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ミスした後「スウィング」を反省していませんか? スコアが縮まる“戦略”の立て方

「ゴルフにミスはつきもの」とはよく言われること。ナイスショットだけでラウンドを終えることはできない。問題は、ミスした後にどうするか。スコアメイクにはそこが重要なのだ

PHOTO/Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa

解説/二見悠嗣

上智大学で心理学を学び、卒業後の23歳からゴルフを始めて脱サラしPGAティーチングプロ資格を取得した異色プロ。メンタル面を重視したコーチングを得意とする

スウィングを反省しても
スコアはよくならない

ゴルフは“ミスのゲーム”と言われる。自然を相手にするゲームだけに運にも左右されるし、風やライ、傾斜などを考えると、まったく同じ状況で打つことは2度とないことも、ミスを増やす一因だろう。

「ゴルフにミスはつきものだからこそ、ミスした後の思考が重要なんです」というのは、心理学を学び、メンタルの指導を得意とする二見悠嗣プロだ。

「ラウンド中にミスをしたときに、多くのアマチュアゴルファーは、スウィングの反省をします。しかし、これはあまり意味がありません。というのも、スウィングを反省したとしても、ラウンド中の短時間でスウィングを大きく変えることは難しいからです。ミスする度に、スウィングを反省していると、1日中スウィングをいじりながらラウンドが終わってしまう。これではスコアメイクどころではないですよね」

もっとトップを大きく、あるいは体重移動を意識しよう……などと考えていると、毎ショット、スウィングをマイナーチェンジしているようなもので、これではどんなショットが出るか、実際に打ってみるまでわからない“出たとこ勝負”のゴルフになってしまう。

「まずは、ラウンド中に完璧なショットを求めるのは止めましょう。今年のマスターズで優勝した松山英樹選手でさえも、1日のラウンドのなかで納得のいくショットは2~3回しかないと語っています。世界のトッププロでさえ、ほとんどが納得のいかないショットなのだから、アマチュアであればミスを想定したゴルフをするべきだし、自分ができることでゴルフを組み立てるのがマネジメントです。つまり、ミスした後に反省するべきはスウィングではなく、自分が立てた“戦略”なんです。スウィングはすぐには変えられませんが、戦略はすぐに変更できますから」と二見プロは言う。


たとえば、朝イチのティーショット。漠然とドライバーを持って打った球がスライスして、右のラフへ。多くのゴルファーは「またスライスだ」とスウィングを反省する。もっとインサイドから下ろさないと……これが“スウィングいじり”の引き金になるが、これでは練習場で打っているときと変わらない。しかし、打つ前に「朝イチで体が回らないからスライスが出ることを想定して、フェアウェイの左サイドを狙って打つ。できればフェアウェイがいいがラフでも打てるところならOK」という戦略を立てて打てば、右のラフに打ったとしても想定内の結果なので、ミスとは感じない。さらに、「思った以上にスライスしたので、今度はフェアウェイの左端を狙ってみよう」と戦略を変えればいいだけで、すぐに実行できる。

「つまり問題は、多くのアマチュアゴルファーが戦略を持たずにプレーしていることなんです」

ミスした後に反省すべきは“戦略”

●持った番手は正しかったか
●狙いはそこでよかったのか
戦略はすぐに変えることができる

戦略を立てるには
「OODAループ」がオススメ

「ミスした後に反省するべきは、スウィングではなく“戦略”」と言う二見プロ。しかし、多くのゴルファーが戦略を立てていないと指摘する。戦略を持たずにプレーすれば、結果として反省するのはスウィングになってしまうと言うのだ。

「戦略を立てよう、マネジメントしようと言うと、どうせアマチュアは思った通りには打てないのだから、戦略を立てても意味がないと考えているゴルファーは多いですが、これは大きな間違いです」

思った通りに打てるのであれば、ピンを目指してプレーすればいいだけで、むしろ戦略は必要ないかもしれない。思った通りに打てないからこそ、リスクヘッジを含めて戦略の重要性は上がるのだ。

「戦略を立てるには、自分の能力を冷静に判断することが必要になります。残り200ヤードを前方の枝の下を抜けて大きくスライスをかけ、ベタピンに寄せるというような戦略を立てるアマチュアはいないでしょう。自分の技量を考えたうえで、できることをやるのがマネジメントです」

では、具体的にどうやって戦略を立てればいいのか。二見プロに聞いてみると、ビジネスでも取り入れられている、ある方法を教えてくれた。

「OODA(ウーダ)ループという方法です。これは、元々は軍事行動における意志決定プロセスとして提唱されていたものが、ビジネスでも広まったメソッドです。刻々と変化する状況での迅速な意思決定のためのもので、ゴルフにも応用できるんです」

OODAループは4つのプロセスで構成されており、それぞれの英語の頭文字から命名されている。

最初のプロセスは「Observe」で、意味は「観察」だ。「戦略を立てる最初のプロセスはライや傾斜、風など、状況を注意深く観察することです」

2つ目のプロセスは「Orient」で、「方向付け」だ。「観察した情報をもとに、自分の技量を冷静に考慮したうえで、攻めるのか、守るのか、状況を判断します」

3つ目が「Decide」で、「決断」だ。「状況を判断したうえで、選択肢のなかから、取るべきターゲットや使用する番手を決断します」

最後が「Act」、「実行」だ。「決断したことを実際に行動に移します」

これが「OODAループ」によるゴルフの戦略の立て方だが、最近ではすっかり定着したビジネスの手法、「PDCAサイクル」を思い浮かべる人も多いだろう。この両者の違いは、PDCAが業務改善などに適しているのに対して、OODAは変化の激しい状況での意思決定に向いており、ゴルフにおいてはOODAのほうが有効と二見プロは言う。

Observe(観察)
ライ、風、傾斜など状況を観察する

戦略を立てる最初のプロセスは自分のボールの状況を観察することだ。ライや傾斜、風などをしっかり確認し、状況を把握しよう

Orient(方向付け)
自分の技量を含めて状況を判断する

次のプロセスは「観察」した材料をもとにして、安全に行くか、あるいは攻めるのか、自分の技量を含めたうえで状況判断すること

Decide(決断)
選択肢のなかから行動を決定する

戦略の「方向付け」が決まったら、次にやるべきことは様々な選択肢のなかからターゲットや使用番手、球筋などを決定すること

Act(実行)
決断した内容を実際に行動に移す

「観察」「方向付け」「決断」のプロセスを経たら、最後はそれを実際に行動に移す。毎ショット、このプロセスを繰り返す

「戦略を立てずにプレーするゴルファーは、ティーショットはドライバー、2打目以降は残り距離で自動的に番手を選択し、つねに最高のナイスショットを目指してプレーする。でも実際には最高のナイスショットが出ることは極めて稀なので、ほとんどのショットを“ミス”とラベリングする。もっといいショットを打とうとスウィングを反省し、いじり出すという負のスパイラルになる。これではスコアはよくなりません。OODAループで戦略を立てるようになれば、たとえナイスショットではなくても想定内であればミスではなくなるので、気持ちよくプレーできます」

惚れぼれするようなナイスショットを目指すよりも、いかにミスの幅を抑えるかという、より実戦的な練習に時間を費やすことのほうが戦略を立てるためには重要なことがわかってくるはずだ。

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月23日号より