海老原清治&奥田靖己 もう一花のゴルフVol.27 浮かすか、飛ばすか。それが問題
最近の道具の進化・変化について話しているふたり。ウッドのロフトの昔と今の違いが、セッティングの違いを生んでいると言います。道具選びの、ちょっとしたヒントが隠れているようです。
海老原清治
千葉生まれ。02年欧州シニアで3勝、賞金王。還暦すぎて飛距離を伸ばす超ベテラン
奥田靖己
大阪生まれ。93年日本OPなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂びを追求する
ウェッジのロフトは2度立てる
奥田 ウェッジのロフトをプラス2度にしてカップをオーバーせんようにと考えるのは、300Yも飛ばす一部のプロに向けた話や、ということでしたよね。
海老原 そう。本当にトップクラスのプロゴルファーの話です。
奥田 状況にもよりますけど、ボールを上げてカップに届かせようと思ったら、転がして寄せるよりも5倍ぐらい大きい振りでバーンといかなあきませんからね。
海老原 そりゃあアスリートゴルファーならそういうのもできるかもしれないけど……。
奥田 そういう人はゴルファーの1%以下で、99%以上の人はアスリートやないです(笑)。
海老原 だからね、僕は99%の人は、むしろウェッジのロフトを2度立てたほうがいいんじゃないかと思うんです。
奥田 95%の人がアプローチでショートするということを考えると、2度ロフトを立てることで、届くようになるかもしれんと(笑)。
海老原 「2度問題」は、むちゃくちゃ上手い人と、そうじゃない人とを分けて考えたほうがよさそうだね。たった2度だけど、プラスとマイナスじゃ4度の違いだから大きいです。
奥田 僕は、プラス2度はスプーン(3W)のほうがエエと思うんです。大概のアマチュアはヘッドスピードが遅いからボールが上がらない。女性なんかだと残り150Yの砲台グリーンは相当きついでしょ。シニアツアーで言うと、残り250Y。これはなかなか狙えへんですからね。
海老原 ティアップしないで使うウッドのなかでもスプーンが一番難しいクラブだよね。
奥田 転がってくれれば250Yでも届くんやけど、それをプラス2度にして、舞い上がらせてしまったら230Yになってしまいます。そこらをどうするかやね。飛ぶけどボールが浮かないのがエエのか、飛ばんでもボールが浮いたほうがエエのか、これはちょっと悩みます。
海老原 ロフトが20度より少なくなると、舞い上がらせるというのは難しいよね。
奥田 あとはライです。アップヒルのところなら簡単にいきますけど、ちょっと芝が薄いとか、ダウンヒルだとか、そういうのはきつくなります。
海老原 昔はドライバー、ブラッシー(2W)、スプーン、バッフィ(4W)、クリーク(5W)、この5本だった。1、2、3、4、5と。これがセットになっていたでしょ。今は1、3、5、7、9でしょ。
奥田 11番ウッド、13番ウッドというのもありますね。
海老原 昔のスプーンってロフトが16度でした。今のクリークのロフトは17度なのよ。ブランドによっては19度までありますけど。
奥田 昔のスプーンのロフトと今のクリークのロフトは1度しか違わんという話やね。
海老原 だから昔の人はもう少しロフトの立っているブラッシーを持っていたんです。僕らの時代でウッドのなかでも一番難しいクラブで、ただし、当たればものすごく飛んでくれましたね。花道があるパー5の2打目になると、喜んでそれで打ったもんです。
奥田 ちょっと転がってくれれば2オンですからね。イーグルチャンスや。
海老原 その代わり花道がないパー5では考えちゃいますよ。「手前に刻んだほうがいいのかな?」とか、「それともバンカーに入れたほうがいいのかな?」 って。そのバンカーも砂が硬ければ狙って入れにいきますけど、砂が軟らかいとわかっていれば、「やっぱり刻もう」ってなるわけ(笑)。
奥田 なかなか悩ましいクラブですな(笑)。
海老原 だけどさ、あのころのスプーンのロフトは16度だよ。16度だったら、結構ボールは浮いてくれるんです。今だったらアマチュアでもクリークは、みんなちゃんと打ってるでしょ。
奥田 16度というと今はバッフィ。(石川)遼くんが16度を使っておるという話を聞きました。
海老原 昔のバッフィはロフト19度でした。それでクリークが21度とかだったんです。
奥田 ドライバー、ブラッシー、スプーン、バッフィ、クリークと来て、7番ウッドからはそういう名前がないのは、昔はそういうクラブがなかったからやね。
海老原 そういえば7番ウッドは7番ウッドです(笑)。
奥田 ロフト17度のヘッドにスプーンと同じ長さのシャフトを入れたらいいかもしれません。
海老原 それいいですね。
奥田 ちゃんとボールが浮いてくれます。
海老原 そりゃ浮きます。それにシャフトがバッフィより長いから、そのぶんだけ飛んでくれそうだよね。
奥田 あっ! そうしよう! いいこと思いついたわ。フェアウェイウッドが1本減らせれば、ウェッジが1本足せますし。
【花咲く一言】
ウッド選びは番手で決めない。ロフトで確認を
画/伊藤方也
TEXT/Chiharu Kubota