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【ゴルフ野性塾】Vol.1816「ドライバーの飛距離は9アイアンで伸ばす」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

今日1月24日、
水曜日。

午前11時15分。
15階から眺める東と南の空は雲多き空。
野性塾大濠公園18人衆との集い、昨年12月28日の後、3週休んで始まったが、今日が今年2度目の集いの日。
寒い日が続く。
福岡でも昨日今日と雪が降っている。
雲が落ちて来た。
東の山、雲隠れに入った。
飛行機が海側から降りて来るのか、陸側から降りるのか、確かめようとするが、この時刻の発着は少ない。
諦めてペンを持つ事3回、確かめる事出来ず諦めた。
東の山が消えて行く。
南の山は消えてしまった。
今日も寒そうだ。

18人衆の週イチの私とのコーヒー飲む日、彼等のスケジュールの中の優先順位、何番目なのだろうか。
低い順位ではないと思う。ドタキャンないが故にだ。
皆、いい会社で働いている。
自分が社長であればいいが、勤め人であれば上司の理解と協力は要る。
週に一度、昼3時からの1時間。
勤め人に転勤はある。
転勤の後、残りの者で転勤した者の後釜を決めるのかと思ったが、そうではない様だ。
転勤した者の後釜は転勤した者が決める約束出来ていると聞いた。
それもいい選択だ。
ゴルフが繋いだ縁とはこれ位のものか。

東の山が消えた。
この後、雪、降るのか。
福岡に降る雪、風にスッ飛ぶ雪なので軽い雪なのだろう。
雪国の雪は重いと聞く。
体調良好です。

週イチ練習、9Iで150球打て。

3年前にやっと90の壁を超えましたが、そこから先がまったく上達できません。むしろ、下手になってきたのではないかと感じています。練習は週イチで200球ですが、ドライバーが真っすぐ飛ばないとゴルフにならないため、どうしてもドライバーの球数が多くなっています。この先、ベストスコアを更新するには、どんな練習をすればいいでしょうか。(埼玉県・加藤結斗・44歳・ゴルフ歴13年・ベストスコア89)


人、稽古事、鍛錬事を続ける時、停滞の時は訪れよう。
その時が力を溜める時と考える。
何事も順調ではない。
才持つ人は順調の時期、長いと思うが、それでも滞まりの時は来る。
この時、今迄、順調だったとの想い強き程に焦りの気持ち生じると思うが、ここでこれ迄のやり様から離れて他の手段に転じるか、これ迄通りのやり様に尚一層徹するかの択一の時は訪れよう。
誰もが経験する事だ。
そして、この時の判断と決断が結果を変えると思う。
同じ結果は生じない。

私がゴルフクラブ握ったのは24歳になったばかりの時だったが、択一の重要さは父と母の生き様を見て知っていた。
父は職業軍人を経て和菓子職人となり、熊本市内中央に店3店舗を作ったが、軍人商売だったのだろう、人を信じる気持ち強く、経理部長の使い込みと父の友人の銀行保証人倒れで倒産した。
経理部長と父の友人は逃げた。
母は寛大だった。

「信弘にこれだけは教えておく。軍人は共に戦った戦友が宝物だ。私の父も近衛騎兵だったから分るが軍人の人を信じる気持ちは強いんだよ。信じなきゃ命のやり取りなんて出来るもんじゃない。だからお父さんを責めちゃいけない。信行さんは人が善過ぎた。経理部長に印鑑を預け、保証人を頼んで来た者の願いを受け入れて印鑑を押すなんて素人のやる事だ。自業自得だな、と人は言うけど、元軍人さんだから仕方なかったんだよ。私は責めないよ。長男の信弘も責めちゃ駄目だ。一日1円でも返す覚悟でお父さんは土方仕事に行ってるけど、これ迄と違った生活もまた楽しいもんさ」

父と母は道路現場で働いた。
日当仕事だった。
中学3年の私と中学1年の弟、幸二は新聞配達のアルバイトをした。
私は150部配り、弟は70部配った。
熊本では返せないと父は言った。
東京へ出た。
母と私と二人の弟、一人の妹は熊本に残った。
そして、私が中学3年の12月24日、クリスマスイブの夜、母と共に熊本を夜逃げた。
父は和菓子職人から建設現場作業員に転じた。
母は着物を好む人だったが、着る物は着物から作業着へと変った。

「似合ってるだろ?前から着てみたかったんだ」と母は笑いながら言った。
弟の幸二と妹の和子は似合ってると叫んだ。
一番下の弟、博は「似合ってない。前の着物の方がお母さんらしい」と言った。
熊本を出る時、母は着物姿だった。
倒産した時、住む家の家具総てに赤札が貼られた。
母はその着物一枚、床下の地面の中に隠していた。
私が床下の穴を掘ったのでこの記憶に間違いはない。
そして時過ぎて他の方の択一の成功と失敗に出会った。

何事も真っ直ぐに行くもんじゃない。
いつかは曲りの時、訪れると思う。
その時が力を溜める時だ。
基本に徹するべきと考える。
貴兄はその時に立つ人。
週イチの練習、9アイアンで150球打て。
9アイアンの飛距離を伸ばすのだ。
ドライバーや3ウッドの飛距離伸ばすのは難しいが、9アイアンの飛距離伸ばすのは難しい事ではない。
9アイアンの飛距離の倍がドライバーの飛距離。
9アイアンの飛距離伸ばせばドライバーの飛距離は伸びる。

そして残り50球は6アイアンを打て。
6アイアンはスウィング作る基本のクラブ。
ドライバーからサンドウェッジ迄の13本、真ん中のロフト、シャフト長が6アイアンである。
中央を制すれば全部を制すの言葉がある。
6アイアンで打てる様になれば5アイアンと7アイアンは打てる。
7アイアンで打てる様になれば8アイアンが打てる。
ジュニア塾生指導で知りたる事なれど、塾生は1年で13本のクラブ打てる様になった。
同じリズム、同じスウィング型でだ。
ロフトとシャフト長、端のクラブとなるドライバーとサンドウェッジでゴルフ始めれば同じリズム、同じスウィング型で球打つのに早くて5年、普通で7年、遅ければ10年を必要とする。

今、貴兄は絶好の時に来た。
力を溜めよ。
基本に徹するのだ。
9アイアンで150球打て。
9アイアンの飛距離伸びたと感じた時、週イチの200球の練習球全部、9アイアンで打って貰いたい。
そして、力を溜める時期と離れる時の訪れ。
次の週、ドライバーを打てばいい。
信じる気持ちは大切だ。
信じる気持ちなければ変化への道程、一直線とはならぬ。
9アイアンの150球を信じよ。フィニッシュの型と位置を確かめて打て。
インパクト直前直後のスピードを上げれば飛距離は伸びます。
どう体を使えばいいのかは教わるのではなく、己で探すもの。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2024年2月13日号より

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