シニア入りを機にツアープロ転身を目指す南出仁寛プロの修行の旅。「メンタルトレーニング」と聞くと特殊な訓練を想像しがちだが、興奮度が低すぎたら上げる、高すぎれば下げるのが基本。下げるのに効くのは、やっぱりあの方法だった!?

PHOTO／Hiroyuki Tanaka　THANKS／大阪体育大学

ゴルフ修行僧／南出仁寛

みなみで・きみひろ。78年生まれ、大阪府出身。06年にプロ転向。ドラコン日本タイトル15冠。世界大会は11度出場し、最高成績は10位（日本人最上位）。シニアツアー出場資格年齢まであと4年

今月の「師僧」／菅生貴之氏

2011年から、JGAナショナルチームのメンタルコーチを務める。スポーツメンタルトレーニング上級指導士。ゴルフ以外にも体操、柔道、陸上競技など幅広い競技のサポート経験がある

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  【南出仁寛の千日回峰行】Vol.11　ゾーンに至る心理の上げ下げを実践する

  シニア入りを機にツアープロ転身を目指す南出仁寛プロの修行の旅。実践する緊張で実力が出せなかったり、うまくいかなくてイライラしてしまったりというのは、メンタルをコントロールできていない状態と言える。一流選手ほど、心の上下動が少ないもの。それはどうしたら磨かれる技術なのか? TEXT／Daisei Sugawara　PHOTO／Hiroaki Arihara　THANKS／大阪体育大学 ……

イライラを大声で
発散するのはダメですか?

南出　メンタルを安定させるには、普段からそういう状況に備えておくのが大事というのはわかるんですが、それでも試合中にイライラしたとき瞬間的に発散する方法はないんですか。キャディさんにミットを持っててもらって、ミスしたら思いっきりパンチできたらいいのにって何回も思うんですけど（笑）。

菅生　ひとつ、大声を出すというのはいい方法だとは思います。それができる環境かどうかという問題はありますけど。あとは、「暗示呼吸」という方法があります。腹式呼吸にプラス暗示とマイナス暗示をかけ合わせて、息を吸うときに「勇気」、「自信」、「やる気」といったものを吸い込んで、息を吐くと同時に「不安」、「恐れ」、「迷い」などを体の外にすべて出すというものですね。

南出　習慣化できればかなり効果がありそうですね。

菅生　イライラとは別に、試合中には「不安」が頭をよぎることがありますよね。不安というのは打ち消そうとすると増大することがわかっているので、割とやっかいなんです。

南出　対処法はあるんですか?

菅生　「つぼ療法」が有効ですね。これは心の中の「想像のつぼ」に不安な気持ちをそっとしまって、さらにそれにふたをするところまでイメージするのが一連の手順です。不安は厳然とそこにあるんだけれども、気にならない場所に追いやるわけですね。試合中でなくても、日常生活の中でストレスがかかったときにやっても効果があるので、おすすめです。ナショナルチームのメンバーにも、実践して効果を上げている選手がいるんですよ。

南出　「試合でのイライラ解消に普段からやるべきことはありますか?」
菅生「腹式呼吸は日常的に行うといいことがたくさんあります」

腹式呼吸の仕方

1　鼻から息を吸い丹田を広げる（4〜5秒）
2　吸った時間の倍の時間をかけて息を吐く（口をすぼめて長く細く吐く）
3　リラックス状態になるまで繰り返す

ミスしたことへの怒りで急激にテンションが上がった場合や、優勝がかかった場面での過緊張状態など気持ちを落ち着かせる作業が必要。腹式呼吸はリラクゼーションの基礎的技法と位置付けられており、最も手軽で効果的な手法のひとつ

「へそ下3㎝」が丹田の位置

「丹田」の場所はへそから約3cm下で、そこから奥（体の内部）に約3cm入ったところ。ここが膨らんだりへこんだりするのを感じながら深く呼吸していく

腹式呼吸でリラックスしたら
体を動かして覚醒状態まで戻す

イライラや不安はテクニックで軽減できる

認知行動療法に代表されるように、メンタルは「気持ちの問題」などではなく、「筋トレ」のように実証された手法によって強化、改善できるものという認識が必要。

▶ 暗示呼吸
腹式呼吸の吸気と呼気にプラス、マイナス暗示を組み合わせた手法。同様の手法に「暗示放尿」（マイナス暗示を尿とともに出す）もある。
▶ リフレーミング
「雨が嫌だ」というマインドだと、雨がパフォーマンスに影響するが、「雨でもいつもと同じ」というマインドにすることで影響が少なくなる。

月刊ゴルフダイジェスト2025年12月号より