上田桃子を復活優勝に導いた「チーム辻村」のスウィング作り。その内容を特別公開!
先日、パナソニックオープンレディースで2年ぶりの優勝を果たした上田桃子をはじめ、多くのプロを輩出している「チーム辻村」。そこでは果たしてどんな教えが行われているのか。第一弾は、上田桃子が取り組んできた練習法を取り上げる。
PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/鎌ヶ谷CC
解説/辻村明志
つじむらはるゆき。1975年、福岡県生まれ。日本大学出身。現在、上田桃子をはじめ、小祝さくら、永井花奈、吉田優利、松森彩夏、山村彩恵などの指導に当たる
●【桃子の取り組み1】土台作り
足指で地面をつかみ下半身で打つ!
GD いま指導に当たっている上田桃子選手をはじめ、小祝さくら選手など数多くの選手がツアーで活躍していますが、何か特別なことをしているのですか。
辻村 いやいや、そんな特別なことはしてないですよ(笑)。もちろん、しっかりと指導はしていますけどね。
GD 今回は、上田桃子選手と取り組んできたことを伺いたいと思いますが、どんなことをやってきたのですか。
辻村 桃子は14年から見ています。たくさんありすぎてわかりませんが、まず大切なこととして“下半身で狙う”ということを指導してきました。
GD 下半身で狙う?
辻村 スウィングの土台となる下半身がフラついたら狙ったところへ打てるはずはありませんよね。それを表現するために“下半身で狙う”と言っています。そこで重要なのが、足の指で地面をつかむということ。桃子はスウィング中に上体が起き上がりやすかったのですが、地面をつかむことを意識するようになって、ミスショットが格段に減ってきました。
Point
足の指でしっかりと地面をつかむ
インパクトで上体が浮き上がる傾向にあった上田桃子。アドレスから足の指で地面をつかむことを意識し、スウィング中も常に踏ん張るようにしたところ、球筋が安定してきたという
Drill 1
中腰で体を水平回転
Drill 2
クラブで重いモノを押す
クラブで重いモノを押してみると、下半身がフラついたら強く押せないことがわかる。これも下半身の重要性を体感するため行ったことのひとつ
●【桃子の取り組み2】“軌道”修正
ヘッドカバー落としで体の近くを通す
GD 基本となる下半身強化の次に取り組んだのはどんなことですか。
辻村 桃子は当初、ヘッドがややアウトサイドから入ってきて、鋭角に下りてくる傾向がありました。それを直すために、手元を体の近いところから下ろして振り抜くドリルを時間をかけてやってきました。
GD 具体的には?
辻村 ヘッドカバーを持って、ダウンスウィングで目線の下に落とす練習です。これをすることで、手元が下りてくる位置が自然と体の近くになります。このとき、右腰や右ひざがボール方向へ出ないようにするのもポイント。体の近くから振り下ろせると、ヘッドの入射角が緩やかになり、インパクトゾーンが長くなってボールを押し込むことができます。これにより、飛距離も方向性も格段に向上しましたね。
Drill 1
ヘッドカバーを真下に投げる
Drill 2
右サイドの形をキープして反復素振り
Point
フィニッシュで両内ももをピタッと閉める
フォローからフィニッシュにかけて、両足の内ももがピタリとくっ付いて閉まるように意識する。右ひざが前に出ると、左腰が引けてヘッド軌道がブレやすくなる
●【桃子の取り組み3】体の使い方
背中の大きな筋肉を使う
GD 体の内側からクラブを振り下ろせるようになったこと以外にも、スウィングの変化はありますか。
辻村 背中の筋肉=広背筋を使ってスウィングするように意識して練習していました。大きな筋肉を使ってフィニッシュまで振り切れれば、振り遅れはなくなるし、手先でフェースを返すような小細工もなくなります。桃子の球筋は、フックからぼぼストレートのドローへと劇的に変わりましたね。
GD 広背筋を意識するだけでそんなに変わるものなんですか。
辻村 桃子に限らず、チームのみんなで連続素振りをしていますが、広背筋を使って振れないとフィニッシュまで振り切れないですし、腕が疲れて振れません。広背筋を意識するようになってから、インパクトゾーンが長くなり、飛んで曲がらないスウィングを体得できました。
Point
広背筋を意識して振り切る
Drill
左足甲をグリップエンドで押さえたままシャドースウィング
インパクトで左ひざにゆとりがないと、上体が起き上がり振り遅れのミスにつながると辻村コーチ。インパクトで左ひざを伸ばすという理論もあるが、左ひざにはある程度ゆとりがあったほうがいいというのが辻村流
●【桃子の取り組み4】アプローチ
盛り土打ちで距離感アップ
GD ショートゲームでも何か取り組んだことはありますか?
辻村 以前の桃子は、体を左右に揺さぶって、ボールを上から突くように打っていました。そのため、距離感が合う日と合わない日の差がかなりありました。そこで、ラグビーのように土を盛って、そこにボールを置いて打つ練習を始めたのです。ヘッドの入射角が緩やかになり、フェースにボールが乗る時間が長くなったので、距離感が格段に合ってきましたね。アプローチの向上で、最後まで粘れるゴルフができるようになり、それが成績につながっていると思います。
Drill
盛り土の上に置いたボールを打つ
Point
振り子のイメージでヘッドを等速に動かす
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より