「練習してへんやろ!」ってツッコミたくなりますね(笑)。そもそも最後にパットの練習したの、いつですか? ゴルフ場でのスタート前の練習以外ですよ。あれは「練習」じゃありませんから。
――うーん、そう言われると……。
浦 スコアのなかでパターの比率は圧倒的に高いんです。72のパープレーで回るとしても、ドライバーは最大14回しか使いません。アイアンも各番手数回ずつ。アプローチもゼロから多くて数回。でもパターは最低でも20回前後は使うんです。アマチュアは40回近いでしょ。それなのにドライバーよりもパターの練習をたくさんしているアマチュアを見たことがありません。ツアー会場を見ていると、プロはショットと同じかそれ以上に時間をかけてパットの練習をしていますよ。
――なるほど……。耳が痛いです。
浦 パットの練習は地味ですから、そこまでやれとは言いません。でももう少しパターに触れる時間を増やしてから「入らない」とボヤいてほしいですね。
ショットに比べてパットは練習量が圧倒的に足りない
パターはラウンド中いちばん多く使うクラブ。ドライバーの約2倍の使用回数なのに、練習量は圧倒的に少ない。もっとパターに触れる時間を長くしなければ入るようになるわけがない!
――効率よくうまくなるにはどんな練習をしたらいいですか?
浦 いちばんいいのはホールアウト後の練習です。10〜15分でいいので、感覚が研ぎ澄まされているラウンド後に芝のグリーンで転がせば効果は絶大です。グリーンを使えれば読みの練習にもなるし、ロングパットや切れるラインの経験を積むこともできます。ラウンド後にパット練習せずに帰るのはもったいないです。
――家では?
浦 基本的には「真っすぐ」の練習しかできませんが、細かい点にこだわればこだわるほど効果はアップします。たとえば鏡を使ってパターのライ角どおりに構えられているかをチェックしながらやるとか。私はゴルフシューズと自宅のスリッパの高さの違いを考慮して、本番用と形も重さも同じで長さだけを変えた練習用のパターを作っておいてそれで練習していますよ。
立てられる鏡を使ってパターのライ角をチェック
パターの構えで見落としがちなのがライ角。本来は、パターのライ角に合わせて構えるべきだ。鏡に向かって構え、ソールが地面にピッタリ沿うように構える練習をしよう
スコアカードに情報を書き込んでおく
――こんなことを聞くと怒られそうですが、練習以外でうまくなる方法はないんですか?
浦 もちろんありますよ。パットなんてグリーンの読みが8割で、あとは打ち方1割、運1割なんです。プロはその1割の「打ち方」の部分にものすごく大きなエネルギーを割いているわけですが、アマチュアが圧倒的に下手なグリーンの読みのレベルをアップできれば、確実にパットは入るようになります。じゃあ読みはどうすれば磨けるかというとほとんど経験なんですが、だからこそ芝の上で打てるホールアウト後の練習が大事という話。
――あれ? 結局練習です?
浦 いえ、ラウンド数の少ないアマチュアにとっては、プレー中に得られる経験値を最大化する工夫もすごく大事です。それには経験をデータ化すること。
――データ化とは?
浦 スコアカードに、パッティングの記録を残すんです。どんな状況でどこを狙って打って、実際の結果はどうなったか。下の写真が一例ですが、いちばん上は「1番ホールで3メートルの下りのパットを、カップ2つぶん曲がるフックラインと読んだけれど、実際は1カップ右に外し、1メートルオーバーした」という意味です。ここから推理できるのは、事前のイメージよりも切れなかったのか、もしくはジャストタッチなら入ったかもしれないということ。同様にその下は「2番ホールは2メートルのカップ1個スライスと読んだラインを、狙ったとおりのラインに打ち出してカップインさせたが、多分イメージよりも強く打ってしまった」という意味。
スコアカードの空いているところにパッティングの情報を細かく記入しておく。最低でもホールアウト後か帰宅後にチェック。できればある程度まとまった段階で分析したい
――なるほど。これは結果的にカップインはしたけれど、読みよりも強く打ったのに入ったということは、イメージどおりのタッチだったら右に外していたはず。実はタッチもラインも違っていたということがわかりますね。
浦 そうです。3番ホールのようにイメージどおりでカップインさせたら丸で囲み、4番ホールのように明らかなストロークミスやヒットミスも書いておく。これを積み重ねていくと、自分自身の「薄く/厚く読みがち」といった読みのクセだったり、「フックラインは引っかけ、スライスラインはプッシュが多い」というようなミスの傾向がいやおうなく見えてきます。判断のミスなのかストロークのミスなのかも明確になるので、改善点もハッキリします。
――イメージ作りの訓練にもなりそうです。
浦 そうなんです。普段からボヤッとした雰囲気になりがちな「狙い」を、「カップ2個右」というように具体的な「数字」にしておくことがとても大事。こうすることによって自分がどこを狙っているかを自分で理解でき、初めて明確なイメージになる。「あの辺、このくらい」で狙って入るのはごく一部の天才だけですよ。
どう狙ってどんな結果かメモを取るのはとても大事
カップを狙ったパットについて、スコアカードに(1)状況、(2)カップ何個どちらを狙ったか、(3)結果、(4)推理を記入しておき、あとで見返してみよう。「カップが視界に入って押し出した」等の「分析」まで書くと情報過多になるので注意
(1)状況……ロングパット以外のカップを狙える数m以下のパットについて、距離と上り下りなどの状況を記入
(2)狙い……左右どちらにカップ何個ぶん外すラインで狙ったかを記入。この具体性がイメージになっていく
(3)結果……結果的にどんなラインでどのくらいショートもしくはオーバーしたかの結果を記入する
(4)推理……外れた場合、タッチが強かったのか弱かったのか、読みが薄かったか厚すぎたのかを推理
月刊ゴルフダイジェスト2022年8月号より