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「プレースタイル」持ってますか?<後編>“絶対に無理しない”タイガー流マネジメントはアマチュアこそ取り入れるべき

一見アグレッシブに見えるタイガー・ウッズのプレースタイルだが「実は最も基本に忠実」だと内藤雄士コーチは言う。我々アマチュアでも真似できるタイガーの攻め方、考え方とは?

TEXT/Kenji Oba PHOTO/Tadashi Anezaki、Blue Sky Photos THANKS/ハイランドセンター

解説/内藤雄士

プロコーチ。日大ゴルフ部時代に米国に留学し、最新のゴルフ理論を学ぶ。その後、丸山茂樹、平塚哲二、矢野東、大西魁斗らのコーチを務める。日大ゴルフ部コーチ。03年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

>>【前編】スコアが安定しない理由は
「プレースタイル」を持っていないから

アグレッシブに見えて
極めて基本に忠実

「プレースタイルを学ぶならタイガー・ウッズをお手本にすべき」内藤コーチはそう断言する。だが、タイガーのスーパーショットをアマチュアが真似できるわけがない、と思うはずだ。ところが、それは間違いですと内藤コーチ。

「タイガーといえば、アグレッシブな印象を持つ人が多いでしょう。過去の映像はスーパープレーばかりですから、そう思うのも無理はありません。ですが、それらはトラブルショットでしかなく、実際は真逆です。彼のプレースタイルこそ、最も基本に忠実なんです。絶対に無理はしない。自分を知り尽くしたうえでコースマネジメントをしているのが、タイガーのプレースタイルの大きな特徴です」

タイガーほど、トーナメント中継の解説がしやすい選手はいないと内藤コーチ。セオリー通りのコースマネジメントは、攻め方が手に取るようにわかるからだ。

「タイガーは逆転勝ちがほとんどありません。ほぼ逃げ切りで勝つプレースタイルです。3日目で首位に立つと、最終日はボギーを打たないプレーを徹底。たとえばスティンガーなど、低いボールを多用します。風の影響が大きい全英OPなどは、低い球のみでコースマネジメントしますから」


2000年前後のタイガーは、勝ちパターンに入ると全ショットがカット打ち、というプレースタイルも有名だ。どスライスなら逆球が出ることはなく、ボールが止まるからだ。内藤コーチが直近でタイガーを見たのは2019年のZOZOチャンピオンシップ。首位で迎えた3日目、1番ホールでドライバーは使わず、3Wでスライスを打った姿が印象的だったという。「タイガーは自分の勝ちパターンをコースマネジメントとして当てはめているだけなんです。基本に忠実だからこそ、相手が誰であろうと勝ててしまうわけです」

度重なるケガを経験しながらもタイガーが勝てたのは、自分のプレースタイルを貫いたからなのだ。コロナ禍で米ツアーが中断になったとき、内藤コーチはタイガーの優勝シーンを振り返る番組の解説を担当した。改めて映像を見返すと、9Iでアプローチしたり、パターのトウヒットで転がすシーンを幾度となく発見したという。多彩な技術力ともとれるが、「一番確率の高いショットを選ぶのも彼のプレースタイルです。過去の映像でそれを実感しました。これこそ、基本に忠実なゴルフそのものです。アプローチで9Iを使うと苦手なのかなと誰もが思うはずです。世界最強のタイガーがそのショットを選択する。つまりそれが最も確率の高い、最善策だということです。それを躊躇なくやれるのが彼の強さなんです」

自分のプレースタイルを持った選手こそ最強なのだ。これはアマチュアにも通じる真理である。

タイガースタイル 1
セオリー通りのコースマネジメント

難しいことは一切しない、セオリー通りのコースマネジメントを貫くのがタイガーだ。「いま自分ができる最善のマネジメントを追求する」姿勢こそが、タイガーを象徴するプレースタイルといっていい

タイガースタイル 2
曲げたくないときは徹底して低い球

最終日のタイガーはスティンガーショットやパンチショットを多用。逃げ切るためのショット選択が、タイガースタイルの土台にある

タイガースタイル 3
長い番手ではピンを狙わない

タイガーは長い番手ではピンを狙わない。タイガーは狭いエリアに乗せてくる、ピンデッドで攻めてくる、と思われがちだが、リスクは徹底的に排除するスタイル。タイガーであってもより確実性の高いショットでグリーンを狙うのだ

タイガースタイル 4
どスライスでフェアウェイを死守

“どスライス”でフェアウェイを死守するのもタイガースタイルの特徴。「ティーショットは3Wなど、カット打ちだけでなく、番手を下げて安全策を講じるなど、頭脳的なプレースタイル」

タイガースタイル 5
徹底して上りのパットを残す

基本に忠実なタイガーのプレースタイルが如実に表れるのがグリーン上だ。「必ず上りにつけます。下りの2mより上りの10mのほうが入る確率が高いからです」

自分のプレースタイルを見つけよう!

プロや上級者は必ず持っているというプレースタイル。我々はどうすれば手に入れられるのか?

「まずは自分のゴルフを知ることです。ゴルファーによってドライバーやFWが得意な人もいれば、アイアンが得意な人もいます。そういった得意・不得意、あるいは長所・短所でもいいですが、要は自分のゴルフがどんなゴルフなのかを理解することです」

【自分を知る方法1】
スコアを崩したのはどんなホールだったのか

まずは、大叩きしたホールがどんなホールだったのかをメモしておこう。「パー3なのか、パー5なのか、池のあるホールなのか、ドッグレッグなのか、そういったデータを蓄積していくことで、どんなホールでスコアを崩しやすいかが明確になります」

【自分を知る方法2】
スコアを崩したときのミスの内容を把握

次に、大叩きしたホールでどんなミスをしたのかを振り返る。「アプローチのザックリなのか、ホームランなのか、ティーショットで右OBなのか、クラブ選択はどうだったのか。これにより、自分のミスの傾向が見えてきます」

まずはミスの傾向を知ることが、自分のプレースタイルを作るうえで重要なのだ。そして、ラウンドでは次の2つを実践してみよう。

打てないクラブはバッグから抜く

たとえば3Wが苦手、SWが苦手という場合は、思い切ってそのクラブをバッグから抜いてしまうのもひとつの方法だ。「バッグに入れてあると、ついつい使いたくなってしまうものです」

不得意なシチュエーションは徹底的に避ける

ミスの傾向を知り、そのミスを繰り返さないためには、ミスが起こりやすい状況を徹底的に避けるマネジメントをするのも手。「フェアウェイバンカーが苦手なら、必ず逆サイドを狙う、バンカーに絶対届かないクラブを使うなど、不得意なショットを要求される状況を徹底的に排除しましょう」

内藤コーチは長所を生かすより、短所をなくすほうが、プレースタイルが作りやすいと語る。

「ゴルフはいかにスコアを縮められるか、というゲームです。ダフリやスライスなど、技術的なスウィング改善はもちろん必要ですが、自分ができること&できないことを知ることが最も大事。それがわかれば、自分にとっての最善策が選択できます。その選択の繰り返しが自分なりのプレースタイルになっていくはずです」

【もうワンポイント】
ホームコースを持つとプレースタイルを作りやすい
「自分のゴルフを知るには、ホームコースを持つのが手っ取り早いです。メンバーじゃなくてもいいので同じコースに行くようにしましょう。そうすることでミスの傾向がより明確になります」

スコアに直結するドライバーを練習しよう

「アマチュアはドライバーの成否でスコアが大きく変わります。ある程度の飛距離(200Y)と幅で収まるくらいまで練習しましょう。それが自分のプレースタイル作りに役立つはずです」

週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より