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【スウィング研究】ジョン・ラーム「小さなトップ」は13歳から築き上げた

PHOTO/Blue Sky Photos

距離が長く、ラフが深く、グリーンが硬く、パットの転がりが不規則になりやすいポアナ芝のグリーン。トーリーパインズ開催の全米オープンは、大会前からショット力の高いボールストライカー有利と言われていた。そして、それを地でいってみせたのがジョン・ラーム。小さなトップが特徴的なラームのスウィングをレックス倉本が解説!

ジョン・ラーム
アリゾナ州立大時代、60週にわたり世界アマランキング1位。2016年にプロ転向し、PGAツアー6勝、欧州ツアー5勝。全米オープンに勝った唯一のスペイン人。26歳、188㎝、100㎏

解説/レックス倉本

米ゴルフチャンネル解説者。PGAツアーの現地レポートなども務める。米フロリダ在住のプロゴルファー

13歳から取り組んだ小さなトップ
左手の掌屈がカギ

幼少期はオーバースウィングだったラームですが、13歳の時にスウィングコーチについてスリークオーターのトップに取り組み、14歳でテンポを整えながらインサイドアウトのシャロー軌道に調整、米国の大学に入った頃には小さなトップが板についていました。

「大きく振らなくても飛距離は出せるし、正確性が高まると気づいたから」と本人が言うように、現代のクラブは長さと重さと硬さをスウィングに合わせて調整できるので、体を目一杯使わなくてもパワーを生み出せます。加えて、この大きな体があれば、エネルギーは十分です。

もうひとつの特徴は、トップでの左手の屈曲(掌屈)。実はラームの手首は内側への可動域は広いのに、逆方向にはほとんど曲がらないという特徴を持っています。それを逆手に取ったこの掌屈の動きによって、フェースを開かずに振ることができているのです。

フェースが終始閉じているので、下半身を強く踏み込んでもフェースが開かず、安定したインパクトを迎えられます。

左手首を手のひら側に折る掌屈トップ

手のひら側への可動域が広く、甲側へはほぼ曲がらないという先天的な関節の特徴を生かしたトップ。フェース開閉を抑えて振ることができる

スペインの海岸沿いの町で育ったラームは、「トーリーパインズは故郷を思い出す」と言い、「ここではパーを重ねれば誰も追いつけない。ボールストライキングで自分にかなう選手はいない。自信をもって戦う」と語りました。補足をすると、(このコースの)ポアナ芝グリーンは芝が荒れやすく、終盤になるほどボールが跳ね、パットが決まりにくくなります。優勝争いの後半組ほどショット力が重要になる、まさにラームのゴルフが生きた試合でもありました

フェース開閉が少ないことが、ラームの正確なショットを可能にしている。ドライバーはキャロウェイの「エピック スピード トリプルダイヤモンドLS」の10.5度。シャフトはアルディラ「ツアー グリーン75TXの45.25インチを使用

軽井沢72で行われた2014年世界アマで個人優勝

アマチュア時代にスペイン代表として来日。4日間25アンダーで個人戦優勝。この時も「ラーム選手のテークバックは超コンパクトなのにすごい飛ぶ」と話題になっていた

手元が真下にストンと落ちる
シャロー軌道を生む動き

少し驚くような逸話があるのですが、ラームはジュニアの頃、つま先を外側に向けるギプスを足首に着けて暮らしたといいます。もちろんゴルフのため……。

そのおかげで、バックスウィングで足がスウェイせず、ダウンスウィングで左足を強く踏み込んでも左腰の位置がまったく変わりません。左右のブレをなくして回転する打法は、今のPGAツアーの主流です。足首の関節と股関節の可動域が広いからできるのですが、ひとつ(読者の方に)参考にしてほしいのが、トップから腕を真下にストンと落として、クラブをシャローな軌道に導くところ。手元がボールに近づかず真下に落ちるので、ヘッド軌道がゆるやかになるのです。手元を脱力させると、切り返しで足から腰へと下から動きやすくなり、手元が真下に落ち始めます。ショットを安定させるなら、これはお手本です。

全米オープンに話を戻すと、最終日18番のセカンドで右のバンカーに入れました。昔ならスーパーショットを狙って手前の池に落とすようなこともありましたが、確実に安全な方法をとりました。本人は最悪プレーオフ、との気持ちがあったはず。土壇場で躊躇なくあの選択ができたことにメンタル面の成長も感じさせました。ショット力と併せて、さらに脂が乗っていくのではないでしょうか。

小さなトップから、平均飛距離は306.6ヤード

グリップはスクエアで、左手を掌屈させやすい形。トップで腕が脱力し、手元が真下に落ちてゆるやかな軌道を導いている。スウィング中は左右へのブレが一切なく、体の回転で打っている

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より

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