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【スウィング遺産】かつて“サイボーグ”と呼ばれた男「中嶋常幸」

GDライブラリ
2020.09.04

スウィング世界遺産、第2弾は史上初の年間獲得賞金1億円突破の記録を持つトミー中嶋こと中嶋常幸。父と作り上げた強靭なる肉体はサイボーグとも呼ばれ、誰よりもゴルフと向き合ってきた。その姿を鈴木亨が語る

1954年生まれ、群馬県出身。1975年にプロ入り。4度の賞金王に輝き、永久シード保持者。ツアー通算48勝。日本人選手で唯一、海外4大メジャーの全てでトップ10入りの記録を持つ

【解説】 鈴木亨プロ
1996年生まれ、岐阜県出身。88年より、中嶋常幸と同じ後藤修に師事し、ともに汗を流し、ツアーを転戦

“世界一美しい”と
称されたスウィング

中嶋さんとの出会いは1988年。ボクは22歳でプロに転向する1年前。中嶋さんは34歳でスランプに陥り、スウィング改造を決意されたときです。

以来、そのスウィングを間近で見られたことは幸運であり、ボクのゴルフ人生においても、大きな財産となっています。 

スウィング改造の真相は……身近にいた鈴木亨が語る

飛距離と正確性を高いレベルで両立させ、青木功さん、ジャンボ尾崎さんの背中を追いかけて日本ツアーをけん引。

65歳を迎えた現在でも衰えを知らない。ボクのなかでは、いまでも“世界一美しい”スウィングです。

80年代後半スウィング改造に着手

このままでは上半身が回りにくい…中嶋は悩んでいた

「みぞおちの裏の背骨が硬くなる」

ドライバーの進化も
改造の理由のひとつ

プロに転向して、まだ試合に出られなかった頃、中嶋さんのプレーを見るために、度々トーナメントに足を運んでいました。試合中にも関わらず、ボールケースを山積みにして練習する姿を見て、“プロの凄み”を感じたのを覚えています。

ボクと出会った88年当時、セベ・バレステロスから、「世界で5本の指に入る美しさ」と絶賛されたスウィングの改造に、中嶋さんは着手しました。

1985 スウィング改造前の全盛期 31歳

「加齢による体の衰えは、みぞおちの真裏の背骨が硬くなることから始まるんだ」

体のケアの大事さを、中嶋さんは常々語っていました。30代半ばに入り、自身の体の変化を感じ取っていたのだと思います。

柔軟性の低下とともに、可動域が狭くなれば、若い頃のようなスウィングはできなくなる。ジュニア時代より培ってきたスウィングから、大人のスウィングへと進化させるには、このタイミングがベストだと、中嶋さんは判断したのでしょう。

また、パーシモンからメタルへというギアの進化も、スウィング改造の理由のひとつと推測できます。92年の連続写真を見ると、リスペクトするジャンボさんをお手本に、オープンスタンスからハイドローで飛ばすスウィングへと変わっています。

1992 スウィング改造後の熟成期 38歳

目先の成績だけに囚われることなく、現在の自分にできる最高のスウィングを常に追い求め、努力を惜しまない。それが90、91年の日本オープン連覇、その後の完全復活に繋がったのは間違いありません。

右腕の長さと左ひざ
これが超一流の証

「亨、お前にオレのスウィングのなにが分かるんだ」

もし、中嶋さんがこの記事を見たら、そう言われてしまいそうですね(苦笑)。おこがましさを感じつつ解説させてもらうと、中嶋さんのスウィングの凄さは、フォローでクラブが地面と平行になったときの、右腕の長さがすべてを物語っています。

この右腕を長く使うことは、中嶋さんやジャンボさんなど、ゴルフの世界で超一流といわれるプロのスウィングにおいて、共通する部分なんです。

右腕を長く使うことで、ボールが曲がる原因になるフェースローテーションを最小限に抑えることができます。また、フェースにボールが乗る時間が長くなるので、インパクトで目標方向にボールをしっかり押し込んでいける。

1976年プロデビューツアー初優勝→1982年・83年2年連続賞金王→1983年 年間8勝史上初の獲得賞金1億円突破→1985年・86年2年連続4度目の賞金王

1976年 プロデビューツアー初優勝
1982年・83年 2年連続賞金王
1983年 年間8勝史上初の獲得賞金1億円突破
1985年・86年 2年連続4度目の賞金王
1988年 全米プロ3位日本人歴代最高位/1988年スウィング改造
1990年  復活 約3年ぶりの国内ツアー優勝/1990年・91年 日本オープン2連覇
2006年 史上4人目52歳でレギュラーツアー優勝
2018年 日本プロゴルフ殿堂入り

エネルギーを余すことなくボールに乗せられるから、飛距離と正確性の両立が可能になるんです。これは誰にでもできるものではなく、真似したくてもできない領域なんです。

フォローでピンと伸びた左ひざも、超一流の共通項のひとつ。地面反力を利用して、全身をフルに使ってヘッドを走らせる。どうすればボールを強く叩けるのか。そのコツを本能的に理解しているんですね。ボクが飛距離でやっと勝てるようになったのは、中嶋さんが50歳を過ぎてからですからね。

体の変化とギアの進化に合わせ、スウィングを常にアップデートさせながら、歴代3位のツアー48勝を積み重ねてきたのですから、その凄さは推して知るべしです。中嶋さんのスウィングから学ぶべきものは、まだまだたくさんあるんです。

TEXT/ Toshiyuki Funayama 

PHOTO/ Tadashi Anezaki、GD写真室

週刊ゴルフダイジェスト9月8日号より