【イザワの法則】Vol.54 スタンスの向きは“適当”でいい?

アドレスで肩、腰、足元のラインをすべて「スクエア」にしないと、真っすぐなボールは打てないと思い込んでいるアマチュアは多い。しかし、「それよりももっと大事なことがある」と、伊澤プロは言う
TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)
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- もうすぐ日本の各プロツアーが開幕するこの時期、プロはどんなことを考えて練習しているのだろうか。伊澤プロの場合、何か具体的な目標はあるのだろうか? TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Hiroyuki Okazawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM) >>前回のお話はこちら ……
曲がらない道具の普及で
球を曲げることを嫌がる人が増えてきた
ゴルフは真っすぐ飛ばすのが一番難しいので、昔は「曲げることを覚えろ」と言われたものですが、道具が曲がらなくなってきたせいか、最近はひたすら「真っすぐ」を目指して練習する人が多くなっている気がします。とくにアドレスの「真っすぐ」に、神経質なほどこだわっている人がいますね。足元にシャフト(アライメントスティック)を置くのは当たり前で、ボールのところにもシャフトを2本、レール状に置いて、それで狙ったところに真っすぐ出るように練習している風景をよく見ます。
ただ残念ながら、アドレスを真っすぐにすることと、打ったボールが真っすぐなことは、実はあまり関係がありません。とくに足元のラインは、はっきり言って「どちらを向いていてもいい」と思います。私はフェード打ちなので、基本的には少しオープンスタンスですが、状況によってはスクエアに立ったり、逆にクローズに立ったりもします。
それでもフェードを打つのには、別に何の問題もありません。ドロー打ちの人でも、スタンスが左向きの人がいますが、本人がちゃんとわかってやっているならそれでいいということです。球筋に関係するのは「プレーン」の向き(スウィングの方向)なので、足元の向きよりは肩の向きのほうが重要と言えるでしょう。
プレーンの向きを管理することで球筋は安定する
もしストレートなプレーンで振りたければ、肩のラインを(アドレスで)スクエアにしておくほうがいいですし、イン‐アウトのプレーンで振りたければ、肩のラインを右に向けておくほうがいい。ただこれも絶対ではなくて、肩の向きよりもスウィングのほうをどうにかしないといけないことも多いです。つまり、そもそも切り返し以降にカットに振ってしまう人の場合は、肩の向きを直したからといって、スウィングのクセまで直るわけではないということですね。そう考えると、アドレスのときの体の向きというのは、意外と「適当」でいいのかもしれません。
それより、自分が気持ちよく振ったときに、プレーンがどの方向を向いているか知ることは必要です。体の向きは気にせずに、できるだけリラックスして素振りを繰り返してみてください。そのときにプレーンがアウト‐インの人はフェード打ち、逆にイン‐アウトの人はドロー打ちの適性があるということになります。その通りの球筋を持ち球にするのがいいですが、プレーンの方向にフェースを向けて当てればその方向に真っすぐ飛ぶ球も打つことはできます。その場合は、ターゲット方向に真っすぐ飛ぶようにスタンスの向きを調節すればいいということになります。
それとスタンスは振りやすさに影響するので、出球の方向というよりそちらを優先して決めるのがいい。切り返し直後に右サイドが前に出てカットになる場合は、右足を引いて構えると少しインから振りやすくなりますし、フォローで極端にアウトに振ってしまう場合は、逆に左足を引いて構えることで、体の回転で左に振りやすくなります。
「プロだって逆球が出ることはある。
それはスタンスではなくて
プレーンの問題であることが多い」


打ちたい球で構えを決めよう
番手の中間距離が残って、たとえば7番アイアンを短く持って打つ場合、ボール位置とボールとの距離をそれに応じて変える必要がある。仮に1インチ短く持つと、長さが2番手短くなるので、9番アイアンの構えにしなくてはいけない

伊澤利光
1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中
月刊ゴルフダイジェスト2025年5月号より