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体重移動は使っても「重心」は動かさない! ポイントは「足裏リード」

TEXT/Kenji Oba
PHOTO/Tsukasa Kobayashi、Blue Sky Photos、Tadashi Anezaki
THANKS/アコーディア・ガーデン志津

体重移動はレッスンの定番ワード。だが、その中身を理解している人はどれくらいいるだろうか?「体重移動と重心移動は別物。多くのアマチュアはそれを混同している」とスウィング理論に詳しいプロは語る。さて、その真意とは?

解説/横田英治

ツアー経験に基づく、理論的なアドバイスには定評がある。ドライバーからパターまで試打経験も豊富で最新のスウィング理論にも精通。女子プロの岸部桃子を指導している

体重移動はOK
重心移動はNG

体重移動はゴルフに限らず、どんなスポーツにも不可欠なもの。ですが、体重移動はしても重心移動はダメなんです」とはスウィング理論に詳しい横田英治プロだ。

野球のピッチングで考えてみよう。右投げの投手が振りかぶる。右足1本で立っているときの体重比は右足100:左足0。だが、重心がどこにあるかといえば、「センターです。右足体重であっても右足に重心があるわけではありません。なぜなら右に重心移動してしまえばバランスを失い、転んでしまうからです。アマチュアは、体重移動と重心移動を同じだと思っている人が多いのですが、実は別物なのです」

重心はまったく移動しないわけではない。たとえば陸上競技の100m走は転びそうになるようにスタートする。それがスタートダッシュにつながるわけだが、重心をわざと移動させ“転びそうになる力”を推進力に変えているのだ。

「野球のバッティングやハンマー投げなど、道具を使うスポーツでは、道具の重さによる遠心力に対してバランスを取る必要があり、そこに重心キープ(コントロール)が生まれます。ゴルフのスウィングも同じなんです。積極的に体重を移動させながら、重心を体のセンターに保つことが、ゴルフには求められるのです」

横田プロは、ゴルフの基本をこう定義する。

「コースの中でいかにバランスを崩さず、クラブを振れるか。そしていかに効率よく、ボールにエネルギーを伝えられるか、です」

バランスを崩さないスウィング。そのために必要なのが重心をセンターにキープすることだ。横田プロは「体重移動・重心キープ」が大前提だと語る。

「重心は“軸”と言い換えてもいいです。コマが高速、かつバランスよく回り続けるのは、軸である芯棒、つまり重心がセンターにあるからです。ところが多くのアマチュアは、体重移動によって重心まで移動させ、バランスを崩してしまっている。それは芯棒が傾いた(あるいはズレた)状態に近く、バランスが保てず、効率よく回転できないのです」

芯棒が傾けばコマは倒れる。それと同じでスウィングでもバランスが崩れれば、ボールに当てることさえ難しくなる。まずは重心キープの意識が大切なのだ。

重心は必ずセンターをキープ

体重移動を大きく使うプロでも、重心はほぼセンターにキープされていることは、科学的に証明されている。重心がブレれば、バランスよくクラブを振れないからだ。スウィングはコマと同じなのだ

重心がブレるのは
上半身が動きすぎるから

プロや上級者のようにバランスよくクラブを振れないアマチュア。その原因は重心のブレにあるのだが、具体的な違いはなにか?

「プロとアマチュアでは、上半身と下半身の動きが真逆なんです。プロは上半身が静かで下半身がよく動きますが、アマチュアは下半身が静かで上半身は大暴れ」と横田プロ。アマチュアに多い、いわゆる手打ちは、上半身が動きすぎる結果なのだ。

「手打ちはスウェイや突っ込みの原因になりますが、重心がセンターから外れた状態なんです。これではバランスよく振ることはできません。逆に下半身はどれ
だけ動いても重心がブレないんです」

横田プロによれば、アマチュアが手打ちになる原因には、3つの勘違いがあるからだという。(1)下半身はどっしり安定させて構えよう(2)クラブを高く上げよう(3)下半身でクラブを下ろそう。

どれもいいスウィングの必須条件のような気もするが……。

「どっしり構える意識だと下半身が動かなくなり、手で上げることしかできなくなります。クラブを高く上げるのもトップが深くなれば、飛ぶような気がするだけで、実際には手の動きを促進させてしまう。最後の下半身でクラブを下ろすのも一見いいことのように思えますが、手で上げたクラブを下半身で下ろそうとすれば、間違いなく振り遅れるだけです」

実は下半身が動けば、手はほとんど動かさずに済むという。それを実証できるのが、ペットボトルを持ち上げる実験だ。

「地面に置いたペットボトルを手で持ち上げると、再び同じ場所に戻すには手で下ろすしかありません。しかし足を使えば、上げるときも下ろすときも、ほとんど手は使わなくて済みます」

