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平均280ヤード超えも! 世界の飛ばし女子に学ぶ飛距離アップの体づかい【動画あり】

閉幕から1カ月が経ち、いまだ興奮冷めやらぬ東京五輪。なかでも稲見萌寧の銀メダル獲得で大いに盛り上がった女子ゴルフでは、世界の猛者たちが300Yに迫る驚きの飛距離を連発。彼女たちはいったいなぜあれほど飛ばせるのか。世界を知る青木翔コーチにその秘密を解説してもらった!

PHOTO/KJR、Tadashi Anezaki THANKS/パインレークGC

解説/青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。全英女子オープンで渋野日向子をメジャー優勝へ導き、亀代順哉や三ヶ島かな、野澤真央などツアープロをはじめ、全国トップレベルのジュニアを育成するカリスマコーチ。2020レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

飛ばせる女子の秘密1
深いトップ

USLPGAのドライビングディスタンスでトップ10(274ヤード以上)に入る選手が9名も出場していた東京五輪。

米女子ツアーの現場で彼女たちのスウィングを見てきた青木翔コーチに話を聞くと、彼女たちの飛びの秘密は大きく分けて3つあるという。その1つ目が“トップでの捻転の深さ”だ。

「レキシー・トンプソンの肩甲骨周りを見てください。左肩の皮膚は伸びて、右肩甲骨が背骨側に寄ることでシワができていますよね。これは肩甲骨の可動域が広いことを意味していますが、体の捻転もないと作ることはできません。すなわち、パワーの溜まったトップが作れている証拠です。これを可能にしているのが、テークバックでの重心移動を右足かかとと右尻で受け止めること。これにより、体の捻転でクラブを振り上げられ、手打ちにならないので、溜まったパワーを効率よくボールに伝えられるのです」


Point 1
右尻と右かかとで体重を受け止める

かつてはトップで右腰や右尻を動かさないように壁を作ってパワーを溜めるというレッスンがあったが、それでは上半身と下半身の捻転差が生まれないと青木コーチ。右足かかとに重心を乗せ、右尻を後方に突き出すイメージで体を回転する

Point 2
テークバックは右足首からネジり上げる

体をねじり上げるとき、右足首から上半身に向かって体を回転していくと、トップで肩甲骨がしっかり入った深くゆるみのないトップが作れる。肩から動くと下半身が止まり上下の捻転差が生まれない

レキシー・トンプソンの1Wスウィング

飛ばせる女子の秘密2
左股関節で体重を受け止め高速回転

マリア・ファッシ(メキシコ代表) 平均飛距離: 278Y
1998年生まれの23歳。アーカンソー大学時代に数々のタイトルを獲得して2019年プロ転向。体幹の強さを生かした飛距離を武器にメジャーを狙える逸材として注目されている

青木コーチが飛びの秘密として挙げた2つ目は、切り返しからの回転力だ。その動きがとくに優れているのが、メキシコ代表のマリア・ファッシだという。

「よく切り返しで左足を踏み込む、という言い方をしますが、彼女を見ていると、左股関節に重心を乗せることで、“左脚全体”を使って踏み込んでいるように見えるのです。左足よりも、左脚全体という太い幹のほうが、トップで溜めたパワーを逃がすことなく受け止められるので、強い回転力に変換され飛距離につながるのです」

以前、彼女自身に飛距離の秘密について聞いたときも「腹筋や太ももに力を入れて回転スピードを上げている」と、青木コーチと同じことを話していた。

Point 1
切り返しで左股関節に重心を乗せる

切り返しでの体重移動を左股関節で受け止める。これにより、左脚全体に重心を乗せる感覚が強く出やすくなるという

Point 2
左尻でクラブを引っぱり下ろす

左尻を背面側へ動かしクラブを引っぱり下ろす。これにより、前傾角度を保ったままインパクトでき、さらに手元も浮かないため、強いインパクトが可能になり飛距離につながるという

マリア・ファッシの1Wスウィング

飛ばせる女子の秘密3
ヘッドと右足が引っ張り合う

ビアンカ・パグダンガナン(フィリピン代表) 平均飛距離: 285Y
1997年生まれの23歳。アリゾナ州立大学を卒業後、2020年にプロ転向。まだ目立った成績はないが、米女子ツアーのドライビングディスタンス2位と、最も注目を集めている選手のひとり

飛ぶ秘密の3つ目は、フォローでの「ヘッドと右足の引っぱり合い」だという。

「飛ぶ選手は、インパクトまでに溜めたパワーをすべてボールにぶつけ、フォローでさらにヘッドを加速させることができています。それを可能にしているのが、グリップエンド側をしっかり握ることで運動エネルギーの支点を作ること。もうひとつは、左脚全体で踏み込んだあとにジャンプするのではなく、左足首からねじり上げる点。これにより上体が起き上がらず、右足が地面を踏ん張る動きが出てくるので、フォローでヘッドと右足の引っぱり合いが起こり、ヘッドを加速させることができるのです」

Point 1
グリップエンド側をしっかり握る

フォローでヘッドを走らせるには、グリップエンド側の左手の3本の指をしっかり握っておくことが重要。これにより力点(ヘッド)に対する支点ができるため、ヘッドを走らせやすくなる

Point 2
左足は伸ばさず足首からねじり上げる

ダウンで左脚全体に踏み込んだあと、インパクトで上方へ飛ぶのではなく、左足首からねじり上げるように回転すると、フォローまで前傾角度が保たれ、ヘッドと右足が引き合いフォローでさらに加速する

ビアンカ・パグダンガナンの1Wスウィング

飛距離アップの練習法
素振りに勝るものはなし!

スウィングの構造を知ることで、飛距離アップにつながるとはいうが、本当に飛ばしたいなら絶対にやらないといけないことがあると青木コーチは言う。それが“素振り”だ。

「飛ばすには、結局のところクラブをどれだけ速く振れるかが重要です。だから振る練習、つまり“素振り”は地味ですが最強の飛ばしの練習法なんです。特に連続素振りは効果的です。かなり疲れますが、ヘッドを走らせる脱力のタイミングとヘッドの加速感を習得するには最適です。飛距離アップのためにぜひ試してください」

Drill 1
連続素振り

休みなく連続して20回ほど振り続けると、無駄な力が抜け、ヘッドを走らせる感覚がつかめてくる

Drill 2
切り返しドリル

トップの姿勢からハーフウェイダウンまでを2度繰り返し、最後にスウィング。左股関節に体重を乗せながら踏み込んでいく感覚をつかむ

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月28日号より

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