【ティショット】面白いほどに球がつかまる! “スライス連発の人”必見。ルックアップのススメ
昨シーズンのドライビングディスタンスが平均253.41ヤードでツアー3位の飛ばし屋、松田鈴英プロ。練習で意図的に早めに顔を上げる「ルックアップ」をやっていたという。どんな目的があってやっているのか? そしてそのやり方とは!?
【黒宮幹人コーチ】(中)
くろみやみきひと。松田鈴英や吉野茜らを教えるプロコーチ。ジュニア時代には松山英樹、石川遼としのぎを削った
【松田鈴英プロ】(左)
まつだれい。1998年生まれ。滋賀県出身。黄金世代のひとりで、初優勝に期待がかかるツアー屈指の飛ばし屋
【松田直樹さん(父)】(右)
なぜ「ルックアップ」で球がつかまるの?
“事件”は、昨年の5月「中京テレビ・ブリヂストンレディス」の週に起きた。松田鈴英のエースドライバーが練習日に割れ、急遽、実戦投入前のニュードライバーを試合で使うことにしたが、スピン量が激減してしまったのだ。
「最初、応急処置でティアップを高くしたら、高さは出たけど左に飛んじゃって。フェースが閉じすぎるのを抑えるために、コーチの指示で『ルックアップ』し始めたんです」と、松田。
早めに顔を上げる意識があると、右わきが締まってリリースのタイミングが遅くなり、軌道がイン‐アウトになる効果がある。手元を振り続けられるので、急激なフェースターンは抑えられるが、球はつかまるということ。何だかいいことずくめのようだ。
軌道でボールをつかまえられる
イン‐ アウト軌道を作れれば、無理にフェースを閉じなくてもボールをつかまえられる(ドロー)。顔が下向きだと、軌道もフェースも左に向きやすいので、引っかけてしまう。
【ルックアップのいいところ①】
リリースが抑えられインから下りやすい
顔をずっと下に向けて振ると、体の回転が止まってリリースが早まり、クラブが外から下りる(写真右)。早めに顔を上げると、体が止まらずに回るのでイン‐アウトに振れる。
【ルックアップのいいところ②】
軸の意識が生まれ右の側屈が自然に入る
頭の位置をずらさずに顔だけ左に向けようとすると、右わき腹が縮む感覚があるはず。この右「側屈」を使うと、軸の傾きを変えずに打てる。
入射角も浅くなり球の高さも出せる
イン‐ アウト軌道だと入射角は自然にシャローになる。上から打つと打点が上にずれてスピンが減るが、それが起こらないので球筋が安定する。
【ルックアップのやり方①】
“左上”を向くイメージ
頭自体が上がるのは「ヘッドアップ」でダメな動き。頭の位置を変えずに、顔の向きだけを変えるのが「ルックアップ」だが、顔を向ける方向が重要で、多くの人が考える「目標方向に向ける」は、実は「右向きすぎる」のだ。
目標を向くと右側が落ちてしまう
【ルックアップのやり方①】
プレーンを意識すると左上に目を送る感じになる
スウィングプレーンの傾きのとおりに目線を送ってやれば、上体の傾きを保ったままスムーズに回転できる(写真上)。目標に目線を向けると、振る方向が縦になりすぎる(写真下)
【ルックアップのやり方②】
正解は切り返しの「肩の高さ」
黒宮コーチによれば、「切り返し後、左腕が地面と平行になるくらい」が、顔を上げはじめるベストタイミングだという。実際、松田の「2色マスク検証」画像も、きっちりそうなっている。
松田 自分では、切り返してすぐに顔を上げるイメージです。実際のところ顔の向きは変わりますけど頭は残すようにしています。
「頭を残せ」というのが従来のレッスンだが、現代スウィングでは「頭を残しすぎない」ことが大事と、黒宮コーチは言う。
黒宮 いまの道具は、フェースの過度な開閉を抑えつつ、ややインサイドからシャローな軌道で当てるのがいい。頭を残しすぎると、全部が逆になるので難しいんです。コンパクトなトップから、顔をパッと左上に向けると、イン‐アウトでシャローに振りやすいんです。手元も低いところに下りるので、ぜひ試してみてください。
松田鈴英のルックアップ打法(マスク付き)
色付きマスクなら一目瞭然肩の高さでルックアップ開始。
【ルックアップのやり方②】
頭の位置は変わらずに顔が傾くこと
顔を左に向けるのと同時に頭が左にずれると、軌道はアウト‐インになり、ヘッドが上から入ってしまう。
【ルックアップのやり方③】
頭も一緒に動くと右肩はかぶってくる
【ルックアップのやり方④】
肩のラインがボールの手前を指すのはNG
上体の前傾角度のとおりに頭を回す(顔の向きを変える)と、肩も背骨と直角に回る。インパクトで肩のラインの延長線上にボールがくるのが目安。
【ルックアップのやり方③】
しっかりクラブがタマる
結局、「ルックアップ」の最大の利点は何かというと、「ブレーキがかかるところが少なくなる」(黒宮コーチ)ことだ。
黒宮 野球のスウィングでバットを速く振ろうとしたら、誰だって顔をピッチャーのほうに向けながら振るはずです。顔をホームベースに向けたまま強振したら、あごに右肩がぶつかっちゃいますから。
松田 『ルックアップ』するほうが、軌道がイン‐アウトになるので、ボールはつかまります。だから、プッシュやスライスに悩んでいる人にはすごくいいと思います。顔の向きを意識すると、自然に足、腰、腕と順番どおりに下りてきやすくなるのも、おすすめポイントですよ。
本来は顔を向けたほうがヘッドも速く走る
野球のバッターのように水平にクラブを振ると、インパクト直前に顔はピッチャー方向を向く。ここで顔を止めると最後まで振り切れない。これはゴルフのスウィングでも同じだ。
PHOTO/Hiroaki Arihara
TEXT/Daisei Sugawara
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