スウィングは動き始めですべてが決まってしまう。手で上げれば手で下ろすしかない。重心をキープできない理由がここにあるのだ。

手打ちを助長する3つの勘違い

【勘違い1】
下半身をどっしり構える

下半身をどっしり構える意識を持つと、下半身がロックされてしまう。下半身が固定されれば、手でクラブを操作するしかなく、手打ちを助長することになる

【勘違い2】
クラブを高く上げようとする

クラブを高く上げ、深いトップにすれば飛ぶ。こういう意識が手の動きを促進させてしまい、上半身が動きすぎる手打ちを加速させるのだ。この重心のブレがスウェイや突っ込みの原因になる

【勘違い3】
下半身でクラブを下ろす

手で上げたクラブを下半身で下ろそうとすれば、間違いなく振り遅れる。早く腰が開き、右肩が落ち、フェースが開いて当たる。これでは飛ばないし、曲がるだけだ

ひざでも股関節でもない。
地面に接する足裏を動かそう

「下半身はエンジン(パワー)、上半身はハンドル(コントロール)。このイメージが大事です」と横田プロ。下半身が動けば上半身は静か(安定)になり、これが重心キープにつながるのだ。では、下半身はどう使うのか?

「下半身で重要なのが足裏の意識です。目をつぶって片足立ちをするとわかりますが、足裏がせわしなく動くはず。これは重心のブレを足裏で感じているからです」

足使いのお手本はジョーダン・スピース

フォローで左足がめくれるほど下半身をダイナミックに使いつつ、上半身の動きは静か。このスピースの足使いがお手本だ

足(下半身)を使えというレッスンは多いが、ひざや股関節などの意識は不要で、「足裏だけですべてが上手くいく」と横田プロは断言する。なぜなら足裏だけが唯一、地面に接している部位で、動く順番も足裏からが最も効率がいいからなのだ、と言い切る。

では、足裏はどう使えばいいのだろう? その感覚を身につけるため、クラブを片手で胸の前に持ち、足裏だけを使って左右に揺すってみよう。するとクラブは肩の高さくらいまでラクに上がるはずだ。これがクラブを振るときの足裏の使い方そのもので、足裏リードのスウィングだという。

「足裏でクラブを持ち上げたら、トップからの切り返しでは重力に任せてクラブを落とし、ターゲット方向にクラブを投げる意識でフィニッシュです」

足裏の動きだけでクラブを振ってみよう

片手でクラブをつまむように持ち、グリップエンドを胸の前にセット。その状態で足裏だけを動かしてクラブを左右に揺らしてみる。テークバック、フォローとも肩の高さまでラクに上がるはずだ

【Step 1】足裏でクラブを上げる

ひざでも股関節でもなく、足裏でクラブを上げる。足裏リードのスウィングは、すべて始動で決まる。足裏で上げる意識をつかむには、目をつぶってやるのも有効

【Step 2】重力に任せてクラブを落とす

切り返しは重力に任せてクラブを落とす。足裏でクラブが上がれば、上半身は静か(脱力状態)なのでクラブは勝手に落下していく

【Step 3】ターゲットにクラブを放り投げる

インパクトからフォローでは、重力によって落ちたクラブをターゲット方向に投げるイメージをもとう。足裏で地面を蹴ることで、落下の力を前に押す力に変換できる

横田プロによれば、足裏リードのスウィングには、3つのポイントがあるという。

まずは母趾球に乗ること。これにより腕が真下に下がり、自然な前傾姿勢が作り出せる。腕が鉛直に垂れ下がることで、余計な力みが防げる(脱力を生かせる)という。ふたつめは腰高の構えだ。ひざを曲げすぎて低い姿勢になると、股関節やひざの動きが制限されるため、足裏が自由に動かせなくなる。そして最後が両ひじを胸に乗せる意識。これが腕と体の一体化を生み、腕や手のムダな動きを防ぐことにつながる。

「クラブを振るスウィングは、振り子の動きがベースです。振り子は軸(重心)が安定しているほど、小さい力で動かせます。足はいくら使っても(体重移動しても)重心はブレません。この感覚を早くつかんでほしいですね」と横田プロは締めくくった。

「足裏リード」のポイント

【POINT 1】
母指球に乗り腰高に構える

母趾球に乗ることで、腕が真下に垂れ下がり、自然な前傾が生まれる。また、ひざを曲げすぎると下半身の動きが制限されるため、腰高に構えるようにする

【POINT 2】
両ひじを胸に乗せる

両ひじを胸に乗せる意識があれば、腕と体が一体化しやすくなる。腕と体が一体になると足裏リードで生まれた動きが上半身に伝わりやすい

足裏が使えるようになるドリル

【Drill 1
ステップ打ち

ボールから離れたところに立ち、右足を踏んでテークバックし、左足を踏み込んでインパクト。足を使ってクラブを上げ下げする動きを体感できる

【Drill 2】
かかと浮かせ打ち

練習場のマットの端に立ち、かかとを浮かせて立つ。母趾球に乗らざるを得ない状態で打つことでその感覚をつかもう

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月7日号より