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【イザワの法則】Vol.10 衰え知らずのミケルソン。全盛期を知る伊澤が語る凄さとは?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura
THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

世界も認めた美スウィンガー・伊澤利光が、ゴルフで大切にしていることを語る連載「イザワの法則」。今回は、今年の全米プロでメジャー最年長優勝を達成した、2歳年下のフィル・ミケルソンの凄さについて分析する。

前回のお話はこちら

ショートゲームは
PGAツアーでも間違いなく一級品

2021年は、メジャーでいろいろなことが起きる年のようですね。でも、個人的には(フィル)ミケルソンが、全米プロに勝ったことが、いちばんインパクトがありました。正直、松山(英樹)くんのマスターズ優勝より、衝撃が大きかったかもしれませんね。ミケルソンは、今シーズンの戦いぶりを見ていても、取り立てて調子がいいというわけでもなかったですし、相変わらずドライバーは曲がってましたから、全米プロのときも「4日間はもたないだろう」と思って見ていました。なんなら、最終日の途中まで、「そろそろ失速するだろう」と思っていたくらいです。それが、最後まで持ちこたえて、50歳で優勝(ミケルソンは全米プロの後、6月16日に51歳の誕生日を迎えた)、メジャー最年長優勝記録を更新するとは……。ほぼ同年代の私としては、「よくやった」としかいいようのない出来事でした。

ミケルソンがなぜ、50歳でメジャーチャンピオンになれたのか、私なりに分析してみると、やはりアプローチとパットの上手さがいちばんの要因だと思います。ミケルソンが全盛期だった20代から30代くらいの頃、一緒にプレーしたこともありますが、その頃と比べても、「あまり変わってないんじゃないか」と思うくらい、今でもショートゲームは抜群です。アイアンも上手いですが、ショートゲームよりは調子に波がありそうなので、その週にぴったりはまれば、20代、30代の若手とも張り合えるという感じでしょうか。全米プロのときも、アイアンの調子はどうなのか、気にしながら見ていたのですが、ティーショットが全然、フェアウェイにいかないので、1ラウンド4回のパー3の感じだけでは、実際はどうだったのか、最後までわからずじまいでしたね(笑)。

ティーショットの狙い方が
極めてタイト

ミケルソンのドライバーが曲がるのは、今に始まったことではありませんが、あれだけ振り回せば、曲がるのは当然という感じもします。ただ、PGAツアーは年々、パワープレーの度合いが上がって、スコアに対する飛距離の重要度が高くなっていますから、なかなか「置きにいく」という選択はしづらいのでしょう。もちろん、消極的なプレーを許せない、彼の「性格」がそうさせるのかもしれませんが(笑)。

それと、若い頃からミケルソンのプレーを見ていて思うのは、ティーショットの狙い方が、少しタイトすぎるのではないかということです。たとえば、グリーンの右サイドにピンがある場合、ティーショットのベストポジションは、フェアウェイの左サイドになるのが普通ですが、そういう場合、ミケルソンはフェアウェイの右半分を「完全に捨てる」ような狙い方をします。まるで、右サイドに飛んだら、たとえフェアウェイでも「ミスショット」だと思っているような。

私なら、いくらピンが右サイドにあったとしても、左サイドのラフよりは、右サイドのフェアウェイを選ぶんですが、ミケルソンは喜んで左のラフから打つわけですね。ラフどころか、林まで曲がることもしょちゅうですが、そういう変なところからでも、パーが取れる技術があるから、逆に始末が悪い。あんなタイトな狙い方だと、PGAツアーのコースセッティングでは、どうしてもフェアウェイキープ率が下がります。それでも、全米プロのときのように、うまく50%くらいフェアウェイをとらえることができれば、ドライバー以外は上手いので、まだまだ十分優勝のチャンスがあるということになると思います。

ミケルソンの優勝は、同年代のプレーヤーにとって、ひとつの「希望」になったことは間違いない事実です。「彼がやれるなら自分も」と思ったプレーヤーは、日本にもアメリカにもたくさんいたでしょう。私にとっても、彼が活躍するのは励みにはなりますから、これからも頑張ってほしい。そのために、体重管理はきちんとしてほしいところですね(笑)。

「ミケルソンのショートゲームは
20代・30代の頃と比べてもまったく遜色ない」

ミケルソンの飛距離が落ちないのは、最後まで振り抜くスウィングを今でも維持しているから。アマチュアの場合も、多少曲がったとしても、最後まで振り切ることを意識すると、飛距離の低下を抑えることができる

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2021年9月号より