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【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.12 アプローチの引き出しが増えると余裕や自信が生まれる

グリーンを外した際のアプローチに自信が持てると「ちょっとくらい外しても大丈夫」という余裕が生まれ、「なにがなんでも乗せなくては」というプレッシャーから解放される。今週も、頑張れ、谷繁!

PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/六甲国際GC

谷繁元信 1970年広島県生まれ。88年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズ入団。02年中日ドラゴンズに移籍。14、15年はプレーイングマネジャー、16年は専任監督。通算3021試合出場は日本記録、捕手として2963試合出場は世界記録。ベストスコア67
青木翔 1983年福岡県生まれ。2017年渋野日向子を全英女子オープン優勝に導いたコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。ジュニアから一般アマチュアまで幅広く指導。「六甲国際ゴルフアカデミー」校長

前回のお話はこちら

対処法の組み合わせで
どんなライにも応用できる

青木 前週からの続き、グリーン周りのアプローチです。

谷繁 浮いた芝からの左足下がり、完璧でしたよね。邪魔になる右足を引いてスタンスをクローズに、フェースは開いて……。

青木 そうそう。それで、今回は同じくグリーン周りで左足下がり、ただしボールが芝に沈んだシチュエーションです。

谷繁 エッジにちょこんと出してみて、あとはグリーンの傾斜でうまく転がってくれれば、って感じかな。

青木 日本ミッドアマを目指すのに運任せはいけません。

谷繁 そうですよね。でも、ほら、このシチュエーションの引き出しはまだないから。でも、いつもの感じで打ってみた。

青木 リーディングエッジがカチンと入って、ボールが下り傾斜で止まりませんでした。だいぶオーバーしちゃいましたね。

谷繁 ああいうの、けっこうあります。


青木 芝に球が沈んだ状況だと、クラブを上から、鋭角に入れるしかないですよね。鋭角に入れるとロフトが立つ、左足下がりだからさらに立つ。

谷繁 ということは、フェースを開くのかな。

青木 その通り。思いっきり開いてハンドレートにする。それで上からちょこんとクラブを入れる感じでいいんです。

谷繁 随分、簡単に言うよねえ(笑)。

青木 いや、ほんとに簡単ですから。

谷繁 でも、さすがに1球目はうまくいかなかった。

青木 クラブがかなり鈍角に入っていましたもん。さっきの浮き芝アプローチの打ち方が残っていましたね。フェースを開いているんだから、クラブは鋭角に入れても大丈夫なんです。

谷繁 で、うんとフェースを開いて2球目。ビターッと寄ったよねえ。うまくバックスピンがかかった。

青木 2球目でできるあたりがさすがでしたね。要は、フェースを開くのか開かないのか、手を出すのか(ハンドファースト)、出さないのか(ハンドレート)、この組み合わせなんです。

谷繁 左足下がりでボールが芝に沈んでいたら、フェースを開いて、ハンドレートで鋭角に打つ、と。

青木 そうです。状況による解決策を組み合わせていくことでバリエーションはどんどん広がります。

配球の幅を広げるように
技の引き出しを増やす

谷繁 左足下がりの引き出し、浮き芝、沈み芝の引き出し……今回もまた引き出しが増えました。これでセカンドショットのプレッシャーが減るのがうれしい。

青木 そうそう。グリーンをちょっと外しても大丈夫なんですよ。

谷繁 そりゃあティーショットをフェアウェイど真ん中に置いて、キレキレのセカンドでグリーンオン、2パット……みたいな流ればかりじゃないですよね。

青木 そんなとき、プランBとかプランCみたいな選択肢があるといいですよね。

谷繁 それは野球でもまったく同じ。僕はキャッチャーですから、バッターの打ち取り方で例えますが、最近の投手はだいたい4つの球種を持っています。ただその4つすべてがAランクというわけではありません。ストレートはAでフォークがB、スライダーはC……というふうにランクがあります。

青木 ゴルファーでもスタッツってありますね。パーオン率とかリカバリー率とかサンドセーブ率とか。あのチャートがきれいな真ん丸になるようなプロはいなくて、必ずどこかが引っ込んでいるものです。

谷繁 ですよね。ダルビッシュ有みたいに、7種類の球種があってすべてAランクみたいな投手は、基本いません(笑)。だから、僕は各投手の持ち球をランク付けしていました。ですが、若いキャッチャーは、Aランクの球を「勝負球」にして、さらにバッターの弱点エリアに投げさせるリードに走りがち。

青木 そうすれば抑えられそうですからね。

谷繁 でも、僕は経験を重ねるにつれ、全球種を「勝負球」「カウント球」として使えるようにピッチャーと一緒に練習をしていきました。そうやることで、勝負できる選択肢を増やしていったんです。

青木 「Aランクの球を弱点エリアに投げる」ばかりでは、バッターにも対策されてしまいますよね。

谷繁 配球の幅が狭くなるでしょう。だから、バリエーションをどんどん広げるようにしていました。

青木 ゴルフでもいま、引き出し、選択肢をどんどん増やしているところですよね。

谷繁 前回と今回のアプローチレッスンで、グリーンをちょっと外してもいける気がしてきました。

青木 左足上がりだろうと下がりだろうと、芝にボールが浮いていようといまいと。

谷繁 僕には全部の対策がある。この自信は大きいな。

青木 関東ミッドアマも迫ってきています。ちょっとピッチを上げますか。

谷繁 よーし、やりましょう!

芝に沈んだ球を打つ際、フェースを思い切り開けば、クラブを鋭角に入れても“大ホームラン”にはならない

週刊ゴルフダイジェスト2024年6月11日号より

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