【浦ゼミナール】Vol.29「パターは“下から支えて”持つ」
身長171㎝で420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。第29回は、パットの精度がグンと上がる「グリップ」の極意を教えてくれた。
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Tsukasa Kobayashi THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
ショルダーストロークの前提条件
――浦さんは、普段パターをクロスハンドで握っていますよね? 最近はツアー選手にもクロスハンドの人が多いですし、やっぱりクロスがいいんですか?
浦 いえ、握り方は何でもいいんです。私の場合はほとんど右手1本でストロークしている感覚で、その延長でフィーリングが出るのがクロスハンドだっただけ。順手でもクロスでもクローでも問題ありません。
むしろ大事なのは、パームグリップで下からパターを持つことです。
――浦さんは、ショットは飛ばすためにフィンガーグリップ、アプローチは飛ばさないためにパームグリップと言いますが、パッティングもアプローチ同様パームなんですね。
浦 そうです。狙ったところに正確な距離で打ちたいのに、パワーが出ちゃうフィンガーグリップは絶対ダメ。グリップが手のひらの親指側を横切る、徹底したパームグリップで握るのがポイントです。
――「下から」というのは?
浦 理由は2つあるんですが、1つはパターを下から支えてストロークしたいから。パターをライ角なりに真っすぐ動かすには、下から支えた状態がいいんです。下の写真のように、パターのグリップエンドをつまんで吊るしたところから、グリップの下側あたりを下から支えてライ角なりに持ち上げてみてください。本来、パターはこの状態でストロークしたい。そのためにはこの「下から支える」感覚が不可欠なんです。
――たしかに、こうやって振ってみると、静かに真っすぐ動きます。
浦 もう1つの理由は、グリップを下から持つと大きな筋肉を使ってストロークできるからです。パームで下からグリップを持ったら、両手の親指を放してストロークしてみてください。背中でクラブを支えている感じがわかると思います。この感覚があってはじめて本当の「ショルダーストローク」になる。指で上からギュッと握ってしまったら、肩も背中もないんです。緊張したときというのは、体の末端が動かなくなる。緊張したときに手が震えるのは、簡単に言えば末端部分の手が麻痺しているからです。緊張して背中が震えるって人はいないでしょ?(笑)。だから麻痺しやすい末端の手先ではなく、体幹の大きな筋肉でストロークできる人は、緊張した場面に強いんです。
「下からパーム」で持てば自然と大きな筋肉が使える
パターは下から支えるようにパームでグリップするのが正解。パームで持てば手首が余計な動きをしにくく、必要以上のエネルギーが生じることもない。また、下から持つことによって背中の大きな筋肉を使えて自然なショルダーストロークができる。親指に圧をかけて上から押しつけるように持ってしまうと背中の筋肉は使えない
中指と小指のつけ根がグリップの「肝」
浦 パターの握りに関しては、「パームで下から」に加えて、中指がものすごく大事。正確に言うと、両手の中指と小指のつけ根あたり、この4点でグリップの左右側面3カ所に均等にテンションをかけてグリップをホールドするんです。
――なんだか複雑ですね。意味がよくわかりません(笑)。
浦 順手の場合で説明すると、まず(1)左手の小指のつけ根をグリップエンドの左側面に当てます。次に(2)左手の中指をグリップ中ほどの右側面に当てる。この左中指の上に右手の小指のつけ根をかぶせるように当てたら、(3)右手の中指をグリップ下部の左側面に当てる。こうすると、グリップに左右からいい感じのテンションがかかってクラブを下からホールドできます。左の写真はシャフトの挿さっていないグリップ単体で見せているので、かかっているテンションがよくわかると思います。このテンションを維持したままストロークしたいんです。
Point
小指のつけ根と中指で左右から圧をかける
左手の小指つけ根をグリップエンド左側、左手中指と右手の小指つけ根を中央右側、右手中指を先寄りの左側に当てる。この3点を等間隔にし、同じ圧をかけるのが理想のグリップ。手のひらを放して、この3点だけでクラブを支えて素振りをしよう
――あんなに手のひらで握っているように見えて、実は「点」で支えているんですね。
浦 2点では安定しない。かといって4つ5つと点が増えると手先でいろいろなことができてしまう。この3点支持が最強なんです。クロスハンドは、左右が逆になるだけです。本来はこの3点間の距離を均等に、そしてかかる圧力も等圧にしたいんですが、手の大きさや骨格、ストロークのクセなどによってバラつきが生じます。それを左右の手の向きや間隔などによって微調整し、スムーズにストロークできる状態を見つけることが大事。細かく言えば、グリップエンドと中間点の間隔が広がったり中間点の圧が強くなるほどフォローが出やすく、中間点と先側の間隔が広がったり先端側の圧が強くなるとバックスウィングが上がりやすくなります。でもこれは「動きやすくするために広げる」よりも、「動きすぎてしまうのを抑えるために縮める」ことを目的に調節するほうが健全です。
――なるほど! こうやって握ってテンションを変えずにストロークすると、本当に手首や手先が「何もしない」感覚がわかります。というより、何もできない。
浦 そうなんです。だからパターのグリップ選びはものすごく大事。この3点のテンションが安定するグリップを見つければ、パッティングは劇的にレベルアップしますよ。私はパターって、グリップさえ合っていれば、ヘッドは何を使ってもいいと思っています。ぜひ自分が使いたいカッコいいものを、100%好み最優先で選んでほしい。プロとまったく同じものを使える唯一のクラブですからね。
月刊ゴルフダイジェスト2022年7月号より