【待ってろ、ウエハラ!】Vol.10 守りにいくからミスが出る。アプローチだって“攻め”でいこう!
ILLUST/Koki Hashimoto TEXT/SHOTANOW
PHOTO/ARAKISHIN THANKS/六甲国際パブリックコース
ラグビー元日本代表の大畑大介が、高校の同級生で元メジャーリーガーの上原浩治をゴルフで打ち負かすべく、精鋭コーチ陣に教えを請う本連載。第10回からは、メジャーチャンプコーチ青木翔がフィールドをグリーン周りに移してアプローチの本気レッスン!
ありがたいことに現役を引退してからも、たびたびラグビーをする機会をいただいてる。毎回思うのが、教えるのって難しいってこと。現役時代から自分を実験台にあらゆることを試してきたから、たいていの課題に対する答えは分かるけど、それをそのまま教えたらあかん。考えさせて本人が気づかないと、身につかんからね。教えたくなる気持ちをこらえるのが大事。こんなことを担当者に話したら「ピッタリのコーチいますよ!」って言われて、来てくれるのが青木翔コーチって聞いてビビッたわ。だってメジャーチャンピオンを育てたコーチでしょ? 打ち方だけじゃなく、考え方から正していくタイプって聞いとる。これはガチでオレを上手くしにきてるな、週ゴル。でも、そういうの嫌いじゃないわ。待ってろ上原!
チマチマやるのは性に合わん
とにかくゴルフは前に前に、というのが信条の大畑氏。飛ばしやグリーンを狙うショットの練習をすさまじい勢いでこなしていったが、アプローチには一切興味がないという。
大畑 僕なんかのために、わざわざすごい人に来てもらって、ありがたい。
青木 いやいや、僕は選手の背中を押すだけですから。すごいのは結果を出している選手ですよ。
大畑 結果が出たら選手の手柄、失敗したら教えるほうの責任。コーチの鏡や。
青木 なんか僕、プレッシャーかけられてます?
大畑 そりゃそうですよ。世界を知るコーチに教えてもらえるなんて、期待しかないですよ!
青木 ウワサには聞いてましたが、圧すごい(笑)。早速ですが、まずはアプローチを。
大畑 短い距離って性に合わない。チマチマしてる感じがして。ドライバーみたいにガツーンといきたいんやけど。
青木 ま、まぁ。
大畑 大事なのはわかってるんですよ。300ヤードもカップに近づける15ヤードも、同じ1打とはいうけど。
青木 では、まずは10ヤードくらいのアプローチを打ってみてください。
ショットみたいなアドレス
青木に促され、渋々ウェッジを手にする大畑氏。5球くらい打つも、トップやザックリが出て、なかなかカップに寄せることはできない。
青木 なるほど。打ち方からも後ろ向きな感じが伝わってきますね……。よし、僕が大畑さんに攻めるアプローチをお教えしましょう!
大畑 攻めるって、アプローチ自体がグリーンを外れたボールのリカバリーやから、ミスをカバーして傷口を広げないようにするためのもんでしょ。
青木 その考えは今日で捨ててください。グリーンを外しても貪欲にカップインを狙うアプローチもあるんです。
大畑 カップに寄せるとか、パーを拾うみたいに考えないってこと? なんかグイグイいく感じがしていいね。
青木 大畑さんは、力感を弱める打ち方で距離を調節しようとしています。つまり考え方が引き算。アドレスなんて、80ヤード打てそうなくらい大きい。
大畑 言われてみれば、距離によって構えを変えるなんてしたことないな。アプローチはとにかく弱めて打つことくらいしか意識してなかったわ。
青木 ボールが飛ばないような小さな構えを作れば、力を弱める必要はありません。その構えのなかで、ドライバーみたいにしっかり打てばいいんです。
大畑 まさに攻めのアプローチやな!
早速スタンスを狭めてクラブを短く持ち、アドレスを小さくする大畑氏。その攻めの構えから放たれた打球は、スピンの利いたピッチショットに!
青木 え!? アドレスを小さくする具体的なアドバイスをしようと思ってたのに。なんという勘の鋭さ……。
大畑 一発で飲み込んでしまうとは、さすがオレやな(笑)。
青木 いま打つときに力感を弱めるような意識はありました?
大畑 まったくない。もう入れることだけしか考えてなかったです。
青木 OKです。自分のスタイルを崩して、小手先の技術で置きにいこうとしても、18ホール持ちませんから。
巧みに、かつ素早く大畑氏の懐に入り込み、苦手意識を払拭した青木コーチ。次回さらなるレベルアップを図る。
「選手の失敗はコーチの責任な」と言い放つ大畑と「困ったなー」と言いつつノリノリの青木。ここに新コンビ誕生!
【オオハタ’s MEMO】
アプローチは守りじゃない
攻めの一手なんや!
令和の武蔵になる!
オオハタダイスケ
大畑大介。1975年11月11日生まれ。ラグビー元日本代表、伝説のウイング。大阪の東海大仰星高で上原浩治と同クラス。ゴルフのベストスコアは91だが「本気を出せば上原に勝てる」と豪語するスーパーメンタル&フィジカルでゴルフ修行へ
迎え撃つは
ウエハラコウジ
上原浩治。1975年4月3日生まれ。読売巨人軍の元エースで、メジャーリーグでも活躍したレジェンド。マウンド上の緊張感を今はコースで味わうのが楽しいという根っからのアスリート気質を持つエンジョイかつ本気ゴルファー。同窓生・大畑の挑戦を待つ
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より