Myゴルフダイジェスト

【ゴルフ野性塾】Vol.1710「アゲンストは芯捉えが優先」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

今日11月18日、木曜日。

現在時午後1時19分。
遠くの山が白く霞む。
南からの日射しでビルの壁と窓が白っぽくなっている。
昨日、理髪店に行った。
「髭、伸ばされてるんですか?」
「いいや、無精髭です」
「剃っていいんですか?」
「綺麗さっぱり剃って下さい。髪も7センチ短くして下さい」
首が隠れ、肩に届く長さになっていた。
理髪店の椅子に座るのはいつ以来か記憶になかった。
終えて外に出た。
頭が軽かった。
髪と髭だけでと思った。
「ワ~、綺麗になったわ。清潔だし、若返ってる~。やっぱり月に1度は行かないとネ」
女房殿の日々、コロナ前もコロナ中も変りなしだ。
女房殿、3度目のワクチン接種、どうしようかと考えてるが、私は射(う)つ。
今すぐにでも射って貰いたいが2度目の接種は6月30日だったので3度目は来年2月だ。
「悩むな、世の為に射て。お前程の元気さあれば後遺症関わり合いなしだろう」
「でも少し不安だわ」
「孫の為に打て」
「今少し考えさせて。それよりもアナタ、せっかちになってない? 私の体なんだから私の勝手にさせてよ」
「悩んでるからアドバイスしただけだ。それを強要と受け止めるのは被害妄想の気(け)ありだな」
「何、言ってるんですか‼ アナタは眠り過ぎなんだから少し外を歩いてきたら? 健康第一ですよ。そのお腹、正代か貴景勝みたいッ」
「お前の一言、俺のストレス」
「分った。もう何も言いません」
女房殿、自分の部屋に入って2時間、まだ出て来ない。
腹、減った。
喧嘩すりゃ食事の時間が変るって平和じゃあります。
窓の外、白っぽい青空。
腹、減ったなァ。
面倒臭いからこのまま寝ちまうか。
幸い、今日も体調良好。

首筋を膨らませ8分の力で打て。 

風の日のゴルフが苦手です。球筋はスライス気味です。アゲンストになると極端に球が曲がり、距離が大きく落ちます。風に合わせてドローとフェードを打ち分ける技術はありません。どうすればドライバーでもアイアンでも、風に翻弄されない強い球を打てるでしょうか。(宮城県・西田俊敬・45歳・ゴルフ歴12年・平均スコア98)


飛距離を出すのはインパクトの力と思う人は多い。
だからアゲンストの時、その振りに力を入れる人は多い。
アゲンストの風強き時程、芯捉えを優先すべきなのに、芯外しの確率高き、インパクトへ向っての目一杯の振りをされる方は多い。
目一杯の力と8分の力、どれ程の飛距離差、生じるかと申せばそれぞれの芯捉えのスウィングで15ヤードだ。
15ヤードなんて然さしたる距離ではない。
クラブ2本の違いである。

目一杯の力で打つ時、首筋は固まる。
固まってもインパクト直前のタイミング、ズレなきゃいいが、上下、左右、前後のズレ、生じ易いのが固着である。
8分の振り、体のどこを、そして感覚を目安とすればいいかだが、利き腕の力の入れ様を目安とする方は多い。
だが、ダウンスウィングで利き腕の力、如何に強めたとてクラブヘッドのスピードに然したる変化は生じず、腕の力8分と意識して振ったとて緩みたるスウィングとなる事は多い。
故に腕の力を振りの目安とするは勧められない。

首筋を目安とするべきだ。
ダウンスウィングで首筋への力の入れ様を意識すればよいのです。
力10分の時は目一杯、首筋に力を入れ首筋を膨らます打ち方、力9分の時は力10分よりは少ない膨らませ様、そして、飛距離よりも方向性優先の時は力10分の時の3割減の膨らませ様。
これで腕頼りの力の入れ様よりも確率高き力の入れ方出来ると思うのです。
私は塾生に首で打てと教えた。
練習の時はどんな打ち方、どんな感覚、どんなスウィングでも上手く打てる。
しかし、プレッシャー生じる試合の時、利き腕頼り、腕感覚頼りでは練習の時と異なるスウィングになって行く。
練習時もラウンド時も変らぬ目安が要る。
それが己のスウィングを生み、練習時と同じ球筋、球質、飛距離、方向が生れるのだ、と。
己のスウィング、己の飛距離、己の方向は首筋の膨らみで作れ。それがプレッシャーに対しての強き振りを生む、と教えた。
だが、子供達にとっては難しい教えであったと思う。
塾生は皆、練習しろとしか教わっていませんと言う。
塾生は皆、私のその日、最後の言葉だけを記憶した。
向い風に対しては首筋で打て。その為には練習しろ。
この最後の言葉だけが塾生の記憶に残った。
塾長から言われた事は練習しろだけです、と塾生は言った。
何事に於ても終り善ければ総て善し、終りが肝心、今日の終りが明日を生むと申す。
塾生は私のその日の言葉の最後を私の言葉と記憶した。
そして他の言葉は忘れていた。
大手前大学の学生でもそうだ。
指導の終りの言葉だけがその日、その時、教わりし事だった。

私は思う。
説教も指導も3分で充分、と。
長い説教聞いてると、どこかで面倒の思いは生じよう。
長い説教に付き合うのは苦痛であるが故にだ。
指導然り。
幾つもの修正ポイント指摘されても出来るもんじゃない。
人間の体の動き、千手観音様じゃない。
指摘されて出来るのは、そして記憶できるのは一つか二つ迄だ。
私の塾生指導、週に一度の合同練習、一つの指摘だけを基本とした。
塾生以外の子供が私の指導を求めてやって来たが、一つの指摘に不満を持った。
本人は不満持たなかったが付き添う親が不満持った。
もっと教えて下さい。折角遠くから来たのですから、と言って来た。
こりゃ駄目だなと思った。
親の欲、親の常識が子を潰すと思った。
子の成長を願うのなら月に1度、一つの指摘を受ける為に通うべきなのに、1年分、一気の指摘得ようとする性急さと欲。
塾開塾した頃は塾生以外の指導も塾合同練習の中で為したが、1年で断った。
熊本も札幌も福岡も東海も神戸も船橋にも塾生以外の子と親が来たが、皆、性急だった。
欲は大きくもなく、小さくもなく、技量に適す欲あれば子は伸びて行く。

私は今迄、1度もレッスンフィー貰った事がない。
頼まれての指導、謝礼は断った。
私のレッスンは3分あれば十分だった。
一つの指摘、その後の癖矯正か、短所修正か、長所伸ばしの指導、そして打って貰う球の数10球、これで変化は起きた。
そんなんで僕のゴルフ変るのですか、そんな簡単な事で、と指導受けた方は言った。
どれ程、長いレッスンを、どれ程、難しいレッスンを受けて来たのかと思った。
レッスンは易しい程、簡単に出来るもの程、質高きものとの認識、欠けていると思った。
塾出身者96名がプロテストに通っている。
シード1度でも得た者は12名。ただ、今年、シード得る者2名いそうなので14名となる筈だ。
長い時間は要らぬ。
月に1度か2度、3分の指導で変化は起き、変化の先に進化在りである。
変化しなきゃ進化は訪れぬ。
貴兄は首筋を膨らます練習をせよ。利き腕で風に向うスウィングを捨て、首筋で己の力の入れ様を作って行け。
それだけで変るものがある。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年12月7日号より