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【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.15 ハンドレイトにしているつもりだったのに…

8月の“鳩山決戦”に向け「練習できていない」と言いつつ、随所で青木を驚かせる成長ぶりを見せる谷繁元信。テストの前に「全然勉強していない」と言いながら好成績を収める子のようだが……さて、今週のシゲさんの気づきはいかに。

PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/立野クラシックGC

谷繁元信 1970年広島県生まれ。88年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ入団。02年中日ドラゴンズに移籍。14、15年はプレーイングマネジャー、16年は専任監督。通算3021試合出場は日本記録、捕手として2963試合出場は世界記録。ベストスコア67
青木翔 1983年福岡県生まれ。2017年渋野日向子を全英女子オープン優勝に導いたコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。ジュニアから一般アマチュアまで幅広く指導。「六甲国際ゴルフアカデミー」校長

前回のお話はこちら

“真っすぐ”構えたつもりが
すでにハンドファースト

青木 夏の高校野球選手権の予選が全国各地で行われています。谷繁さんは確か……。

谷繁 えー、島根県の江の川高校(現・石見智翠館高校)は、1988年と89年の2度、甲子園に出場し、89年はベスト8まで進みました。

青木 その後、ドラフト1位で当時の横浜大洋ホエールズに入団。2000本安打を達成して名球会入り、今年は野球殿堂入り。輝かしい経歴ですね。

谷繁 ありがとうございます。僕がここまで来られたのは、強い体に生まれたこともあるけれど、「勝ちたい」という強い思いがあったから。小学校のとき、野球で負けると監督に猛練習させられたんです。そのときから「負けたくない。勝ちたい」という思いが作られていったと思う。負けた経験があるこそ「勝ちたい」となっていった。

青木 ゴルフでもそんな思いがありますか?

谷繁 前にもお話しした2022年の関東ミッドの決勝で最終日に85叩いてしまったことは大きかったですね。体も頭も消耗し切ってしまった。トリ3つはショックでした。

青木 関東ミッドの決勝まで進むだけでも立派ですが。


谷繁 プロ野球では、メインのキャッチャーとしてマスクをかぶり始めた頃、勝てなくてね。それが自分自身が成長するにつれて「勝ちたい」という思いが強くなっていった。

青木 ゴルフでも今、そういう段階にあるのかもしれませんね。

谷繁 そう。それで脱・我流を果たした。この間のアライメントのレッスンで“人それぞれの真っすぐ“があるというのは目からうろこでしたよ。プロの試合を見ていても、同じところから打つとき、みんなけっこう違う方向を向いているから。

青木 はい、それで今回はアプローチ、行きましょうか。得意分野なんで腕が鳴ります。

谷繁 ここ、大切。

青木 ここの引き出しが増えるとゴルフがもっともっと楽しくなります。僕は一生やっていられるくらい好きです。

谷繁 以前のレッスンで習ったこともできるようになっているんです。たとえば左足下がりのアプローチ。邪魔になる右足を引いてクローズに構え、フェースを思いっきり開く、とか。

青木 左足下がりはロフトが立つシチュエーション。ボールが飛びやすいのでフェースを開きます。特に、芝に球が沈んだ状態の場合はクラブを上から鋭角に入れるしかないので、フェースは思いっ切り開いてハンドレイトにするんでしたね。

谷繁 「そんなに?」というほど開いて打つアプローチ、ラウンド中にやるには勇気がいったけど、実際にやってみていて、いい感じになっています。リーディングエッジが刺さらなくなりました。

青木 やっぱりラウンドでやってみないと、ですよね。とはいえ、毎日コースに出られるわけでもないんで、練習場でのシミュレーションも大事。

“できているつもり”からの脱却

谷繁 それで、練習場で10ヤードほど先のポールを目標に寄せてみた。注意したのは、フェースを開いてソールを滑らせること。

青木 谷繁さん、カメラが回るとすごい(笑)。いい音で、うまく寄せていました。でも、何球か続けているうちにミスが。

谷繁 変な音がしたよね。

青木 そこで「もう少しハンドレイトに」と言ったら。

谷繁 自分で思っているハンドレイトがハンドレイトじゃなかった。

青木 そう。谷繁さんのハンドレイト、ハンドファーストになっていました。

谷繁 自分ではハンドレイトに構えているつもりだったんだけど、実際、シャフトは自分から見て左に傾いていたからハンドファーストの形だったんですね。その後「じゃあ、シャフトを真っすぐに構えてみて」と言われて、構えてみたら、その時点でもうやや左に傾いていて、すでにハンドファーストだった。

青木 あれだとバウンスが生かせないです。

谷繁 指摘されて気付きましたよ。

青木 もともとがハンドファーストで構えるタイプだったから、レイト気味に構えるのはかなりの違和感があったのでは?

谷繁 ムズムズしましたね。そもそも「何かカッコ悪くない?」と思っちゃったよ。

青木 いえいえ、海外選手でも増えている構えですよ。そして、打つときは、打ち上げる感じではなく、そのまま胸ごと左に回す感じ。

谷繁 打ち上げようとするとインサイドアウトの動きが入っちゃうんだよね。

青木 谷繁さんはもともとカット打ちの人なのに、インサイドアウトの動きを入れるとミスが出やすくなりますよね。

谷繁 もう「なるほど」って言いたくないんだけど、言っちゃうよね。「なるほど」だよ、これは。

青木 ということで、次回もアプローチ編は続きまーす。

ハンドレイトのつもりが、ややハンドファーストになっていることを青木の指摘で気付いた谷繁。「うそー!?」から「ほんとだ」に。ただ、ムズムズは継続中

週刊ゴルフダイジェスト2024年7月30日号より

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